財政難のプエルトリコ、公立大学が適格認定取消の危機

プエルトリコ大学の全校舎に理由提示命令

適格認定取消手前の極めて重い措置

2017年以降、大学の財政状況に重大な懸念か

アメリカの地域アクレディテーション機関の1つMSCHE (Middle States Commission on Higher Education)が2019年1月10日に出した声明によると、同機関が適格認定を与えているプエルトリコ大学(UPR: Universidad de Puerto Rico)のすべての校舎に対して、認定を継続するに値する理由を求める提示命令(show cause)を行った。この提示命令は、適格認定が取り消される一歩手前の極めて重い措置である。MSCHEは1月25日までに必要な書類の提出を求めており、3月に開く会合でUPRへの対応が決定される。

プエルトリコ大学は米国領プエルトリコにある公立の大学で、11校それぞれがMSCHEの適格認定を受けている。しかし、2017年5月に適格認定基準の遵守に関わる重大な懸念が生じたとして、MSCHEは各校に報告書の提出を要求した。さらに、同月には提出された報告書をふまえ、8校を監視下に置くこと(probation)を表明した。その後、さらなる報告書の提出やMSCHEによる査察を行ったが、UPR各校が期限までに2017年6月30日付の財務監査資料を提出しなかったため、今回の理由提示命令が下された。

この理由提示命令の中でMSCHEは、UPRが今後も教育を継続するだけの財務的裏付けを示す資料から、認定取り消しとなった場合の他機関による学生の受け入れも想定した教育計画案の提出までも求めている。UPRがこれらを提出した場合、MSCHEは3月に開く会合で次の4つの選択肢から各校の処遇を決定する。

  • 適格認定の継続(reaffirmation)
  • 8校の監視(probation)継続
  • 理由提示命令(show cause)の継続
  • 適格認定の取消し

MSCHEの適格認定では、基準を満たしていない大学に対しては3つの措置がある。最も軽度なものは警告(warning)で、次に監視(probation)、そして理由提示命令(show cause)が最も重大となる。これらの対応が与えられた大学では、報告書の提出やMSCHEによる査察受け入れなどが求められ、状況の改善やその可能性が審査される。最悪の場合、不認定または認定取消の措置につながる。

認定取消になった場合の影響は?

今回の理由提示命令でUPRが財政的窮地に立たされていることが浮き彫りになったが、大学を所有するプエルトリコ政府は2015年に債務不履行(デフォルト)を起こしている。また、2015年に当機構国際課が行った調査によると、2000年以降に適格認定の取り消しをされたアメリカの18大学のうち、15大学はその理由に財政上の懸念が含まれており(主に学士課程を提供する大学のみ、結果は非公表)、財務健全性が適格認定の維持に重要な要素であることが示唆されている。

アメリカでは2018年12月に適格認定を取り消された高等教育機関が教育拠点を大量閉鎖したり(本サイト2019年1月11日掲載記事)するなど、適格認定の有無は事業継続にとって重要なステータスである。一方で、公立大学では地方政府からの助成が減少し続け、代わりに学費が著しく高騰していることが問題となっている(本サイト2018年10月30日掲載記事)。UPRはプエルトリコの公立大学であり、財政的に健全な状態で教育を継続できるのか、今後のMSCHEの決定に注目が集まっている。

原典①:MSCHE (2019) Middle States Commission on Higher Education Puts 11 Institutions of the University of Puerto Rico on Show Cause(英語)
原典②:MSCHE (2019) Institution Directory(英語)
原典③:MSCHE (2018) Accreditaion Actions Polic(英語)

 

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