欧州:教員に求められる新たなFD、「デジタルコンピテンス」の習得

1.欧州におけるデジタルコンピテンス

デジタルコンピテンスとは、2006年に欧州議会及び欧州連合理事によって提案された生涯学習のためのキーコンピテンスの一つであり、仕事やプライベートといったあらゆる場面でのコミュニケーションにおいて情報社会技術を十分に利用するための能力である。これは、情報を検索及び発信したり、インターネットを通じてコミュニケーションをとったりする基本的なICTスキルを前提としている。

一方で、デジタルアジェンダ・スコアボード2015によると、EU人口の40%が十分なレベルのデジタルコンピテンスを有していないばかりか、そのうちの22%はインターネットも使っていない状況だという。

2.欧州委員会によるデジタル世代の学習者支援

デジタルコンピテンスをより普及させるため、欧州委員会は2013年、「市民のための欧州デジタルコンピテンス枠組(DigComp)※1」を開発した。また、学習者がデジタルコンピテンスを身につけられるよう、教育機関がデジタル学習技術の適切な利用を図り自己評価するためのツール及び政策立案者がこれを推進するためのツールとして、「組織のための欧州デジタルコンピテンス枠組(DigCompOrg)」を開発した。そして2017年、DigComp及びDigCompOrgを基礎として、教員が自らのデジタルコンピテンスを自己評価し向上させるための共通参照枠組である「教員のための欧州デジタルコンピテンス枠組(DigCompEdu)」が発表された。

DigCompEduは6つの分野に分かれた22のコンピテンスにより構成されている。技術的なスキルに重点を置くのではなく、どのようにデジタル技術を教育・訓練の向上及び革新のために用いることができるかを問うものである。この枠組は、一般教育、職業教育訓練、特別支援教育及びノンフォーマル学習を含むあらゆる教育の、幼児教育から高等教育及び継続教育までの全段階を対象としている。

教員のための欧州デジタルコンピテンス枠組(DigCompEdu)の構成

(1)専門家としての活動
1-1 機関単位のコミュニケーション
1-2 専門家同士の連携
1-3 実践
1-4 デジタル資源を利用した継続的な専門性の発展

(2)デジタル資源
2-1 選択
2-2 創造と変換
2-3 管理、保護、共有

(3)教育と学習
3-1 教育
3-2 ガイダンス
3-3 共同学習
3-4 自習

(4)評価
4-1 評価戦略
4-2 エビデンスの分析
4-3 フィードバックと計画

(5)学習者の強化
5-1 アクセシビリティと包摂性
5-2 差異化と個人化
5-3 積極的に学ぶ学習者

(6)学習者のデジタルコンピテンスの促進
6-1 情報とメディアリテラシー
6-2 コミュニケーション
6-3 デジタルコンテンツの作成
6-4 責任ある利用
6-5 課題解決

3.各国での取組み:IT立国エストニアの例

Eurydiceの報告書(2012年)によると、欧州のほぼ全ての国でデジタルコンピテンスに関する国家戦略を策定しているという。

例えば、エストニアでは、生涯学習戦略2020においてデジタルコンピテンスの向上を戦略の一つに掲げており※2、その実現方法の一つとして、教員、学生、学校管理者等に対するデジタルコンピテンスの評価モデルの構築及び実施を挙げている。この戦略に基づき、あらゆる段階の学習者が社会経済の発展に必要なデジタルスキルを身に付けられるよう支援する基金であるHITSA(Information Technology Foundation for Education)は、次のような活動を行っている。

  • ProgeTiger Programme:工学分野において、教員に対し、教育コンテンツの発展(e-コースやウェブツールをどのように作成・利用するかなど)を支援するプログラムを展開している。2012年から実施している。
  • Digi Peegel(デジタル・ミラー):教育機関に対し、学校運営、デジタルインフラ、学習に対するアプローチの転換といった点に対する自己評価ツールを提供するもの。教育機関はデジタル化改善のための自己評価を行い、これをもとに改善計画を策定する。2017年春から試行実施しており、2年をサイクルとする。

また、生涯学習戦略2020は、特に社会人のデジタルコンピテンスの習得について留意しており、デジタルコンピテンスを身に付け発展させるための学習機会を確保するため、訓練機関は多様なパートナーと連携するものとしている。

※1 DigCompとは、デジタルコンピテンスについて次の5つの分野に分けて説明するものである:情報・データリテラシー、コミュニケーションと連携、デジタルコンテンツの作成、安全性、課題解決。21のコンピテンスが提示されている。
※2 デジタルコンピテンス(コンピューターに関するスキルを身に付けた16歳から74歳までの人口)を、2020年までに65%(2012年)から80%にするとしている。

原典①:EU SCIENCE HUB
原典②:European Framework for the Digital Competence of Educators: DigCompEdu
原典③:SchoolEducationGateway

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