米国:全米で営利企業傘下の教育拠点が大量閉鎖。アクレディテーション機関も批判の対象に。

Virginia Collegeをはじめ、Brightwood College、Brightwood Career Instituteなどの名称で、全米75の教育拠点において主に職業訓練や準学士の取得を目指すプログラムを展開していた営利企業Education Corporation of America(ECA)が、ほぼ全ての拠点を突然閉鎖したとの報道が2018年12月6日にあった。それによると、ECAはVirginia Collegeの1万5千人を筆頭に全体で約2万人の学生を集めていた。また、同社傘下のオンライン大学New England College of Businessは運営を継続する。今回の閉鎖は、2016年9月に130拠点を閉鎖し、破綻したITT Technical Instituteに次ぐ規模となっている。

閉鎖された教育拠点での学習成果にかかわる成績証明書や修了証書といった証明書は、今後、電子証明書発行サービスを行うParchment社が交付する。また、学生が連邦政府による学生ローンの借り入れを行っている場合には、債務免除の申請受付、転学手続きの案内などを連邦教育省が対応している。

ECAの拠点閉鎖は、2018年12月4日にVirginia Collegeに対するアクレディテーションの停止が、同大学のアクレディテーションを行うACICS(Accrediting Council for Independent Colleges and Schools)から通知されたことが原因とみられる。ACICSは、Virginia Collegeの多くの領域(機関運営、コミュニケーション、カリキュラムの評価・見直し、学生満足度など)について、2018年5月以降、懸念を示していた。加えて、Virginia CollegeがAICISに対する会費支払いができないと判断されたこともアクレディテーション停止につながったとされる。なお、このACICSは、民主党オバマ政権下に米国政府によるアクレディテーション機関としての認定が停止されたものの、共和党政権下の2018年11月21日に認定を回復した機関であり、多くの営利大学のアクレディテーションを行っている。
※ACICSの認定回復については、当サイト先行記事「米国:オバマ政権下で認定終了となったアクレディテーション機関が再認定される(2018年12月14日掲載)」をご覧ください。

ECAによる教育拠点の閉鎖について、多くの学生や教職員からは驚きの声が上がる傍ら、一部専門家からは、ECAが展開する教育機関への入学者の激減、借入金の返済遅滞に加え、2018年9月には全体の3割にのぼる施設を2020年のはじめまでに閉鎖するとの発表を行うなど、財務に問題を抱えていたことは、誰の目にも明らかだったとする意見もある。このため、ACICSや教育省には事前の対策を打ち出せなかったのかとの声もあがっている。ACICSは、所属する学生について他機関への移籍を行う計画を策定するようVirginia Collegeに求めていたが、引き受け先となる機関との合意に至るものはなく、ACICSの要求には効果が伴わなかった。このほか、教育省においては拠点閉鎖に1~2か月間の時間をかけ、学生の移籍を行うことを目指して、ECAや他の教育機関と密に連絡を取るという取組みがあったとされるが、結果として、突然の閉鎖と混乱を未然に防ぐことはできなかった。また、ACICSがオバマ政権下で政府認定を停止されていることから、現トランプ政権下での認定回復がなければ、ECA傘下の教育拠点の急な閉鎖やこれに伴う混乱を回避することは可能だったはずであり、教育省が学生の権利保護よりもアクレディテーション機関の保護を優先した結果だとする批判の声も上がっている。

ちなみに、米国では、営利大学が低所得層やマイノリティ出身の学生を食い物にし、学習成果の証明として通用しないような学位のために多額の学生ローンを背負わせているとするドキュメンタリー映画が公開されている。学生に対して不誠実な姿勢があるとされる営利大学に対しても、一部社会から厳しい視線があるようである。

原典①:National Public Radio(英語)
原典②:The New York Times(英語)
原典③:Education Corporation of America(英語)
原典④:Accrediting Council for Independent Colleges and Schools(英語)
原典⑤:The Chronicle of Higher Education(英語)

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