2018年5月にフランス・パリで開催される次回のボローニャ・プロセス大臣会合※1に向けて、2017年10月オランダで「Peer Learning Activity(PLA)」が開催され、欧州10か国から43名※2が参加した。ボローニャ・プロセス(NIAD-QE国際連携ウェブサイト)とは、1999年のボローニャ宣言から始まった欧州高等教育システムの改革プロセスのことで、欧州高等教育圏(EHEA)内でのモビリティの向上や単位互換制度の確立等を目指している。今回のPLAでは、特にEHEA内の共同教育プログラムのアクレディテーションに関して、国別に異なる要件を定めていることにより認証が長期化している問題に対する今後のアクションポイントが作成された。
アクションポイントの背景
共同教育プログラムにおけるアクレディテーションの認証を短期化するため、欧州高等教育アクレディテーション協会(ECA)によって欧州アプローチ(NIAD-QE国際課まとめ)が提案され、2015年5月に大臣会合(エレバン会合)で採択された。欧州アプローチでは、主に①国別に特別な要件を定めずに、共同教育プログラムに求める統一基準を作ることで、プログラムの開発障壁を取り除き、②プログラムの共同性を的確に反映する質保証アプローチを提供することを目指す。欧州アプローチでは、共同教育プログラムに参加している大学がプログラム評価を求められる場合は、欧州質保証機関登録簿(EQAR)に登録されている質保証機関が統一基準を用いて評価を行う。
欧州アプローチの実現には各国が国内法を改正する必要があるが、依然多くの国が法改正をしておらず、国別に異なる要件が維持されている。
アクションポイント(教育大臣・質保証機関・高等教育機関に関するもののみ抜粋)
- エレバン会合での同意事項を実行する:欧州アプローチを国内法に組み込み、その結果が国内の質保証機関によって受け入れられるようにする。
- 高等教育機関に対して欧州アプローチが有するメリットを明確にし、欧州アプローチに対する関心を高める策を講じる。また、共同教育推進センター(joint promotion centre)を設立する(例えばEQARを通じて)。
- 高等教育を国際化するための国家戦略検討の際には、欧州アプローチを考慮する。
- 欧州アプローチに従い、データや統計値を集めて、共同教育プログラム及び共同教育プログラムアクレディテーションの発展状況をモニターする。
- EQAR登録機関によって実施されている欧州アプローチを支持し、欧州アプローチに対する国の理解を促進する。
- 欧州アプローチの実施を強化するため、質保証機関内部のキャパシティ・ビルディングやトレーニングを実施する。
- 戦略の実践、経験の蓄積、優れた取組事例の共有を実現する。このために質保証機関間での国際的な会合や交流の場を設け、結果を出し、行動指針において欧州アプローチと質保証機関の役割を最重要視する。
- 教育省や高等教育機関に欧州アプローチの取組を促し、高等教育機関向けに段階的なガイドラインを示すハンドブックを作成する。
- 高等教育機関の執行部が欧州アプローチの受け入れを支援する。
高等教育機関の戦略は
(1) 当該機関が必ず達成しなければならない目標
(2) 共同教育プログラムや他の国際プログラムがどのようにこの目標の実現に貢献するか
の2点を示さなければならない。 - 欧州アプローチを実行するのに適切なインセンティブを提供する。
ー共同教育プログラムの質保証に対し機関内部で首尾一貫したアプローチを採用する。
ー共同教育プログラムと欧州アプローチをスタッフディベロップメント(SD)に取り入れる。質保証担当が共同教育プログラムの開発に関与し、高等教育機関内に問い合わせ窓口を少なくとも一か所設ける。 - 学位プログラムレベルでは次のことを行う。
ー欧州地域プログラム内で共同教育プログラムを集約する。
ー高等教育機関内部の支援を得る。
ーパートナー機関のことを十分に承認する。
ー高等教育機関の現実的な発展のための調整に焦点を当てる。 - 共同教育プログラム及び欧州アプローチへの支援の中心となる。
ー手順やワークフローの管理に関する情報を提供する。
ー経験、優れた取組、実現性に関する情報を収集し、共有する。
※1 前回は2015年5月にアルメニア・エレバンで開催。
※2 オランダ高等教育国際協力機構(Nuffic)及びエラスムス+事務局がオランダ・フランダースアクレディテーション機構(NVAO)、オランダの教育・文化・科学担当大臣とともにPLAを開催した。学習会には欧州委員会及び教育・視聴覚・文化執行機関(EACEA)の代表者を含めて、欧州10か国の高等教育関係者が参加した。
原典:Nuffic(オランダ高等教育国際協力機構)(オランダ語)