高等教育機関におけるコンピテンスベース教育の質管理のための手引き

原典: 欧州高等教育質保証協会(ENQA)(英語)

欧州高等教育質保証協会(ENQA)は2016年11月に、高等教育機関におけるコンピテンスベース教育※1の質管理(IQM)について一連の手順を説明した手引き「HANDBOOK FOR Internal Quality Management in Competence-Based Higher Education」を公開した。同手引きはIQMプロセスの担当者等に対し、同プロセスの具体的な手順を示したものである。

IQMプロセスの流れ

事前の準備:IQMプロセス実施のための枠組みの策定

この段階では、各機関の意思決定者がIQMプロセスの導入を了承し、その実施を支援する。また、全てのステークホルダーより代表を選出して研修を行い、IQMチームを組織する。さらに、IQMプロセスの実施に必要なリソースを準備する。

Step1:IQMコンピテンスモデルの作成

この段階では、高等教育機関がコンピテンスベース教育を実施するにあたって重要な要素となる質基準※2に準拠したコンピテンスモデルを作成する。コンピテンスモデルとは、特定の学習プログラムにおいて学生が身に付けるべき能力を示したものである。多くの機関は学生が身に付けるべき能力のリストを有しているため、そのリストを基にコンピテンスモデルの作成を始めるとよい。また、作成されたコンピテンスモデルをステークホルダーに周知する。

Step2:分析に必要な情報の収集

この段階では、IQMプロセスについてステークホルダーに周知する。特に情報収集作業の実施については事前に周知しておく。収集した情報は、学生が身に付けるべき能力と実際に学生が身に付けた能力の差について示すものとなるとともに、教育プロセスの質に関して学生からの視点を提供することとなる。報告書完成後は、ステークホルダーごとに適切な方法で内容を通知する。

Step3:情報の解釈と質向上・保証のための方策の策定

報告書の情報に基づき、質の向上と保証のための可能な方策を策定し、ステークホルダーに周知した上で実施する。

振り返り:IQMプロセスの実施から得た教訓を基に次回のプロセスに向けた改善を図る

IQMプロセスにおける成功要因を分析する。また、予期していなかったトラブルなどの教訓をまとめる。さらに、様々なステークホルダーからのフィードバックを得て、今後のIQMプロセスの実施において活用するための資料を作成する。

IQMプロセスを継続的に実施するためにすべきこと

  • 複雑であるIQMプロセスについて、実務面で助言したり議論の活性化を図ったりする等により、意思決定者を支援する。
  • 質管理委員会(quality management board)を立ち上げること。当委員会は各種のコンピテンス、コンピテンスベース教育およびその質の管理に深く関わり、議論すること。
  • 機能的な事務体制を構築し、事務局はIQMプロセスを支援すること。
  • IQMプロセスは高等教育機関の全ステークホルダーに関係する事項であるため、ステークホルダー集団に一定の権限を付与すること。

コンピテンスベース教育については、これまで特に米国において注目されており、アメリカ連邦教育省が主体となって取り組む関連事例も報告されている(本サイト2015/7/2投稿記事)。なお、米国におけるコンピテンスベース教育とは、学生が持つ知識や技能といった見えやすい能力だけでなく、思考力、意欲、感性といった見えにくい力も含む概念である(本サイト2014/10/31投稿記事)

※1高等教育におけるコンピテンスベース教育
同手引きにおいては、教育や学習プログラムの結果としての学生の能力に焦点をあてる教育と定義づけられている。

※2質基準

  • 学習分野と最も関連の深い能力分野を選ぶ
  • 上記で選んだ能力分野の中で最も関連の深い能力を定義する
  • 選んだ能力について、知識や理解の側面から測る部分(cognitive)と技能や実績など実践能力から測る部分(practical)を定義する
  • 学習修了後に達成すべき能力の程度を定める
  • 様々な学位段階にわたるなど、複数年に及んだコンピテンスモデルを作成して補う
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