アメリカの非営利団体College Board*1が運営する試験SATは、2021年1月19日に、科目別試験SAT Subject Testsとエッセー試験SAT Essayの廃止を発表した。科目別試験はアメリカ国内では即時廃止され、国外では2021年5月と6月の試験をもって廃止される。エッセー試験は、国内の一部の州を除き、2021年6月の実施をもって終了となる。
SATやSAT Subject Testsの成績は、アメリカに限らず諸外国の大学進学でも用いられており、日本でも大学(学士課程)入学試験において成績の提出を求める事例がみられる。例えば、アメリカ等で教育を受けた出願者にエッセーを含むSATとSAT Subject Testsの両方の成績提出を必須とする例や、必須ではなくSATを受験している場合に限り成績提出を求める例、あるいはSATを英語の語学能力証明書類の一例に挙げている例がみられる。
SATとSAT Subject Tests
SATは大学進学や就職で求められる知識やスキルを問う統一試験で、読解(Reading)、記述と言語(Writing and Language)、数学(Math)、エッセーで構成される。必須3科目合計で180分間となり、その内訳は読解に65分、記述と言語に35分、数学に80分である。エッセーは希望者のみが受験し、試験時間は50分である。合計得点は必須3科目で400~1600点の間で示される。エッセーでは2名の採点者がそれぞれ読解力、分析力、記述力の側面に分けて採点する。得点は側面毎に1~4点が与えられ、両採点者による採点の合計がエッセーでの得点となる。
科目別試験であるSAT Subject Testsは受験者が5教科20科目から選択して行う試験。5教科とは数学、科学、英語、歴史、言語のこと。試験は1科目60分、得点は各科目200~800点で計算される。通常1年に6回の受験機会があり、一度に3科目まで受験できる。また、試験は前述のSATと同日に行われる。
試験廃止の理由
College Boardは、同団体が提供するAP (Advanced Placement)*2の利用が低所得世帯の生徒の間で広がっているため、SAT Subject Testsを通じて知識・スキルを証明する必要性が薄れたとしている。しかし、諸外国でのSubject Testsは利用目的がさまざまであることから、あと2回(2021年5月と6月)の受験機会を確保することとした。
一方、エッセー試験の廃止の理由としては、エッセー執筆力を測る方法がSATの読解や記述と言語の試験を含め他にも存在することが挙げられている。エッセー試験は2005年よりSATに導入されたが、2014年からはその受験が任意となっていた。2021年6月以降は、州の制度として実施される場合のみエッセー試験が課されることになる。
*1College Board:中等教育と高等教育に関係する機関を会員とする非営利組織。すべての中等教育修了者が公平に高等教育へ進学することを支援するため、生徒の能力の特定や評価に関する活動を行う。
*2 AP (Advanced Placement):College Boardがハイスクール生徒向けに提供する全米統一のカリキュラムで、在籍する学校の教員による大学レベルの授業と試験が受けられる制度。APの履修は、アメリカ国内の多くの大学で単位として認定されるほか、欧州の一部の国ではアメリカの教育出身者による大学進学の際の必須要件となっている(例:デンマーク、イタリア、ノルウェー)。
原典①:College Board (英語)
原典②:College Board (英語)