韓国教育部は2017年11月30日に大学財政支援事業の改編計画を発表した。これは文在寅政権の高等教育政策の一環として、既存の評価及び財政支援事業の全面的な改善を試みるものである。
刷新計画の背景
韓国での高等教育の財政支援は2017年において約1.5兆ウォン(約146億円)規模に達し、多様な目的の事業を助成しているが、助成の対象となる目標の設定から成果の管理まで政府主導で行われ、大学の自律性を阻害し過度な競争の状態を生み出しているとの指摘があった。
また、大学が目的細分化された事業に採択されることに注力した結果、全学的な発展戦略を推進することが阻害され、国際的競争力向上に弊害が生じていた※1。
さらに、国立‧私立間の財政支援事業採択における格差が継続的に拡大され※2、国立大学の公的役割の遂行に制約があった。
財政支援事業構造の簡素化
大学財政支援事業の構造を、「一般財政支援事業」、「特殊目的支援事業」に区分し、簡素化する。
一般財政支援事業として、大学の自律的な改革を支援し、基本能力向上のための「自律協約型大学支援」事業を導入する。2018年に実施する大学の基本能力診断評価の結果※3に合わせて、一定水準以上の「自律改善大学」と区分された大学を支援する。
特殊目的支援事業は、現在多数存在する事業を統廃合して簡素化し、「教育革新支援」、「研究支援(BK21プラス)」、「産学協力(LINCプラス)」の3事業とし、大学の競争力向上を支援していく。なお、特殊目的支援事業は、大学の基本能力診断評価で「能力強化大学」と区分された大学も参加可能とし、大学の戦略的な特性化を推進するとしている。
また、課題となっている国立大学固有の役割及び機能強化を支援するため、別途「国立大学の育成事業」を導入し、国立大学が地域発展に貢献する人材を育成し、世界的水準の競争力を高めるための集中支援を行うこととしている。
支援方式をボトムアップ式に転換
大学財政支援の方式を、目標設定から成果管理まで大学が自律的に設計できるよう、ボトムアップ式に転換する。各大学が自律的に設定する「発展計画」を各事業評価に共通的に活用して財政を支援する方式を導入し、事業間の整合性、重複防止の効果を高める。また、加算点のような政策誘導指標も極力廃止し、大学の自律性を尊重することとしている。
今後のスケジュール
2018年に大学の基本能力診断評価を実施し、その評価結果を踏まえ2019年から、新たに導入する一般財政支援事業、特殊目的支援事業による助成及び財政支援抑制措置を開始する。次サイクルの基本能力診断評価は2021年に実施予定で、それまで2018年に実施する評価結果に基づく財政支援が継続される予定である。
原典:韓国教育部 (韓国語)