韓国:2020年度教育部所管公共機関の経営評価結果が公表―本年はコロナ対応も評価

韓国教育部は、国立大学病院をはじめとする教育部所管の「その他公共機関」を対象に実施した「2020年度教育部『その他公共機関』経営評価」の結果を、2021年11月9日に公表した。本評価は、毎年度の評価を通して公共機関の社会的責任の強化を促進することを趣旨に実施しているが、今回の評価では新型コロナウイルスに対する公共機関の対応状況が評価項目として追加され、積極的に取り組んだ国立大学病院等が高く評価された。

韓国の公共機関と経営評価

韓国の公共機関は、国・地方自治体ではない法人等で法令に定める要件(例:個別の法律により国が直接設立し、国の予算の支給を受けて運営される機関を受ける機関)のいずれかに該当するものが公共機関として指定される(公共機関の運営に関する法律第4条)。さらに、①公企業・準政府機関②その他機関の2種類があり、従業員数や予算規模が大統領令に定められる水準を超えるものは「公企業・準政府機関」、それ以外の機関は「その他機関」に分類される(同第5条)。

これらの公共機関に対しては、その公共性や経営効率性、また国政課題への対応能力を測る評価が政府により毎年度実施されている。①公企業・準政府機関の評価は、韓国企画財政部が所管するすべての中央行政機関をまとめて実施し、②その他機関については各所管中央行政機関がそれぞれ実施している。教育部が実施する「その他公共機関」経営評価は2015年より実施されている。

2020年度教育部「その他公共機関」経営評価概要

本評価で対象となった機関は、国立大学病院14機関及び国家平生教育振興院※1、東北アジア歴史財団、韓国古典翻訳院、韓国私学振興財団、韓国学中央研究院の5機関であった。本評価で用いられた評価領域及び評価項目は下表のとおりである。
※1 平生教育法19条に基づき2008年に設立された組織であり、生涯学習を学位取得につなげる仕組みである「単位銀行制」、「独学学位制」を運営している。単位銀行制、独学学位制については大学改革支援・学位授与機構高等教育資格承認情報センター(NIC-Japan)主催NIC-Japanセミナーシリーズ「韓国の教育制度・高等教育資格(2021年7月21日)」の講演資料を参照のこと。
※2 規模に差異のある対象同士が共生しつつ協力することで共に成長すること。主に大企業と中小企業の関係を指す。
この評価では、公的サービスの質向上を目的に、事業費執行率や労働生産性を通して経営効率性を測るとともに、当該機関の特性を踏まえた主要事業の適正性等を測定している。なお、領域④「新型コロナウイルス対応に関する取組と成果」に関しては、コロナ禍において大学病院等の地域医療の拠点としての役割が増大したことを踏まえ今回から新設された。

評価結果及び新型コロナウイルス対応に関する優良事例

上記の評価項目に基づき、大学教授、公認会計士、労務士、医師等の有識者により構成された評価団が2021年8月から10月にかけて書面調査、実地調査を行い、最終的に各機関をS(卓越)からE(非常に不十分)の6段階で評価した。その結果、対象19機関のうち5機関がA(優秀)、10機関がB(良好)、4機関がC(普通)と評価された(S[卓越]、D[不十分]、E[非常に不十分]は該当なし)。
また、今回の評価結果の特徴として、公共機関の新型コロナウイルスへの対応や社会貢献の状況が評価された点が挙げられる。例えば以下のような取組が高く評価された。
  • 世界初のドライブスルー方式の新型コロナウイルス検査を導入。(慶北大学校病院)
  • 全国の私立大学内に設置する寄宿舎(幸福寄宿舎)を入国後の隔離期間中の外国人留学生や感染の疑いのある者の待機・隔離施設として利用。(韓国私学振興財団)

  • なお、評価結果の活用として、教育部は評価団がまとめた指摘事項に基づき各機関に改善勧告した後、コンサルティングを行ったうえで、改善結果を翌年度の評価に反映する計画がある。また、評価結果を反映して成果給を支給するなどインセンティブとしても活用することが示されている。

    原典①:教育部(韓国語)
    原典②:国家法令情報センター(韓国語)
    原典③:韓国公共機関研究院(韓国語)

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