フランス:Hcéresが新たな評価のガイドを公表-評価の簡素化等、抜本的な改革に着手-

2026年2月、フランスの高等教育機関、研究機関等の評価を行う研究・高等教育評価高等審議会(Hcéres)は2026年~2027年に同機関が実施する評価のガイドを公表した。高等教育機関、研究機関等の現状をより考慮し、従来の評価手法をより柔軟かつ簡素なものへと大きく見直した内容となっている。

■Hcéresの評価とは

フランスでは、高等教育・研究分野を対象とする国家戦略の実現のため、戦略の実現及びその戦略の資源・財源の配分に関する5年間の契約を国と高等教育機関が結んでいる。この契約の更新や国から高等教育機関への予算配分に当たって参照されるのがHcéresによる評価であり、各高等教育機関は所在地により5つの区域(A~E)に分類され、各年1区域の機関を対象に評価が行われることになっていた(つまり、各区域は5年に1回評価を受審)。(詳細は、本サイト2025/10/31投稿記事を参照)

■今回の主な変更点

 1.評価は1年間で実施。従来の2年間に比べてより迅速になる。
 2.評価の頻度を減らし、5年に1回から6年に1回になる。
 3.従来の「評価基準」をよりシンプルかつ柔軟な内容の「評価ガイド」※1に変更した。
 4.自己評価書について、従来の所定の回答テンプレートとExcelファイルは廃止となり、各機関が自由な形式で作成可能とする。
 5.評価は各機関の状況に合わせて調整され、訪問調査は計画的に設定される。

※1 今回の新たな評価枠組みの導入において刊行されたガイド(guide d’évaluation)を、本記事では「評価ガイド」と呼ぶこととする。

また、評価ガイドでは、高等教育と研究の質を左右する重要な要素の一つとみなされる研究インテグリティにこれまで以上に重点が置かれている。

■評価ガイドの構成及び内容―機関別評価ガイドを中心に

ここでは、機関別評価ガイドの構成及び概要を紹介する。構成は次のようなものとなっている。
 1.前文
 2.評価の基本的な枠組み
 3.自己評価において求められる事項
 4.評価プロセス
 5.評価において求められる事項
 6.付録

構成内容は、従来の「評価基準」の冊子とは異なり、分析するための観点だけではなく、評価そのものの目的、自己評価及び評価で求められるものをその趣旨も含めて簡潔に明示したものとなっている。また、高等教育機関・研究機関の評価に関係する様々な立場の人々(受審機関の執行部及び教職員、所管官庁、評価を担う専門委員会)が共通して参照する冊子としてまとめられており、評価業務・プロセスの明確性、透明性の担保が図られていることがうかがえる。

評価の対象範囲となる「側面」(dimension)は、具体的には、①パートナーシップ戦略※2、②国際戦略、③組織とガバナンス、④運営管理、⑤学生生活に関する戦略、⑥研究、イノベーション、価値創造、社会とともに、社会のための科学に関する戦略、⑦教育に関する戦略が設定されている。

※2 具体的には、他の高等教育機関、学術界、産業界、公共部門、地方自治体、市民団体、文化分野の団体との連携政策を指す。

一方、従来の「評価基準」では、①戦略的運営の方針、②研究の方針、③教育課程、学生支援等の方針の3つの分野が設定され、①戦略運営の方針では計60の、②研究の方針では計36の、③教育課程、学生支援等の方針では計49の参照基準の項目が設定されていた。旧「評価基準」と新「評価ガイド」がカバーする評価対象範囲自体は大きな変更は見られないものの、新「評価ガイド」においては、参照基準のような基準項目の設定はなく、上述した7つの各側面についてそれぞれの趣旨や分析対象が解説されている。加えて、付録としてこれらの側面を分析するための「質問リスト」が参考として提示されている。

各章の概要は次のとおり。

1. 前文
このガイドは高等教育・研究機関の評価に関係する全ての人々(受審機関の執行部及び教職員、所管官庁、評価を担う専門委員会)を対象としていること、様々な機関の状況に適用できるように柔軟に作成されていること、そして各機関はこの内容を最大限に活用し、職員の業務負担を軽減するよう努めることが求められる旨が述べられている。

2. 評価の基本的な枠組み
目的と原則、評価プロセスと範囲が提示されている。

≪目的と原則≫
機関別評価には、次の3つの目的があることが明示されている。
 ・組織として共同で考察を行うための枠組みの構築
 ・継続的な改善の支援
 ・戦略的対話の促進

≪評価プロセスと範囲≫
評価機関とHcéres間の1年間の評価スケジュールが明示されているとともに、評価の対象範囲となる7つの側面(①パートナーシップ戦略、②国際戦略、③組織とガバナンス、④運営管理、⑤学生生活に関する戦略、⑥研究、イノベーション、価値創造、社会とともに、社会のための科学に関する戦略、⑦教育に関する戦略)が掲げられている。

3. 自己評価において求められる事項
主に自己評価プロセス、自己評価書の構成、各側面の解説、添付資料について紹介されている。

≪自己評価プロセス≫
以下のとおり、自己評価プロセスの4つの段階が示されている。特に、この作業は、受審機関の教職員の業務負担を過度に増大することを目的とするものではないが、そのためには組織全体としての内部関係者の参画が極めて重要であり、それと同様に、当該機関が選択した自己評価手続の明文化と透明性の確保が重要であることが記載されている。

 (1)自己評価の企画準備
 (2)調査、分析、理解
 (3)報告書の作成と承認
 (4)自己評価の組織内部での周知

なお、自己評価書作成の留意事項として、最大50ページの論述形式で行うこと、評価は文脈に応じて行われるため、受審機関は自らの特徴やその使命を遂行する背景を明確に説明することの重要性が記載されている。また、付録の「質問リスト」について、論拠を補強するための具体的な例として活用するよう案内がある。

≪自己評価書の構成≫
自己評価書の構成(序文、本文、最終部分)に関し、各部分において記載すべき内容が明示されている。例えば序文では、実施された自己評価のプロセス(方法、段階、関係者、報告書の作成等)と、実施された作業の範囲と限界についての考察を提示するよう求められている。

≪各側面の解説≫
7つの側面(①パートナーシップ戦略、②国際戦略、③組織とガバナンス、④運営管理、⑤学生生活に関する戦略、⑥研究、イノベーション、価値創造、社会とともに、社会のための科学に関する戦略、⑦教育に関する戦略)について、その趣旨や分析対象が解説されている。

≪添付文書≫
組織図や過去5年間の財務諸表等、自己評価の根拠資料として添付すべき文書が明示されている。

4. 評価プロセス
受審機関、Hcéres、評価者(専門委員)のそれぞれの立場の役割、作業を含め、評価プロセスの全体像がフロー図にて示されている。

5. 評価において求められる事項
専門委員会の構成、その役割、面談、評価報告書について記載されている。

≪専門委員会の構成≫
専門委員会の委員長及び委員会を構成する専門委員はHcéresによって、中立性、公平性、利益相反がないことの原則に基づき選定され、専門知識の多様性、ジェンダーバランスの確保に努めることとしている旨記載されている。また、ピアレビューにおける外国人の専門委員の重要性も述べられている。
加えて、委員会には、現役の学生又は卒業後間もない専門委員を1名含むこととするなど、委員の構成要件も明記されている。

≪専門委員会の役割≫
専門委員会、委員長の役割、またHcéresが担う業務について記載されている。

≪面談≫
受審機関への訪問調査中に実施される面談は、委員会が特定した課題についてより深い分析を行うことを目的としたもので、形式的なプレゼンテーションは実施せず委員会との直接の意見交換という形式で行われることが記載されている。

≪評価報告書≫
専門委員会が作成する評価報告書には、受審機関への戦略的な提言を含むキーメッセージの要約、受審機関の紹介、委員会が特定した主要課題ごとに整理された分析が含まれることが記載されている。また、異議申立ての手続きが存在することも触れられている。

6. 付録
7つの側面ごとに自己評価、分析のための「質問リスト」が参考として挙げられている。各機関は、状況に応じてこれらの「質問リスト」を選択・調整し、自己評価に活用することができ、必要に応じて、他の分析要素を追加することもできる。

■Hcéresが目指すもの

新たな評価方法への転換により、Hcéresは評価を以下のように変えることを目指している。
 1. より柔軟かつ簡素なものに
 2. 受審機関の現場の実情により根ざしたものに
 3. 受審機関の運営や戦略的な検討に役立つものに
 4. 受審機関の継続的な改善を目指すものに

先の機関別評価ガイドの構成紹介における「1.前文」でも触れたように、公表された3つの評価(機関別評価、教育課程評価、研究ユニット評価)の評価ガイドの冒頭には、「各機関(ユニット)は本ガイドから最大限の成果を得るために、そして評価に必要な適切な情報を提供するために、本ガイドの内容を十分に理解して活用することが期待されている。その一方で、職員の業務負担を抑えることにも配慮しなければならない。」と記載があり、受審機関側の視点に立った評価への転換が伺える。

原典①:Hcéres(フランス語)
原典②:Hcéres(フランス語)

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