2017年2月、オランダ下院議会は、オランダ教育・文化・科学省が提出した法案をもとに、高等教育・研究法(WHW)の改正案を可決した。本改正法はオランダの高等教育機関と外国の高等教育機関が共同で高等教育を提供する件に関して定めたものであり、本改正法によってオランダの高等教育機関は、これまでより容易に国際的な共同学位プログラムを設置することが可能となる。
改正法(第1条19項ブランチキャンパス)のポイント
- 外国でオランダの学位プログラムを提供することを許可する。
- 外国で提供されるプログラムに公的資金を投入することを禁ずる。
- 外国でのプログラム提供には教育・文化・科学大臣(以下、大臣)の事前の認可が必要である。
- 大臣は認可の権限を有し、その可否は法律で定められた事由に則って行わなければならない。
適用例―フローニンゲン大学煙台校について
オランダのフローニンゲン大学は中国農業大学(China Agricultural University)と連携し、オランダで初めての海外ブランチキャンパスとして、中国にフローニンゲン大学煙台校(以下、煙台校)を開校する計画を進めている。煙台校は研究型の大学として2018年9月に開校し、2019年から学位プログラム(4つの学士プログラム、2つの修士プログラム)を提供する予定である。大学の運営費用は授業料で賄うとされ、建物や設備は煙台市が責任を負担する。また煙台校と共同研究を行うオランダ企業や中国企業からの投資も見込まれている。
フローニンゲン大学の狙いとしては、中国にキャンパスを置くことでフローニンゲン大学を世界的なトップ大学としての地位に引き上げることや優秀な学生・研究者を集めること、さらには大学の国際化を図ることが挙げられる。
本計画は2015年3月25日にフローニンゲン大学、中国農業大学、煙台市の3者間の取決めから始まった。煙台校はフローニンゲン大学と中国農業大学が設立する共同の大学で、ブランチキャンパスという形をとっているものの、両大学から独立し、フローニンゲン大学とは別にアクレディテーションを受審する予定である。また今回改正した法律や関連法により、煙台校とフローニンゲン大学はそれぞれ個別に学位を発行することができ、一方のアクレディテーション結果が他方に影響を与えないようになっている。一方、フローニンゲン大学に所属する学生が煙台校でプログラムを選択した場合、取得した単位はフローニンゲン大学でECTS単位(参照:NIAD-QE国際連携ウェブサイト)に換算される。
フローニンゲン大学によると、煙台校は中国の法人格を持つが、プログラムの内容は中国政府の影響を受けないとのことである。一方、オランダ国内からは、中国の実際の状況を鑑みると煙台校における学問の自由の保証が難しいことや教育を商業化すべきでないといった批判もなされている。
原典: EP-Nuffic(オランダ語)
原典:フローニンゲン大学(英語)
原典:Overheid.nl(オランダ語)