共同教育プログラムの質保証に関する欧州的アプローチ

コメント(解説):共同教育プログラムの質保証を、欧州で統一した手法で行おうという提言書です。策定したBFUGとは、ボローニャプロセスの実行部隊であり、本提言は2015年5月に地域の教育担当大臣が集まる会合で採択されました。これによって、欧州の大学と共同教育プログラムを行う日本の大学に、直接プログラム評価の受審を求められるものはないでしょうが、欧州との連携を考える際は、必ず目を通した方がよい資料です。


正式名称
European Approach for Quality Assurance of Joint Programmes (PDF)

実施主体
BFUG (ボローニャ運営委員会)

実施年
2014年

概略
欧州地域で行われる共同教育プログラムに対し、

  • 国別に特別な要件を定めずに、共同教育プログラムに求める統一基準を作ることで、こうしたプログラムの開発障壁を取り除き;
  • プログラムの共同性を的確に反映する質保証アプローチを提供する

という2点を特徴にした策定された提言書。

提言書での「共同教育プログラム」の定義
一義的には、欧州高等教育圏(EHEA)内の複数国の高等教育機関が共同して提供している教育プログラムのことである。そのため、EHEA以外の国も参加するプログラムや、1つの国の中の複数機関が共同で実施しているものは対象とならない。
ただし、この提言書の内容は、日本などEHEA以外の国の高等教育機関が参加する共同教育プログラムにも参考となる部分は多い。また、授与される学位が、複数学位(ダブルディグリーなど)か共同学位(ジョイントディグリー)かは問われていない。

想定される適用ケース

下記(1)~(3)のケースが想定されている。日本の大学にとっては、特にケース(3)が求められる場面を、相手大学と協議の上、想定しておいたほうがいいかもしれない。

(1)プログラム評価が必要な場合
プログラム評価が求められる国の大学が、共同教育プログラムに参加しているときは、欧州質保証機関登録簿(EQAR)に掲載されている質保証機関による評価を受けるべきである。その際は、この「欧州的アプローチ」に沿って、評価を行う。

(2)機関別評価のみが必要な場合
共同教育プログラムに参加するすべての大学に対し、機関別評価のみが義務付けられている場合でも、「欧州的アプローチ」に基くプログラム評価を実施することで、当該プログラムの質を定期点検することができる。

(3)欧州(EHEA)外の教育機関
共同教育プログラムに参加する欧州外の大学は、当該プログラムの評価が求められる場面で、「欧州的アプローチ」による評価結果がそのまま認められるか、その国の当局に問い合わせておくことが望ましい。

基準

下記の9基準が挙げられている。欧州高等教育圏における質保証の基準とガイドライン(ESG)をベースとしつつも、基準1においてはプログラムの共同性を重視した項目が設定されている。

1. 適格性(Eligibility)
1.1 ステータス(Status)
1.2 デザインと提供の共同性(Joint design and delivery)
1.3 連携協定(Cooperation Agreement)
2. 学習成果(Learning Outcomes)
2.1 教育レベル(Level)
2.2 学術分野(Disciplinary field)
2.3 達成状況(Achievement)
2.4 規制を受ける職業(Regulated Professions)
3. 教育プログラム(Study Programme)
3.1 カリキュラム(Curriculum)
3.2 単位(Credits)
3.3 学習量(Workload)
4. 入学と学習履歴の認定(Admission and Recognition)
4.1 入学(Admission)
4.2 学習履歴の認定(Recognition)
5. 学習、教授、審査(Learning, Teaching and Assessment)
5.1 学習と教授(Learning and teaching)
5.2 学生の学習成果の審査(Assessment of students)
6. 学生支援(Student Support)
7. 資源(Resources)
7.1 教職員(Staff)
7.2 設備(Facilities)
8. 透明性と文書化(Transparency and Documentation)
9. 質保証(Quality Assurance)

評価の受審手順

欧州質保証機関登録簿(EQAR)に掲載された質保証機関による評価は、以下の手順で実施される。質保証機関(評価機関)は、対象国の当局と随時連携することが求められる。

1.自己評価書
上述した基準に沿った自己評価書を作成する。この作業は、参加大学が共同で行う
内容としては、参加各国の共同教育プログラムに関する制度の説明、当該プログラムの共同性の特長を必ず含める。

2.評価委員
最低4名で評価パネルを結成する。当該分野、関係業界、高等教育質保証からそれぞれ専門家を招く。また、参加各国の教育制度や教授言語への精通も求められる。
委員は、必ず複数国から選出されることとし、学生代表も1名以上含む。

3.訪問調査
訪問先大学および当該プログラムの管理部署、事務局、学生、卒業生、業界関係者らとの議論を行う。

4.報告書
基準に沿った結論、およびよりよいプログラムとなるような助言を盛り込む。
草案段階で、受審プログラムが意見を述べられる機会を充分に取ること。

5.最終結果
評価結果を求められる場合、必ず当該結果に至った理由を明らかにする。特に、部分認定、保留などの否定的結果や、委員からの報告と最終結果との間に不一致がある場合などは、必ず説明をすること。

6.異議申立て
受審プログラムは異議申し立てをする権利がある。

7.公表
評価機関は、報告書と最終結果をウェブサイトで公表する。
評価が英語で行われなかった場合でも、英語による結果の概要は必ず作成する。

8.フォローアップ
受審プログラムと評価機関は、改善を求められた点についての再審査方法について合意しておくべきである。

9.受審頻度
共同教育プログラムは6年に1度、プログラム評価を受審するべきである。
プログラム側は、前回受審から6年以内の変更点に関しては、逐一評価機関に報告を行う。

参考:BFUGが共同教育プログラムの質保証への「欧州的アプローチ」を提言

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