国際的・異文化的学習成果についての報告書が公開される

原典:ECA(英語)

欧州高等教育アクレディテーション協会(ECA)は、2015年に報告書「An introduction to international and intercultural learning outcomes」を公開した。
当報告書は、CeQuInt(国際化に関する欧州サーティフィケートプロジェクト)の枠組みにおいて公開されたものであり、質保証とCeQuIntが示す高等教育機関及びプログラムの国際化の評価を考慮しつつ、国際的・異文化的学習成果について、目標設定やその測定方法等、初歩的な事項について示したものである。報告書は、学習成果の設定から達成状況の測定まで、教育方法や測定方法等と関連させながらまとめられている。
当記事では、学習成果に着目して、目標とする学習成果の明確化やその設定・測定方法等について紹介する。

目標とする学習成果の明確化

  • 学習成果は、目標に合わせて決定することが重要であり、さらに実務や職業的な要件を満たすものでなければならない。
  • 学習成果の達成状況は、学生に対するアセスメントを通して示されるため、プログラムに関連する全ての学習成果を測らなければ、達成状況を示すことはできない。
  • 学習成果は、資格枠組の各レベルにおいて必要とされる能力やディスクリプター(descriptor)と区別することが重要であり、学習成果はSARA(※1)に示される4つの要素が含まれなければならない。

(※1)SARA
Specific(明確であること)               Achievable(達成可能な成果であること)
Referenced(資格枠組等を考慮していること)      Assessable(成果を測ることができること)

  • 目標とする学習成果の良い設定方法は、学習が終わった時に何ができるようになっているか、ということから考えていくことである。目標に合った学習成果を設定することにより、学習とアセスメントの手段が明確になり、教育方法についても、自ずと決まってくる。
  • 学習成果はインプットやプロセスに焦点をあてたものから、成果や結果に向けたものへと高等教育の方向性を変えることを促している。この動きは高等教育の国際化においても本質的に同じように作用し、焦点が定量的なもの(留学生の数)から定性的なものに移り変わっている。したがって、急速に国際的・異文化的に結びつく社会において、学生に対して適切な学習成果をもたらすようなプログラムを提供することが必要である。

国際的・異文化的学習成果の設定について

  • 国際的な学習成果は、既存の規律と両立し、他の地域や環境の中においても通用する能力に対応したものであるべきである。
  • 異文化的な学習成果は、文化そのものへの判断をすることなく、あらゆる文化を持つ人々と有効かつ適切なコミュニケーションをとったり、協調したり、文化を重んじる能力に対応したものであるべきである。
  • 高等教育において、一般的・包括的な国際的・異文化的学習成果といったものはなく、プログラムの状況に沿って作成されるべきであり、それらは最終的にプログラムが目指す、国際化のための目標となる。

学生の学習成果の測定

  • アセスメントはプログラムの目的に合ったものであるべきで、プログラムが目指す学習成果を学生が達成できたか否かを測ることができるものであるべきである。
  • 一般的なアセスメントは、国際的・異文化的学習成果を反映するものとは限らないので、たいてい改定したり応用したりして用いる必要がある。
  • 異文化的学習は継続的な学習であるため、アセスメントは学習の達成度に係る形式になりうる。
  • ポートフォリオは、学生が自身の達成状況を集め、まとめる作業を助ける。当作業により、学生は自身の学習を振り返ることができ、学生自身の意識よりも学習が進んでいることが明らかになることもある。
  • グループワークとそれに関した課題は、学生が学習と作業を一緒にできるアセスメントとして用いられている。このようなアセスメントでは、学生は、自身に期待されていることや課題の評価方法について明確に理解する必要があるため、綿密な計画と入念な構成が必要である。

修了時の達成

  • プログラムの中で行われたアセスメントは、修了時の達成状況を直接的に示すものとなる。
  • 卒業生、雇用主、労働者は、間接的にプログラムの卒業生が持つ能力を示す要素であり、同窓会等も、学生にはない視点を提供しうる。ただし、それらを学習成果とみなすことはできず、あくまで補助的な情報に過ぎない。
  • 留学時の学習成果の測定に関して、国際的・異文化的学習成果を意識的に達成するためには、留学中に達成することが期待される成果について、あらかじめ学生に伝えることが必要である。それらの学習成果は、留学中もしくは留学後に測るべきである。

結論

国際的・異文化的学習成果を達成するには、「目標とする国際化」、「目標とする国際的・異文化的学習成果の設定」、「教育」、「学習」、「学生の学習成果の測定」の5つの要素が揃った時に達成され、一つでも欠けると国際的・異文化的学習成果は達成されないと結論付けられている。

 

カテゴリー: 欧州 タグ: , パーマリンク

コメントを残す