アクセス、卒業、就職―欧州高等教育改革報告書が公表される

原典:欧州委員会(英語)
報告書:Modernisation of Higher Education in Europe: Access, Retention and Employability(英語)

Eurydice※1は、欧州高等教育の入学から就職までの各段階に学生が置かれる環境についての報告書をまとめた。Eurydiceは2011年に高等教育の財政および社会との繋がりに関する報告を作成しており、今回の調査はこれに続くものである。

※1 欧州地域40ヶ国の教育制度・政策について情報提供や分析を行う各国のネットワーク。欧州委員会の教育・視聴覚・文化執行機関(EACEA)が運営している。

本調査は、Eurydiceのネットワーク諸国(回答があったのは36国単位※2:ルクセンブルグ、オランダを除くEU27加盟国-ただし、ベルギーと英国は各行政単位-、およびアイスランド、リヒテンシュタイン、モンテネグロ、ノルウェー、トルコ)への詳細なアンケート調査のほか、12ヶ国の質保証機関へのアンケート、および8つの高等教育機関への聞き取り調査が行われた。調査においては、アクセス、卒業、就職の3段階に対する各機関の姿勢および実績を尋ねた。

※2 本文では、便宜上、行政単位(例えばフランス語圏ベルギーやスコットランド)も‘国’と表すこととする。

主な調査結果

特定の学生層に対する進学率向上目標を持つ国はわずか8ヶ国
現代の高等教育へのアクセスは、単に該当者の進学を指すのみではなく、社会的側面が考慮される時代である。調査の結果、わずか8ヶ国のみで社会的・経済的弱者層の進学に関する目標が設定されていた。注目すべきは、これら8ヶ国が支援の対象とした学生群にはかなりの違いがあったことである。
目標例:ベルギーフランドル地方-両親が高等教育資格を持たない者を対象とした目標、フィンランド-男性の進学率向上目標、リトアニア-数学、科学分野への女性の進学率向上目標
学生の動態調査の項目は各国でかなりの違いがあり、データの活用は不充分
年齢、性別といった一般的項目はどの国の学生統計でも収められているが、学生の特徴を示す項目はかなりの違いがあった。もっとも頻繁に用いられていたのは「高等教育進学前に取得した資格の種類とレベル」であった。
一方、収集したデータは必ずしも活用できてはおらず、例えば19の国では、2002/03年から10年間の一般的な動態(学生数や男女の割合)を把握することができなかった。
大学がアクセス機会拡大のための助成を受けることは稀
アイルランドと英国のみが、高等教育進学の機会に恵まれない層の進学促進および落第防止を果たした大学に対し、資金的援助を行っていた。
26ヶ国で修業年限遵守のための財政支援制度がある
学生の落第防止のため、例えば標準修業年限を超えた場合のみ授業料を徴収するなどの制度がある国は26に上る。
欧州の半数の国で卒業率が向上した大学に財政支援をしている
国からの助成金に、各大学の学生の卒業率が関係しているのは、全体の半数だった。
パートタイム学生の方がフルタイム学生よりも学費がかかる
幅広い学習機会の提供のためにパートタイム教育や遠隔教育の推進は望ましいが、パートタイム学生の方がフルタイム学生よりも教育投資額が多くかかっていた。それは、例えば単純な授業料の差であったり、受けられる学資援助機会の差であったりした。
労働市場のニーズとの整合のため、産業界の意見を取り入れているのは17ヶ国
学生の雇用可能性を高めるため、産業界の代表をカリキュラム開発、授業への関与させたり、意思決定あるいは諮問機関へ参画させたりしている国は17に上った。
特定の学生層のアクセス、卒業、就職に関するデータを取り上げる質保証機関はほとんどいない
学生をプロファイル別に分類して、各種データをみている質保証機関はほとんどいなかった。例えば、大学の入学制度を確認することはしているものの、その制度が弱者層の進学に与えている影響に注目することはしていない。また、落第者についての背景を詳細に分析する例もあまり見られない。さらに、社会的プロファイル別の卒業生の就職先を分析している質保証機関や国は見られなかった。そのため、社会的・経済的弱者層にとっての、高等教育進学の障壁に関するデータを得るのは不可能であった。
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