留学先として魅力度の高い国ランキングーOECDインディケーター

経済協力開発機構(OECD)は、2019年5月に「OECD Indicators of Talent Attractiveness」を公表した。優秀な外国人材(Talented migrants)にとって就業、起業、または留学先の国として魅力のある国はどこか、7つの要素をもとにOECD加盟各国の魅力度を数値化した。3つの外国人材の区分(就業者、起業家、大学生)ごとに最も魅力度の高い国は、「就業者」ではオーストラリア、「起業家」ではカナダ、「学生」ではスイスとなった。

OECDの公表ウェブページでは、魅力度の高い国順に並べられているほか、閲覧者が魅力と思う要素とその重要度を自由に選ぶと、それに応じて国のランキング(魅力度)の高い順に並び替わる機能も備えている。

「優秀な外国人材」の3つの区分
Highly educated workers:高度な教育を受けた(修士または博士の学位を取得した)就業者
Entrepreneurs:起業家
University students:高等教育機関で学ぶ学生(※本記事では「学生」と略記)

就業、起業、留学先の決め手となる7つの要素
OECDは、優秀な外国人材が就業、起業または留学する国を決定する際に影響を及ぼす、7つの要素を定義した。各要素の魅力度の算出に当たっては、OECDなどが過去に実施した各種の調査・統計結果が用いられた。下表では7つの要素と、「学生」の魅力度算出に用いられたデータを取り上げる。

要素名「学生」魅力度算出のためのデータ
1. Quality of opportunities (雇用や学習機会の質) – 2017年世界大学学術ランキング(ARWU)で500位以内にランクインした自国の大学の数
2. Income and tax(収入と税)– ISCED※1レベル5または6の教育を修了したフルタイム/パートタイム就業者それぞれの年間実質賃金
– 国内学生と留学生の授業料の差
– 留学生の労働の1週間当たり上限時間  ほか
3. Future prospects (長期的な展望)– 総人口に占める若年人口(0~14歳)、生産年齢人口(15~64歳)、高齢人口(65歳以上)の割合の2050年推計値
– 大学卒業者が同国の滞在を認められる期間 ほか
4. Family environment (帯同家族の環境)– 配偶者の雇用可能性
– PISA(OECD生徒の学習到達度調査)における数学的リテラシーのスコア
– 家族給付に対する公的財政支出 ほか
5. Skills environment (スキルの養成のための環境)– インターネット世帯普及率
– EF英語能力指数(スイス・EF社による英語試験)
– GDPに対する教育機関への支出
6. Inclusiveness (包容性)– 高等教育機関の在籍学生に占める留学生の割合
– 外国人との共生に関する意識調査結果
– 男女共同参画に関するOECD指標
7. Quality of life (暮らしの質)– より良い暮らし指標(住宅、医療、安全、ワークライフバランスなどの領域)

学生にとって魅力度の高い国は
「学生」の区分で魅力度の高い国として、スイスノルウェードイツフィンランド米国が上位に入った(下表)。主な所見は次のとおり。

  • 英語が広く使われている国は、英語の関連指標を含む要素「5. Skills environment」など有利な要素があるため、OECDの予想通り上位に位置した。
  • ノルウェードイツスイスは、学生ビザ保持者に労働を広く認めている点や国内学生と留学生の授業料が同額である点が要素「2. Income and tax」の魅力度を高めた。一方、在学中の労働が認められないチリトルコの魅力度は下位にとどまった。
  • フランスイタリアは、卒業後の就業への移行が円滑に行われる点で、要素「3. Future prospects」の魅力度が際立った。
  • フランススイスアイスランドは、留学生の授業料が比較的低廉な点が、全体的な魅力度の押し上げに貢献した。
学生就業者起業家
スイス133
ノルウェー2105
ドイツ36
フィンランド48
米国57
オーストラリア617
フランス7
カナダ851
ニュージーランド942
スウェーデン1024
※表内の数値は魅力度がその区分で何番目に高いかを表している。

日本の魅力度
35のOECD加盟国中、日本の魅力度は「学生」では25番目、「就業者」では25番目、「起業家」では20番目にとどまった。ただし、「学生」の要素別の魅力度では、「1. Quality of opportunities」と「6. Inclusiveness」が上位25%以内に位置した。

日本政府は、高度な知識・技能を有する外国人材の積極的な受入れを政策課題として位置づけ、留学生の国内就職、外国人材の入国・在留管理、生活環境整備など外国人材の活躍を推進するための諸施策を関係府省庁間で取り組んでいるところである。

※1 ユネスコ統計研究所が開発した国際教育分類。正式名称はInternational Standard Classification of Education。2011年版の「ISCED 2011」では、ISCEDレベル5は高等教育短期課程、レベル6は学士相当の課程に当たる。

原典:OECD Newsroom(英語)

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