原典:ICEF Monitor(英語)
DAAD(ドイツ学術交流会)の報告書※1・2を元に、ICEF Monitor※がまとめたところによると、近年、ドイツ人留学生数が急激に増加しているという。
ドイツ人学生の国際的な流動性の増加は、ドイツの高等教育政策の重要な目標である。欧州のボローニャ・プロセスでは、2020年までに欧州高等教育圏において国際的な学習経験を有する卒業生を20%とすることが目標とされているが、ドイツの連邦・州政府は、DAADとともに、ドイツの全卒業生の半分がそういった経験を積むことを目指している。今回の統計結果は、本政策が、海外へのモビリティ傾向を高いレベルで生み出していることを示している。
なお、DAADの調査によると、学生の留学の主な動機は、「新しい経験の獲得、他の文化を知ること、新しい状況への対処、言語スキルの獲得、キャリアの見通し改善」等であり、一方、阻害する要因は、「資金調達や、海外留学訪問先とのスケジューリング・単位互換調整に対する懸念」とのことである。
モビリティの分類
(1)学位モビリティ(degree mobility):外国学位を取得することを目的とした長期的な滞在
(2)単位モビリティ(credit mobility):少なくとも3ヶ月の短い海外調査・訪問
(1)学位モビリティ(外国学位を求める学生)の増加
ドイツ国外に在籍するドイツ人学生数は、34,000人(1991年)から133,800人(2011年)と、ここ20年で約4倍に増加した。年間平均成長率は、5.3%(1991年~2004年)から10.6%(2005年~2011年)と倍に増加し、長期的な滞在による学位モビリティ学生数は、急激な増加を遂げている(Jan Kercher & Nicole Rohde, 2014※3)。
また、国内在籍者1,000人に対する国外在籍者の割合も、1991年の20人から、2011年には63人と増加しており、ドイツ人学生全体の国際的な参加の割合の高まりが見られる。(参考:2011年のドイツ国内在籍者数:2,115,682人)
図1:ドイツ国外に在籍するドイツ人学生数[出典:DAAD※1]
棒グラフ:ドイツ国外在籍者数、折れ線グラフ:国内在学生数1,000人に対する国外在籍者数)
留学先
80%が西ヨーロッパに留学しており、主要4ヶ国(オランダ、イギリス、スイス、オーストリア)だけで、約63%を占めている。
図2:主要な留学国・都市のスナップショット(2010年)[出典:DAAD※1]
学位取得における専門分野の傾向
外国で学位取得を目指すドイツ人学生の中で需要が高い分野は、経済学(21.5%)、法学・社会科学(18.5%)、言語学、文化、スポーツ科学(14.4%)、数学・自然科学(10.5%)であり(カッコ内は全ドイツ国外在籍学生数に対する割合)、これら4つの主要専門分野だけで、全体の約65%を占めている。一方、工学、人間医学・ヘルスケア、農業、林業、栄養科学、芸術、美術理論、獣医学分野は、それぞれ10%を下回った。
なお、専門分野別の在籍割合は、受入国によって大幅に変化しており、特に経済学・ビジネスのプログラムでは、オランダと米国が最大のシェアを占めている。また、オーストリアに在籍する学生の大半は法学と社会科学を研究し、フランスでは言語学と文化コースが最も一般的な選択となっている。
図3:学位取得の専門分野別ドイツ人学生在籍分布[出典:DAAD※1]
【凡例】緑:言語学、文化学、スポーツ学、ダークブルー:法学、社会科学、ライトブルー:経済学、黄:数学、自然科学、赤:医学、健康科学、黒:工学
(2)単位モビリティ(短期留学)の成長
海外に短期留学・訪問するドイツ人学生の割合も、20%(1991年)から32%(2000年)と、ここ10年で着実に成長している。
留学先・期間
西ヨーロッパが60%、北米が14%であり、学位モビリティに比べて、単位モビリティは地理的に広く分布している。また、平均期間は、2000年には約9ヶ月であったが、2012年には約7ヶ月と減少している。
目的の変化
近年、単位モビリティの性質が若干変化している。主な目的は、留学(Studium)であり、2013年には全体の55%を占めている。また、実習先(Praktikum)としての需要も、減少してはいるものの、未だ重要な位置を占めている。一方、遠足・見学(Exkursion / Studienreise)やプロジェクト(Projektarbeit)は堅調に推移している。また、語学コース(Sprachkurs)の需要は僅かに減少し、サマースクール(Sommerschule)は僅かに上昇している。
図4:ドイツ人学生の研究のための海外訪問[出典:DAAD※1]
ICEFは、教育機関・エージェント等を対象として、国際教育や留学の促進・発展のサポートを行う有限会社(本社:ドイツ・ボン)。ICEF Monitorは、ICEFが提供する無料のオンライン情報であり、国際教育産業のニュース、マーケット情報、リサーチ、動向、留学生リクルートのヒントなどが発信されている。
引用・参考資料
※2 DAAD (2014) Facts and figures on the international nature of studies and research in Germany 2014
※3 Jan Kercher & Nicole Rohde (2014) German Students Abroad, International Higher Education, The Boston College Center for International Higher Education, 75, pp.18-19.