米国で起こる大学評価へのメディア批判

出典①:The Wall Street Journal
出典②:Forbes
出典③:Inside Higher Ed

アメリカの大手メディアウォールストリートジャーナル(WSJ)は、2015年6月17日にアメリカの大学評価制度※1を記事として取り上げ、納税者に対する説明責任が果たされていないと厳しく批判した。

WSJは連邦奨学金受給対象である4年制学位授与機関を対象とした独自調査を行い、各大学の卒業率や出身学生のデフォルト(債務不履行)率※2と、地域アクレディテーション機関による適格認定状況をまとめた。調査結果によると、現存する4年制大学のうち、適格認定を剥奪された大学の平均卒業率や、こうした大学出身者の平均デフォルト率よりも悪い数値を出す大学はおよそ350大学で、全体(約1,500)の1/4を占めた。

アメリカでは、適格認定を受けていたにも関わらず今年5月に自己破産のため廃校となったコリンチアン大学(Corinthian College)の学生が、連邦奨学金の返済が免除されている。WSJは、「(大学の)質が担保され、学生は保護され、納められた税金は有効に使われていることを示すようさらなる努力が必要」と語る上院議員の声を紹介している。

WSJ報道の後を追ったフォーブス誌は”Let’s Kill All the Accreditors”と題した記事を掲載し、現在の大学評価制度の問題点を9つ挙げている。ここでは、適格認定が剥奪されることがほとんどない以上は評価制度に意味がないこと、認定/不認定の2択しかできないこと、評価機関がカルテル化して新規参入障壁となっていること、大学は評価に費用と時間を浪費せざるを得ないことなど、日本の制度にも当てはまるところもあり興味深い内容となっている。

WSJが公表しているデータは、卒業率、2年以内デフォルト率、3年以内デフォルト率、および連邦奨学金受給額の4種類で、カスタマイズ検索が可能になっている。このデータをもとにした卒業率/3年以内デフォルト率の上下5校と奨学金受給額上位5校は以下の通り。

卒業率ベスト/ワースト5(WSJ公表データより作成)

大学名 学校種別 卒業率
1 フランクリン・W・オリン工科大学 私立 98.6%
2 イェール大学 私立 97.8%
3 ハーバード大学 私立 97.5%
4 ユダヤ教神学院 私立 97.5%
5 プリンストン大学 私立 96.9%
1509 ボストン建築大学 私立 6.6%
1510 ヘブライ神学大学 私立 4.8%
1511 ベイコーン大学 私立 3.2%
1512 メリーランド州立大学 公立 2.9%
1513 ケンブリッジ大学 私立 2.5%
記事では卒業率低下の一因として、他の大学への転学が多い大学もあることが指摘されている

 

3年以内デフォルト率ベスト/ワースト5(WSJ公表データより作成)

大学名 学校種別 3年以内
デフォルト率
1 フランクリン・W・オリン工科大学 私立 0.0%
1 ポモナ大学 私立 0.0%
1 カリフォルニア工科大学 私立 0.0%
1 クレアモント・マケナ大学 私立 0.0%
1 その他5校 私立 0.0%
1509 アーカンザスバプテスト大学 私立 31.1%
1510 アレン大学 私立 31.8%
1511 モリス大学 私立 32.1%
1512 ベネディクト大学 私立 32.7%
1513 セントオーガスティン大学 私立 37.3%

連邦奨学金受給額上位5校(WSJ公表データより作成)

大学名 学校種別 連邦奨学金受給額(USD)
1 フェニックス大学 営利 26億
2 デヴリー大学 営利 8憶7690万
3 カプラン大学 営利 8億950万
4 リバティ大学 私立 7億9980万
5 アシュフォード大学 営利 7億6910万
連邦奨学金受給の上位校の多くは営利大学が占めており、営利大学は国民の税金を株主の利益に還元しているという批判には一定の裏付けがあることが分かる。なお、7月1日からは主に営利大学が対象となる職業訓練教育課程への奨学金支給要件が改正(本サイト2014年11月13日掲載)される

なお、こうした報道に対して全米の評価機関を会員に持つ米国高等教育アクレディテーション協会(CHEA)のEaton会長は「(報道のあった)先週は転換期だ」とし、7月に予定する会議では卒業率、学生の債務とデフォルトについて議論することを表明している。

※1アメリカの大学評価制度
アメリカには国として単一の大学評価制度はないが、教育プログラムが国の奨学金(連邦奨学金)支給の対象となるには、連邦教育省が指定する評価機関による評価(アクレディテーションと呼ばれる)を受け、適格認定を受けなければならない。WSJの調査対象となる学士課程を主とする教育機関の場合、その多くは”地域アクレディテーション機関”と呼ばれる評価機関から適格認定を受けている。地域アクレディテーション機関とは米国全土を6つの地域に分け、それぞれの地域で独占的に大学の機関別評価を実施している評価機関である(西部地域のみ大学と職業訓練校で別々の機関が評価)。
※2連邦奨学金の返済
多くの連邦奨学金(ローン)は、学生が教育機関を修了・卒業するか、通学頻度がフルタイムの1/2未満になった時点で返済義務を生じる。しかし、こうした条件下ですぐに返済義務が発生するのではなく、一定の猶予期間(grace periodと呼ばれ、通常6ヶ月間)が設けられている。
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