原典:EQAR(英語)
報告書:Recognising International Quality Assurance Activity in the European Higher Education Area (RIQAA) Final Project Report(英語)
欧州高等教育質保証機関登録簿(EQAR)が進めてきたプロジェクトRIQAA (Recognising International Quality Assurance Activity in the European Higher Education Area)は、2014年12月に最終報告書を発表した。報告書では、欧州高等教育圏(EHEA)諸国における外国の質保証機関の受け入れ状況や、質保証機関による国境を越えた質保証活動の実施状況が明らかになっている。さらに、2015年5月の欧州高等教育圏教育大臣会合へ向けた各国首脳に対する提言のほか、質保証機関、高等教育機関、EQARに対する提言もまとめられている。
RIQAAプロジェクトでは、EHEA諸国の国境を越えた質保証活動に対する開放性を机上調査し、さらに質保証機関に対するオンラインアンケート、外国の質保証機関による評価経験のある教育機関へのインタビューを実施した。その結果、47ヶ国中20ヶ国で外国の質保証機関による評価活動を、正規の外部質保証とみなす制度が存在することが明らかになった。このうち、12ヶ国でEQAR掲載済の質保証機関を名指しし、質保証活動を認めていた。しかし、多くの場合、正規の外部質保証となる要件が不明瞭であったり、教育制度や関連法規など必要な情報へのアクセスが困難であるなど、国境を越えた質保証活動は開放的とはいえなかった。また、高等教育機関にとっても、資料の翻訳、訪問調査時の外国語での対応、これまでよりも高額な受審料など、受け入れ面での不安も明らかになった。
さらに、多くのケースでは、外国の機関による質保証活動には規制がかけられていた。例えば、その国独自の認可が必要であったり、欧州高等教育圏における質保証の基準とガイドライン(ESG)以外の独自の評価基準の導入が求められたり、活動が共同教育プログラムに限定されているなどしていた。また、実際にこれまで行われた国境を越えた質保証活動の多くは、義務的でない任意のものであるため、評価活動の重複による負担増が懸念された。
しかし、それでも高等教育機関が外国の質保証機関へ評価を依頼する利点として、自校の使命やポリシーに適当な評価が期待できることや、真に国際的な経験を得られることがある。そのため、教育機関は従来以上の努力をもって外国の評価機関を受け入れている。一方、質保証機関にとっても外国で行う評価活動は名声、収入、経験をもたらすことが期待できる。当該国の当局や質保証機関と連携するなどして、初めて評価を行う国に対する事前準備を進めているという事実も、報告書は明らかにしている。
以下は、RIQAAがまとめた提言のうち、EHEA首脳および質保証機関に向けられたものを抜粋したものである。
<提言:抜粋>
欧州高等教育圏の各国政府と教育大臣がブカレスト会合での合意を履行するために;
- 高等教育の質保証は教育機関自身の責務であることを認識し、EQARに掲載されている外国の質保証機関を活用できるようにする
- ESGを欧州高等教育圏における質保証の共通基盤とし、EQAR掲載済の質保証機関による活動を妨げる追加の規制は撤廃する
- 外国のEQAR掲載質保証機関の活動を考慮し、明解で分かりやすい情報を(英語で)提供する
- ESGに準拠した外部質保証に対する障壁を除去し、国内の質保証機関のESG適合を支援する
- EQARの政府メンバーとなり、活動に積極的に関与することで同機関を支援する
質保証機関が国境を越えた活動をするために;
- ESGに準拠した、明解でわかりやすい外国での評価観点や手順を整備する
- 上記観点や手順を徹底する一方、対象国や教育機関種別に応じて運用可能な部分を明確にする
- 評価結果の最終決定権が他機関にある場合でも、国境を越えた評価活動の最終報告書は必ず公表する
- 対象国の知識を持つ評価者の参画や、当局との適切な意志疎通といった、国境を越えた評価活動における優良事例を活用する
- すべての国境を越えた活動は周期的な自己評価に基づいて行う