イギリス:大学代表側の提言により、3つの高等教育の支援組織が統合へ

イギリスの高等教育機関の代表団体である、英国大学協会(UUK)と高等教育カレッジ連合(GuildHE)が設置した調査グループは、2017年1月31日に高等教育の支援組織(質保証機関や統計機関等)に向けた提言を報告書で公表している。この提言の一つとして指摘された、高等教育平等推進組織(Equality Challenge Unit:ECU)、高等教育アカデミー(Higher Education Academy:HEA)、高等教育リーダーシップ財団(Leadership Foundation for Higher Education:LFHE)の3つの組織の統合について、2017年12月15日に各組織の理事会が合意に達した。この統合により、組織間の業務の重複の解消や新しいビジネスモデルの設立が期待されている。

提言を発表した調査グループについて

調査グループは、高等教育機関の支援組織について調査し、こうした組織の業務がどのように高等教育機関を継続的かつ効率的に支援することができるかについて提言を行う。調査グループはイギリス国内にある大学の副学長7名で構成されている。

調査方法について

調査グループは2016年2月に設置され、2016年の3月から11月までの間に5回の会合を行った。また、調査で判明した点については、UUK及びGuildHEの理事会や2016年のUUKのメンバー会合の際に数回議論を行った。

まず、調査グループは自ら作成した様式を用いて各組織から書類の提出を求め、書面審査を行った。高等教育セクター内の利害関係者の意見についても考慮し、UUKのメンバー(大学)へのアンケートや、イングランド高等教育財政カウンシル(HEFCE)等の利害関係機関と議論などを行った。また調査グループは調査対象である組織の長たちとともにワークショップを2回実施し、各組織と調査グループの間で1対1の会合も実施された。

調査対象となった機関

・Equality Challenge Unit (ECU)
・Higher Education Academy (HEA)
・Higher Education Careers Services Unit (HECSU)
・Higher Education Statistics Agency (HESA)
・Jisc
・Leadership Foundation for Higher Education (LFHE)
・Office for Independent Adjudicator for Higher Education
・Quality Assurance Agency (QAA)(英国高等教育質保証機構)
・Universities and Colleges Admissions Service (UCAS)
・Universities and Colleges Employers Association (UCEA)

提言の内容

調査グループが発表した提言の数は11であり、このうち今回の統合については提言1で指摘されている。

提言1(抜粋):ECU、HEA、LFHEのコア機能は、より迅速に応答できる、新たな単一の総体的な組織に統合されるべきである。この新たな組織は、平等性と多様性、学習と教授、リーダーシップとガバナンスに関連する高等教育機関の戦略の実現をサポートする。

各組織の概要について

高等教育平等推進組織(Equality Challenge Unit:ECU)
大学、カレッジ、その他の高等教育機関とともに、高等教育セクター内の平等を拡大し、高等教育機関のスタッフ及び学生の多様性を推進する。

高等教育アカデミー(Higher Education Academy:HEA)
高等教育の地位と質を向上することによって学習成果の改善を行う。

高等教育リーダーシップ財団(Leadership Foundation for Higher Education:LFHE)
現在及び未来の高等教育における指導者のマネジメント、ガバナンス、リーダーシップスキルを発展、改善させる。

統合前の問題点

3つの組織の間で業務の重複が起きている(例:3つの組織全てで平等性や多様性に係る業務を行っている)。組織間で連携は図られているものの、依然3つの組織の間で不必要な競争関係が生まれている。また統合の背景にはHEFCEがECUとHEAへの資金提供を停止した結果、両者が寄付金を主要な運営財源とすることを余儀なくされたことに対する不安感もある。

統合によって期待される効果

・高等教育機関の変化する需要に対応するよう3つの組織の間で重複している業務を統合させ、組織間の連携を強化することによって、高等教育機関が抱えている大きな課題に対応できるようサポートする。

・統合する3つの組織の財源から寄付金を減らして、より商業ベースのビジネスモデルを実現する。新しい組織の大半の活動の財源は、サービスによる収益によって賄われるべきである。

なお、今回の調査の対象となった高等教育の支援組織10機関のうち、現在寄付金を利用している機関は9機関であるが、調査グループはその数を6機関に減らすべきであるとしている。

※ 英国大学協会(UUK)はイギリス国内の大学の副学長(vice-chancellors)または理事長(principals(executive heads))で構成されており、政策立案者やその他の利害関係者と直接調整しながら、高等教育政策のアジェンダ形成をサポートしている。政府とも関係性が強い。

原典①:英国大学協会(UUK)(英語)
原典②:英国大学協会(UUK)(英語)

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