OECDから見た日本の成人技能の課題

2017年5月4日、経済協力開発機構(OECD)は、各国によるグローバルバリューチェーン(以下、GVCs)及びそれに伴う技術開発によって生産性を向上させることができるという考えのもと、GVCsにおける技能の問題を概観する「OECD Skills Outlook 2017」を発表した。「平成26年度年次経済財政報告」によると、GVCsとは、複数国にまたがって配置された生産工程の間で、財やサービスが完成されるまでに生み出される付加価値の連鎖を表す。OECDはグローバル市場における各国の成長には技能が重要であると考えているため、本書では、各国別に成人技能についての分析及び提言がなされており、高等教育や継続教育の在り方に対しても示唆がなされている。本書の分析は、国際成人力調査(以下、PIAAC)※1及び付加価値ベースの貿易統計をもとに行われている。

日本についての分析
  • 日本は特に複雑なビジネスサービスやハイテク・ミッドハイテクの製造業に強い。こうした専門性の傾向には日本の技能の特徴が示されている。特に、信頼のある資格と相対的に質の高い技能を併せ持つ労働者が多いことによって、日本は専門性を深め、類似産業にも専門性を持つことができる。
  • PIAACによると、日本では読解力または数的思考力が低い人の割合がわずか9%であり、OECD諸国の中で最も低い。
  • 日本は労働者の学習環境が整っておらず、国民に認知能力・社会情動的能力※2の両方を組み合わせた技能を身に着けさせ、成人の継続教育を支援する必要がある。
日本にとってカギとなる政策
信頼のある資格と多様な関連技能を労働者に身に着けさせる
  • PIAACによると、日本の労働者は高い認知能力を持っているが、労働者の学習環境は整備されていない。また、日本では労働者が、情報通信技術(ICT)、STEM※3、経営、コミュニケーション、マーケティング、会計の課題に取り組む頻度が他のOECD諸国に比べて少なく、労働者にはこうした技能を身に着けさせるべきである。先進的な技術産業における日本の強みを守り、高めるためには、労働者は認知能力だけでなく社会情動的能力も取得していなければならない。
  • 労働者に高い技能を身に着けさせるためには、遡って質の高い就学前教育が重要である。加えて、学校での革新的な教育方法や教師の強力なサポートは、認知能力・社会情動的能力の両方に関連した技能を身に着ける手助けとなる。
成人技能を継続的に発展・順応させる
  • PIAACによると、日本の成人教育への参加率はOECDの平均を下回っており、技能が低い成人においては、OECD諸国の中で最低レベルである。
  • 技能が低い労働者と労働市場から退いた成人は技能訓練から利益を得られない負のサイクルに陥っており、それゆえ彼らの技能は成長しない。政策によって、解雇の危機にあるすべての労働者をサポートし、成人学習の質を保証する必要がある。
蓄積された技能を最大限に有効活用する
  • 日本ではレベルの高い人材マネジメントの取組みが他のOECD諸国に比べて広く普及している。それらの取組事例を、技能の効果的な活用や新しい需要への対応で大いに活用できるであろう。
教育・訓練・イノベーションの国際連携に参加する
  • 日本では教育、訓練、イノベーションの分野での国際連携が進んでいない。国際的な共同特許取得に関しては、2012年OECD諸国の中で最下位だった。科学論文執筆者の国際的な流動性は相対的に低く、このような状況により留学生や研究者を引き付けられていない。
  • 教育、イノベーション、研究に関する国際連携への参加については、多くの政策が影響を与えており、幅広いアプローチの必要性を明白にしている。

※1 PIAACとはOECDが実施する、成人の「読解力」「数的思考力」「ITを活用した問題解決能力」及び調査対象者の背景(年齢、性別、学歴、職歴等)に関する調査。
※2 認知能力とはIQテストや到達度テスト等によって測られる力。一方、社会情動的能力とは、忍耐力、社交性、自尊心などの個人の特性等。これらの能力の定義については、OECDワーキングペーパー「家庭、学校、地域社会における社会情動的スキルの育成」(2015)も参照のこと。
※3 STEMとはScience(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の4つの頭文字をとった略称である。

原典:OECD(英語)

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