編入学では修得単位の約4割が認定されず?米国会計検査院が報告

2017年9月13日、米国会計検査院(Government Accountability Office: GAO)は1、高等教育における学生の編入学の実態に係る報告書”HIGHER EDUCATION: Students Need More Information to Help Reduce Challenges in Transferring College Credits” を公表した。

編入学によって、学生が修得した単位が編入学先でどの程度単位認定されるかは、学生の学位取得までの時間と費用に影響する。ひいては連邦政府奨学金の支給額にも関係する問題であることから、GAOは学生の編入学プロセスについて調査を行った2

1.学生の学位取得、連邦奨学金の財政状況に影を落とす

GAOの調査によると、2004年から2009年に生じた編入学では、平均して、学生が修得した単位の43%が単位認定されていない。単位認定されない割合は、学生が単位を修得した機関及び編入学先のパターンによって異なり、私立機関から公立機関への編入のような少数派の珍しいパターンの場合に不利となっている。

パターン例1 公立機関から公立機関への編入学
(全パターン中62%)※3
学生が修得した単位の37%が
編入学先で単位認定されない※4
パターン例2 私立機関(営利)から公立機関への
編入学(全パターン中4%)
学生が修得した単位の94%が
編入学先で単位認定されない

さらに、単位認定は学生が学位取得までに負担することになる学費についても影響を与えることになる。つまり、学位取得を目指す学生は学費の高い大学に進学したい場合、学費の安い機関で修得した単位を大学に単位認定してもらうことで学費を抑えることができるが、単位認定されなかった場合には、単位修得にさらに時間及び学費がかかってしまう場合がある。GAOの調査によれば、2004年から2009年に編入した学生の約半数がペル奨学金を受給し、また3分の2が連邦直接学生ローンを利用している。このことから、単位認定されなかった編入学生は、単位修得のためにさらに連邦奨学金を利用することになり、結果的に連邦奨学金の支給額の膨張につながることが想定される。

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(出典:HIGHER EDUCATION: Students Need More Information to Help Reduce Challenges in Transferring College Credits,GAO)

2.コミュニティ・カレッジ学生の進学状況

編入学ではこのように単位認定において困難が生じるため、実際上も、編入学の代表的な例であるコミュニティ・カレッジ※5から4年制高等教育機関への進学者は一部に留まっている。

National Student Clearinghouse※6の報告書によれば、2010年秋のコミュニティ・カレッジ在籍者で学士取得の準備段階として学んでいる者は85万2439人であり、その内の31.5%である26万8749人が6年以内に4年制の高等教育機関へ進学した。なお、前回調査である2007年秋では33%となっており、減少傾向を見せている。

3.編入学に関する情報提供の充実が課題

GAOは、学生が編入学にあたって十分な情報を得ることができていない点に課題があると指摘している。

GAOの調査によると、全米の約29%の機関では編入学協定(Articulation agreement)をウェブサイトに掲載していない。編入学協定とは、編入学を見据えて準学士取得の学習をする際、両機関におけるコースの同等性について重要な情報を公表するものである。また、これらを掲載していない機関には、そもそも編入学協定を有していないもの、編入学協定を有しているがウェブサイトに掲載していないものが混在していた。なお、連邦教育省は高等教育機関に対して単位認定方針に関する情報を提供することを要請しており、米国のほぼ全ての高等教育機関で達成されているが、編入学協定の公表は要請していない。

したがってGAOは、連邦教育省は高等教育機関に編入学協定のリスト及びその有無をウェブサイトに明示するよう要請すべきであるとしている。併せて、連邦教育省による情報提供も行うべきであるという。

4.先進的な事例:ワンストップサービス、積極的な単位認定を推進するペンシルベニア州

一方、州によっては編入学を希望する学生を積極的に支援する取組みが見られている。

ペンシルベニア州では、2006年に設立された、ペンシルベニア州単位認定・編入学センター(PA TRAC)によって、州内の単位認定・編入学の制度及びPA TRAC参画大学※7の情報を一元的に提供しており、学生が大学への編入学を計画する際の有用な情報源となっている。

PA TRACが同州で提供している制度のうち、目玉となっているのは、参画大学が提供しているほぼすべての専攻で学位取得に必要とされる単位について、30単位を上限に、認定単位を編入学生が選べる「30単位認定枠組み」という任意の制度である。

また「プログラム編入」では、準学士を有しかつ適格と認められた学生に対しては、PA TRAC参画大学における類似する分野の学士課程への編入を認めるとしている。編入にあたっては、単位数について最大限の単位認定を行う。

※1 連邦議会からの検査要請に基づき、連邦政府の各省庁等のプログラム及び業務に関連した監査、捜査及びそれらの監督を行う、立法府の機関。

※2 GAOは、2004年から2009年の学生集団(cohort)に関する教育省のデータ及び無作為抽出の25の高等教育機関に所属するステークホルダーへのインタビューを分析し、また代表的なサンプルとして214の高等教育機関のウェブサイトを調査した。

※3 2年制大学から4年制大学、4年制大学から別の4年制大学といった、あらゆる場合を含む。

※4 なお、このパターンのうち、2年制公立機関から4年制公立機関への編入学(全パターン中26%を占める)については、比較的認定される割合が高く、学生の修得した単位が編入学先で単位認定されていない割合は22%である。

※5 州や市が地域住民に平等に教育の機会を与えることを目的として、教養教育や職業教育訓練を提供する2年制公立大学。修了により準学士を取得できる。

※6 Clearinghouseは1993年に設立された非営利組織であり、高等教育機関が定期的に学生の学籍登録データをClearinghouseに送ることでClearinghouseには学生データが蓄積される。現在、米国の全学生の98%以上が在籍する3,600以上の高等教育機関がClearinghouseに参加している。

※7 州法によって定められているペンシルベニア州内のコミュニティカレッジ14機関及び大学14機関の他、いくつかの機関が任意参画している。

原典①:GAO
原典②:National Student Clearinghouse
原典③:The Pennsylvania Transfer and Articulation Center

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