出典:ECA(英語)
複数国の大学による共同課程に対する評価を一本化する動きが現実となってきた。2015年7月8日、ドイツの評価機関を統括するアクレディテーション協議会(AR)とオランダおよびフランダース地方(ベルギー)の大学評価を担うオランダ・フランダースアクレディテーション機構(NVAO)は、ジョイントディグリー課程評価に関する相互認定協定を締結した。これによって、ドイツの大学とオランダ/フランダースの大学によるジョイントディグリー課程は、AR認定評価機関かNVAOのどちらか一方の評価を受ければよくなり、多重評価による大学の負担への軽減効果が期待される。
締結された協定書によると、AR認定機関あるいはNVAOがプログラム評価をする際、もう一方の機関が求める追加の評価項目も含めることで、両機関の適格認定を与えられることが合意されている(下記参照)。言語が異なる地域での取り決めであることから、評価報告書は英語で書かれる。また、評価を行わない側には訪問調査へのオブザーバ派遣の権利が認められている。さらに、ドイツの機関別評価であるシステムアクレディテーション(Systemakkreditlerung)やNVAOによる機関別オーディットによって適格認定を受けている大学が、ジョイントディグリー課程に参加している場合の扱いについて、今後、共同検証がなされることも明記されている。
欧州ではプログラム評価を行う国が多く、ジョイントディグリー課程は異なる国から何度も評価を受けなければならないことがあり、評価疲れや事務的負担の多さが問題となっていた。そのため、欧州高等教育アクレディテーション協会(ECA)は、ジョイントディグリー課程が1度の評価受審で済むよう、各国が評価結果を相互に認め合う協定(MULTRA)を整備した。すでにNVAOは、ドイツの評価機関が行ったジョイントディグリー課程評価の結果を、MULTRAに基いて昨年10月に認証(本サイト2014/10/20投稿記事)している。
今年5月には、欧州各国閣僚によって『共同教育プログラムの質保証に関する欧州的アプローチ』(本サイト2015/1/13投稿記事)が採択され、ジョイントディグリーなどの共同教育プログラムの評価で用いるべき基準と手順が示され、1つのプログラムが受ける評価は1度だけにすることが各国に求められた。
こうした背景を受けたARとNVAOによる協定締結が、他の国の参考となることは必至である。これまでのプログラム評価中心の議論だけでなく、日本を含めた機関別評価を行う国でのジョイントディグリー課程の質保証という視点からも、注目される協定内容である。
【協定内容の詳しいまとめはこちら】
評価機関ごとに求められる追加の評価項目
評価機関 | 評価による成果 | 追加の評価項目 |
NVAO | オランダ/フランダースの適格認定付与 | プログラムの実行性(特に学習負担の継続性測定機能)の評価 |
AR認定機関 | ドイツの適格認定付与 | プログラムの成果の評価 |