米国高等教育アクレディテーション協議会(Council for Higher Education Accreditation: CHEA)は、2017年4月4日に、「政策方針書:アクレディテーションの規制緩和(Position Paper: Regulatory Relief for Accreditation)」を発表した。アクレディテーションに対する連邦政府の規制を減らすことで、より効果的・効率的なアクレディテーションの規制枠組みの策定を目指すとしており、規制緩和を重視する連邦政府や議会との協調路線を志向するものとみられる。
提案1:連邦規則の緩和
(1) アクレディテーション機関の認可要件の見直し
(2) 機関・プログラムの「実質的な変更」の概念の縮小
(3) 学習時間を基準とした単位の定義の廃止
(4) アクレディテーション機関が秘匿すべきとされている情報の縮小
提案2:準則(及び付随する文書における要件)の緩和
(1) 一般的な定義・用語に係る要件の緩和
(2) アクレディテーション活動に対する連邦教育省の監督の廃止
(3) 柔軟性のある評価に対する連邦教育省の監督の縮小
提案3:連邦法の緩和
(1) 既存の規則の維持。規制をさらに拡大する立法(第114会期の米国上院に提出されている法案※)については反対する。
(2) 大学の質に関する国家諮問委員会(National Advisory Committee on Institutional Quality and Integrity: NACIQI)の役割の再検討。代替的な委員会や運営方法の創設を含む。
(3) 合理的・合議的で透明性のある方法を目指した、法作成過程の見直し。
(4) 高等教育関係者・アクレディテーション機関による、準則に付随する文書やアクレディテーションに対する協議、及びその連邦政府による監督としての位置づけ。
CHEAは規制緩和を、アクレディテーションの改善に向けた3つの目標を達成するためのものとして位置づけている。
- 学生保護:アクレディテーションの厳格さを強化し、機関やプログラムに係る広範で分かりやすくアクセスしやすい情報を提供する。
- イノベーションの促進:伝統的な教育提供者の質に対する評価において新たなアプローチを推奨し、新たな教育提供者及び新たな単位付与の質に対する評価を拡大する。
- アクレディテーションの強みを維持:各機関及びプログラムの学術上のリーダーシップ、ピアレビュー及び学問の自由への関与を高めて維持する。
Trump大統領は就任前から大学に対する規制緩和を重視しており(本サイト2016年12月20日投稿記事)、2017年1月には、リバティ大学学長であるJerry L. Falwell Jr.氏に連邦教育省の政策や手続きの見直しに向けたタスクフォースの立ち上げを要請している。同氏はThe Chronicleのインタビューに対して、タスクフォースは「アクレディテーション等に対する連邦政府の広範でかつ詳細に及ぶ規制について対応するものである」と答えている。
また上院では、連邦規則に関するタスクフォースにおいて、共同議長であるWilliam Kirwan氏が大学に対して過度の負担となっている59の連邦規則を特定しており、これらの規制や大学の負担を軽減するための解決策についてヒアリングを行うことを提案している。
米国では、アクレディテーション活動を規律する法律、規則、準則は膨大である。さらに、準則については、連邦教育省が発表するガイダンスなど付随する文書があり、連邦政府から認可を受けるあるいは認可を継続するにあたって、アクレディテーション機関は200以上の項目の遵守が求められる。
このような過剰な連邦政府の影響力により、アクレディテーション活動の進取性や革新性が妨げられてしまっており、特に2に述べたような目標の達成に対して、アクレディテーション機関は消極的になっているという。
原典①:CHEA(英語)
原典②:The Chronicle(英語)
原典③:LEXOLOGY(英語)