西バルカン諸国における高等教育修了者の労働市場への接続

原典: 欧州委員会(英語)

2017年1月、欧州委員会は西バルカン諸国(アルバニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボ、マケドニア、モンテネグロ、セルビア)において高等教育を修了した学生の労働市場への接続に関する報告書「From University to Employment: Higher Education Provision and Labour Market Needs In the Western Balkans Synthesis Report」を公開した。同地域では学位を取得した若者の多くが失業しており、雇用主側が必ずしも学位を重視していない状況がうかがわれる。本報告書は「高等教育の提供」、「高等教育修了者(以下、修了者)の雇用状況」、「修了者と雇用主が労働市場において直面する困難」、「労働市場に参入する上で障害となる、スキル・ミスマッチ」の4つの視点でまとめ、調査によって明らかになった課題に対する提言を示している。

報告書の概要

報告書のデータは2015年3月から8月にかけて収集されたもので、修了者(4,602人)と修了者の雇用者(1,074人)を対象に調査した結果である。このほか、高等教育の関係者や省庁、経済団体へのインタビューも含まれている。なお、西バルカン諸国には、公私立合わせて高等教育機関が240校あり、5,213の教育プログラムが提供されている。

地域全体における主な調査結果

  • 高等教育機関に在籍する学生の修了率は西バルカン各国においてばらつきがみられる(地域平均53%、最も低いコソボでは33%、最も高いセルビアでは85%)。
  • 専攻分野について28%が経営・法律・行政が占める一方、STEM分野※1は22%となっている。また、前者は労働市場において供給過剰となっている。
  • 学位取得は、最終的には労働市場において有利に働く。全体的な失業率は23.9%であるのに対し、修了者の失業率は16.2%である。しかし、高等教育修了直後の学生の失業率は37.1%となっており、安定的に雇用される前に失業を経験することが多く、高等教育から労働市場への接続に困難があるとみられる。
  • 学生の採否を判断する際、雇用主が高く評価する「就業経験」が学生にとっては不足しており、そのことが社会に出る際の障壁となっている。高等教育業界と経済界の協力関係を強化し、高等教育機関が学生に対して、就業経験を提供できるようにすることが望ましい。
  • 雇用主は修了者のスキルに不満を抱いており、時代に合った教授方法となるよう見直し、小規模で対話形式の授業を行うことで学生のスキルを発展させることが必要と考えている。また、雇用主は採用した学生に追加的な訓練を提供することが多いため、政府が支援策を講ずることが望ましい。
  • 修了者全体のうち、48%が就業のために必要とされる資格の水準が一致しており、37%は必要とされる資格よりも高い水準の資格を有している。また、15%は必要とされる水準を満たしておらず、このことは学生が職を探す際、高等教育機関が提供する就職支援を活用せず、家族や友人を頼ることによるとみられており、縁故主義を示唆している。さらに35%が専攻分野とミスマッチしている。

高等教育分野に関する提言

  1. 高等教育機関はカリキュラムを最新のものとなるよう見直し、教授方法を改善し、学生中心の教育で、小規模のディスカッションやプレゼンテーションを行う形式の授業を実施すべきである。
  2. 政府は、高等教育機関が学生を多く取りすぎないように入学や進学要件に対して厳しい基準を課すべきである。
  3. 入学段階における手続きや規制に透明性を持たせることで不正に取り組むべきである。
  4. 高等教育機関や教育プログラムへのアクレディテーションが行われていない国においても、アクレディテーションを実施すべきである。また厳格な質保証の対策を講じ、ESG※2に沿って外部評価を実施すべきである。
  5. カリキュラムを設計する上で、高等教育機関と雇用主の協力関係を促進し、就業経験やインターンシップの機会を与えることにより、教育プログラムを改善すべきである。
  6. 政府は奨学事業を通じて、経営や法律行政といった供給過剰の科目を専攻する学生数を減らし、STEM分野といった優先度の高い科目を専攻する学生を増やすべきである。
  7. 政府は修了者自身ができるだけハイテクビジネスを展開する機会を得ることができるよう、高等教育機関における起業家精神を養成するような学習を支援すべきである。
  8. インターンシップで得た就業経験は、修了者が将来の就職に対する展望をより明らかにする。高等教育機関と雇用主はインターンシップを実地で行うことにより、修了者が就業経験をしてから労働市場に接続できるようにすべきである。
  9. 高等教育機関と公共職業安定所はより多くの修了者が自身に合った職業を見つけることができるよう、修了者の就職活動をより手厚く支援すべきである。

※1STEM分野(Science, Technology, Engineering and Mathematics)科学、技術、工学、数学
※2ESG(Standards and Guidelines for Quality Assurance in the European Higher Education Area:欧州高等教育圏における質保証の基準とガイドライン)(参照:NIAD-QE国際連携ウェブサイト)

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