TTIPで高等教育市場は自由化されるか

原典:BBC(英語)
文書:Trade in Services and Investment: Schedule of Specific Commitments and Reservations(英語)

英国BBCは、2015年2月26日、米国と欧州連合間で貿易の自由化を話し合うTTIP(大西洋貿易投資パートナーシップ)の交渉に臨む、欧州側の姿勢を示した文書を公開した。TTIPの交渉は、日本が参加するTPPやTiSAと同じく内容は非公開とされている。

今回公開されたのは、2015年2月2日から始まった第8回交渉前に作成され、欧州連合による提案(initial offer)とされるもの。以下は、BBCが公開した文書の中で、高等教育に関する項目を抜粋したものである。欧州連合としては、公立教育をすべて保護する代わり、私立教育への無制限の市場開放を行う姿勢が見て取れる。一方、オーストリアやブルガリアなどの7ヶ国は、私立高等教育に対しても完全な保護を行う方針のようだ。

留保を求める権利
パートIの「全体的取組み」の中では、『国別の制限事項」として教育サービスに関しても、市場開放に対して特定の要件を適用または維持する権利の留保を提起している。

  • 欧州連合:公立教育サービスと私立の“その他”教育サービスに関するすべての権利
  • オーストリア、ブルガリア、キプロス、フィンランド、マルタ、ルーマニア、スウェーデン:私立高等教育サービスに関するすべての権利
  • スロベニア:私立中等・高等教育機関における理事の過半数がスロベニア国民であることを求める権利
  • チェコ:中等後職業訓練教育を除く高等教育サービスの提供を制限する権利
  • スロバキア:中等後職業訓練教育を除く教育サービス提供機関に、欧州経済領域(EEA)への所属を求める権利。教育サービス提供機関の理事がスロバキア国民であることを求める権利

市場参入への制限
パートIIは「セクター別取組み」となっており、ここでも教育サービスセクターにおける参入要件が提示されている。このうち、高等教育サービス部門では、『市場参入に対する制限』として以下が挙げられている。(注:すべて私立教育のみが該当)

  • 欧州連合:制限なし。ただし下記を除く;
  • オーストリア、ブルガリア、キプロス、フィンランド、マルタ、ルーマニア、スウェーデン:すべての事項
  • チェコ、スロバキア:中等後職業訓練教育を除く、高等教育サービス提供に関するすべての事項。中等後職業訓練教育以外の高等教育サービスへは、国内法人でなければ提供できない制限がある
  • ギリシャ:国が認める資格・学位を授与する高等教育機関に対するすべての事項
  • ハンガリー、スロバキア:設立できる学校数は、公的機関によって制限される可能性がある
  • スペイン、イタリア:経済的制限。主に、既存の教育機関における学生数や密度
  • フランス:国内法人制限がある。ただし、TTIP参加国の法人は、当局によって教育機関設置と教育行為の承認を得られる可能性がある
  • イタリア:国が認める資格・学位を授与するサービス提供機関へは、国内法人制限がある
  • デンマーク:教員に対しては、デンマーク国民でなければならない制限がある

また、『国籍制限事項』としては以下が挙げられている。(注:すべて私立教育のみが該当)

  • デンマーク:大学教員に対しては、デンマーク国民でなければならない制限がある
  • フランス:私立教育機関の教授活動を行う者は、フランス国民でなければならない制限がある。しかし、外国人でも当局の承認が得られる可能性がある。また、外国人は教育機関を設置、運営する当局の承認を得られる可能性もある。これらの承認は申請ごとに個別審査される
  • ギリシャ:大学教育を提供できるのは、独立した公人でなければならないとされている。しかし、欧州連合移住者は、学位と同等ではない資格を授与する私立高等教育機関を設立することが、法的に認められている
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