※2018年11月追記:本記事で紹介しているOpenClassroomsによる学士号が授与されるMOOC課程は、現在は確認できません。
出典:Tech Crunch
IT関連の話題を提供するTech Crunchは、OpenClassroomsというムークがフランスの学位を取得できる課程を開講したと報じている。
この課程を提供するのは、フランス国内で私立の高等教育機関運営などを手がけるIESA Multimédiaグループで、工学、デザイン、デジタルマーケティングの3プログラムが用意されている。所定のすべてのムーク講座を修了することにより学士号が授与される。学位提供プログラムを受講するにはOpenClassroomsのプレミアムプラス会員となり月額300ユーロを支払う必要があるが、受講者の努力次第では約1年間での学位取得も可能とされている。IESAの系列大学では年間6,950ユーロの3年課程で学士号取得となるため、コスト面で大いに魅力的だ。
これまでもムークの修了をフォーマル学習の一部と見なす動きはあり、例えばアメリカでは特定のムーク講座が学士取得のための単位としてACE(アメリカ教育協議会)によって推奨(本サイト2013/12/12投稿記事)されている。また、イギリスでは特定の講座修了により勅許公認会計士試験が一部免除(本サイト2014-/20投稿記事)になるほか、ドイツではiversityというムークが提供する講座修了者にはECTS単位が授与(本サイト2013/12/12投稿記事)される。
一方、ムークによる学習を高等教育にどう関連づけるか、いくつかの国で専門的な研究も行われている。ノルウェー政府の委託を受けた専門家委員会は、その報告書(本サイト2014/10/17投稿記事)の中で、ムーク修了による単位認定を、当該ムークが対面試験を課すかどうかで扱いを分けるよう提言している。オランダ・フランダースアクレディテーション機構(NVAO)が発表したオンライン高等教育に関する趣意書(本サイト2014/9/12投稿記事)では、近い将来にオンライン教育の質保証で想定される5つのシナリオが示されている。
フランスでは、2013年に制定された「高等教育・研究の方向付けに関する法律」に基づいて、様々な高等教育政策(本サイト2014/11/7投稿記事)が行われている。フランス語以外の言語による教育提供を可能にしたり、学士レベルの学位名称の種類を大幅に整理したことは記憶に新しい。また、最近では学生のボランティア活動に対してECTS単位が授与される制度が検討されていることをル・モンド紙が報道している。今回のOpenClassroomsのケースは、毎月課金されるという点でムーク本来の”open”さが失われており、従来の遠隔教育にかなり近い形式になっている。しかし、ムークのみによる学位取得はおそらく先例がなく、オランド政権が大胆に進めている高等教育改革の1つの大きな試みである。