連邦教育省は10月14日、既存の大学と非伝統的教育提供者とのパートナーシップによる教育プログラムに対して、試験的に連邦奨学金の支給対象とする事業を行うことを発表した。ここでいう非伝統的提供者には、ムーク、ブートキャンプ型研修、企業研修などが含まれている。
EQUIP (Educational Quality through Innovative Partnerships)と命名されたこの事業は、近年増加傾向を見せている、学位課程よりも短期間の高等教育を受ける学生に対して、プログラムの質保証を前提に国が財政支援を行うために実施される。そこで、連邦教育省はEQUIPの目標として下記の4点を挙げる:
- 大学と非伝統的教育提供者のパートナーシップによって、低所得者層を中心としたより多様な学生が革新的な教育に接し、平等な社会の実現に近づくことができるか調査する
- 学習成果の測定を通じて、非伝統的教育の効用を測る
- 非伝統的提供者とその教育に対する質保証制度を試用する
- 新たな高等教育に対するリスクから学生と納税者を保護する方策を検討する
こうした新たな(非伝統的)高等教育は、社会人として求められるスキルが身につくとして注目を集める一方、その品質を維持管理する仕組みが整備されていないと問題にもなっている。そこで、今回のパイロット事業では、教育プログラムを提供するパートナーシップ側が、第三者の立場で質保証を行う機関(QAE: Quality Assurance Entity)を用意することが求められている。QAEの形態に指定はなく、①パートナーシップが主張する通りの教育が行われているか、②①を証明するための証拠はあるか、③学習だけでなく就職面も含めた成果が挙がっているか、といった側面での評価が求められている。
Inside Higher Edの報道では、このパイロット事業の仕組みにはQAEだけでなく既存の評価機関も関係すると指摘している。これは、大学がこうしたパートナーシップを構築する際には、適格認定を受けている評価機関に対して変更届を提出し受理されなければならないからだ。一方で、教育省の事業に採択されたプログラムを評価機関が拒否することはできないだろう、という見方も紹介されている。
教育省によると、今回の事業では10に満たない少数のパートナーシップが選定される予定である。選考においては、下記の5つの領域にもとづいた審査が行われる。
- 学生に肯定的な成果を促す革新的アプローチ
- 特に低所得者層に配慮した平等性と機会提供
- 厳格な質保証の仕組み
- プログラムの廉価さ
- 強力な学生と納税者保護のための措置
パイロット事業への申請は即日始まっており、12月14日に締め切られる。なお、この取組みは連邦教育省の試験的事業(Experimental Sites Initiative)の一環として行われる。昨年(本サイト2014年9月11日投稿記事)はコンピテンスベース教育課程や直接評価と単位時間制の併用課程等に対して、同様の事業募集を行っている。
こうした新たな高等教育に対する質保証の動きとしては、昨年11月に全米アクレディテーション協議会(CHEA)とPresidents’ Forumが共同で設立した、代替高等教育と質保証委員会による政策提言書(本サイト2014年11月13日投稿記事)がある。ここでは、第三者による独立した任意の質保証の必要性が強調され、評価の際に見るべき14の視点が挙げられた。また、遠隔教育の評価を行うDistance Education Accrediting Commission (DEAC)は、今年の4月に、独自に設定した基準によるピアレビューとしてApproved Quality Curriculum (AQC)を導入した。第1号として、Sophia LearningとStraighterLineがAQC提供者として認定された。一方、国際標準化機構でも正規教育外の学習サービスの国際規格ISO/DIS 19366の策定を進めている。これは高等教育に特化した内容ではないが、教育サービスの質全体が底上げされる面で注目を集めている。
また、ムークに対する質保証の考察としては、ノルウェー政府が組織した特別委員会(本サイト2014年10月17日投稿記事)と、オランダの質保証機関NVAO(本サイト2014年9月12日投稿記事)による報告書がある。