米大統領、高等教育の教育費適正化計画を発表

原典:WHITE HOUSE(英語)

オバマ米大統領は2013年8月22日付けで、高等教育にかかる教育費適正化のための新たな計画を発表した。“A Better Bargain for the Middle Class: Making College More Affordable”と題された計画は、①大学の実績に応じた助成、②イノベーションと競争の促進、③学生の債務適正化の3つの柱で構成されている。この計画の内容は議会による承認を必要とするものが多く、実現へのハードルは決して低くはないとみられている。

①大学の実績に応じた助成(Paying for Performance)-※現在、助成額は在学者数を元に決定されている

大学の実績に応じた助成を行うため、2015年までに大学の教育実績を表す指標(レーティング)を開発する。さらに、この指標と連邦助成とを連動させるための法整備を2018年までに完成させる。奨学金やローンの支給額は、指標における各大学の数値によって増減がなされる。また、学資援助を受ける学生に対しては、援助継続の条件として毎年一定の学業成果達成(科目の履修など)を課す。

  • ✓大学の実績と助成を繋げる新しい指標制度を導入
    2013~2015年 新指標開発
    評価の基準となる事項(案)
    ・奨学金へのアクセス(例:在学生のペル奨学金の受給割合)
    ・教育費(例:平均授業料、奨学金制度整備状況、債務状況)
    ・成果(例:就職/進学率、卒業生の収入、卒業生が進学して取得した学位)
    2015~2018年 指標の法制化(高等教育法改正に盛り込む)
  • ✓大学の実績を元にした公立大学助成を行うよう各州に要請
  • ✓高い実績の大学⇒ペル奨学金や他のローン支給額増
  • ✓学資援助継続の条件に、毎年の学生の進歩(例:一定割合の科目修了)を盛り込み、法制化

②イノベーションと競争の促進(Promoting Innovation and Competition)

大学がイノベーションと競争を通じて、効果的な教育提供と経費削減を達成できるように支援を行う。イノベーションの例としてムークや既修得学習の認定(単位認定)などが挙げられている。同時に、消費者としての学生を保護する意味での情報公開を大学に求め、政府としては規制緩和を通じて大学の活動の簡素化を図る。

  • ✓現在より廉価で高品質の教育提供を大学に要請
    ムーク※1、反転授業※2、デュアルエンロールメント(高校生の大学科目履修)等
  • ✓学生が消費者として選択しやすいような、分かりやすく確かな情報の提供
  • ✓不要な規制を排除し、イノベーション促進を実施
  • ✓産業界と教育機関の連携
    職業と関連の深い課程の創設、学生への職業経験の提供、専門技術を持つ卒業生の積極雇用

※1 MOOC(Massive Open Online Course)のことで、大規模無料オンライン講座とも呼ばれる。オンライン教材を用い決められたペースで学習を進め、進捗度確認のアセスメントなども設けられているもの。

※2 Flipped classroomと呼ばれる。従来の、教室で講義を行い宿題として応用課題を課していた授業スタイルに対し、空き時間にオンライン教材などで基礎を学び、教室では応用課題を行う学習スタイルのこと。

③学生の債務適正化(Ensuring that Student Debt Remains Affordable)

学生ローン受給者の債務不履行(デフォルト)率を下げ、政府財政を立て直すために、より多くの債務者に多様な返済方法を提供する。そのため、返済のキャップ制(月収の10%を返済月額の上限とする)対象者の拡大を行い、教員や看護士など社会的責任が大きい人材を積極支援する。また、この秋より返済が遅れている債務者へ随時連絡し、採用可能な返済制度の案内を始める。

  • ✓月収の10%を上限とする学生ローン返済制度の対象拡大
  • ✓多様な債務返済方法の周知徹底
参考
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