アメリカ: コロナ禍での大学・カレッジの対応を探る―授業形態・学生受入等の動向

米国教育協議会(ACE)は、アメリカの大学・カレッジの学長を対象に、新型コロナウイルスがもたらした課題に対する大学・カレッジの対応に関する調査を2021年2月と4月の2回にわたって行った。
調査は幅広い事柄に対して、新型コロナウイルス拡大前と比較して質問したものであり、新型コロナウイルスによってもたらされた課題のみならず、これを契機に高等教育機関が対応を変更した事項と変更しなかった事項が明らかになった。下記では、授業形態や学生受入を中心にまとめた。

<第1回調査(2021年2月)>

実施日: 2021年2月1日~12日
回答数: 348名(4年制私立:147校、4年制公立:85校、2年制公立:88校、学士課程を有さない大学院:13校、営利機関:6校、2年制私立:7校)
主な調査内容: 春学期の学生受入と財政状況、学生に対するサービスへの変化
調査結果概要:

■2020年秋学期と2021年春学期の授業形態
授業形態(予定含む)について2020年秋学期から2021年春学期への変化をみると、全機関種(320校)では、「オンライン主体+対面」との回答が59%から57%と若干減少した。一方、「対面主体+オンライン」との回答は、30%から35%と若干の増加がみられる。

機関種別(4年制公立(85校)、4年制私立(147校)、2年制公立(88校))では、2021年春学期について「オンライン主体+対面」の回答比率が最も高かった機関種は2年制公立(80%)であり、「対面主体+オンライン」の回答比率が最も多かった機関種は4年制私立(51%)であった。この傾向は、2020年秋学期についても同様に見られた。(図1)

図1:COLLEGE AND UNIVERSITY PRESIDENTS RESPOND TO COVID-19: 2021 SPRING TERM SURVEY, ACE, p.3より引用

また、春学期への移行で、オンラインから対面に切り替えるかという質問には、いずれの機関種も70~80%が「切り替えない」と回答があった。

<第2回調査(2021年4月>

実施日: 2021年4月19日~30日
回答者: 244名(4年制私立:98校、4年制公立:69校、2年制公立:53校、営利機関:9校、学士課程を有さない大学院:8校、2年制私立:6校、2年未満の機関:1校)
主な調査内容: 学生選抜のプロセスの変更、秋学期の学生受入と受入人数、キャンパスにおける多様性と公平性、学生や教職員のメンタルヘルス
調査結果概要:

■新型コロナウイルスにより直面している課題
新型コロナウイルスにより直面し、対応に最も急を要する課題(20項目から最大5つ回答可)に対し、全ての機関種において学生のメンタルヘルス(73%)の回答率が最も高かった。また、教職員のメンタルヘルス(48%)も3番目に高かった。
その他、夏/秋学期の入学者数(53%)、長期的な財政の見通し(32%)、留学生の入学者数(26%)が回答率の上位であった。

■2021年秋学期における学部段階の志願者数の増減
2019年秋学期の志願者数と比較すると(図2)、機関種全体(220校)では、37%において増加、47%において減少となった。また、機関種別(4年制公立(69校)、4年制私立(98校)、2年制公立(53校))は、4年制私立の半数近くの機関において、志願者数の増加が見られた一方、2年制公立の65%の機関において志願者数が減少した。

図2:COLLEGE AND UNIVERSITY PRESIDENTS RESPOND TO COVID-19: 2021 SPRING TERM SURVEY, PART II, ACE, p.4より引用

志願者数が増加した機関では、いずれの機関種においても半数近くが10%以下の増加率であった。また4年制公立と4年制私立で大幅に志願者が増えた機関は、その理由として広報活動の増加や入学関係の業務における民間企業の利用を挙げており、多くの場合、それらの機関では学生側の費用負担の免除やSAT/ACTの受験を任意にするといった対応がみられる。

また、志願者数が減少した機関の減少率をみると、「10%以下」との回答が46%、「11~20%」が36%、「21~30%」が17%、「31~40%」が1%であった。減少理由としては、新型コロナウイルスの流行による個人的な理由や財政的な困難、オンライン教育に対する認識等が挙げられた。

■新型コロナウイルスの流行に起因する学生受入関係の変化について
半数以上の機関で、新型コロナウイルスの流行を機にSAT/ACT受験の任意化や、書類の提出期限延長をしていたことが明らかとなった。一方で、入学金の免除や選抜要項を変更した割合は小さいことも伺える結果となった。

<新型コロナウイルスの流行を機に変更の措置を行った割合(一部抜粋)>

  • SAT/ACT受験の任意化: 56%
  • 書類の提出期限の延長: 54%
  • 入学金納付の延長: 48%
  • 入学金納付の免除: 14%
  • 選考要項の変更: 10%

  • 新型コロナウイルス流行後に機関内で定着させる予定のある事柄に関して尋ねたところ、オンライン学習の提供の拡充(55%)、遠隔医療・治療サービスの継続(53%)、遠隔での学生サービスの提供(47%)の順で多かった。

    なお、日本では2020年に文部科学省や日本私立大学協会の私学高等教育研究所が、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う授業の実施形態等に関する調査を行っている。特に学生のメンタルヘルスに関しては、文部科学省の調査によると、日本では、約9割の大学等が学生向けの相談窓口を開設しており、また、約8割の大学等がカウンセラーや医師等の専門家との連携、電話やメール等での相談受付等の、学生のメンタルヘルスに対するケアを行っている。

    ※SAT/ACT:いずれも大学進学や就職で求められる知識やスキルを問う統一試験で、アメリカで広く大学入学のために用いられている。


    原典①:COLLEGE AND UNIVERSITY PRESIDENTS RESPOND TO COVID-19: 2021 SPRING TERM SURVEY
    原典②:COLLEGE AND UNIVERSITY PRESIDENTS RESPOND TO COVID-19: 2021 SPRING TERM SURVEY, PART II
    参考①:文部科学省
    参考②:私学高等教育研究所
    参考③:ACE study on impact of COVID-19 on US colleges and universities

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