進学や就職にあたって必ず提出が求められる書類として、高等学校の卒業証明書や大学の学位記などがあります。入学試験担当部署ではこのような書類と関わることが多いのですが、偽造を疑ったことはあるでしょうか。
実際、アジア諸国において、偽造書類が発覚した出願者の国籍は、多い順からベトナム(25.30%)、タイ(16.67%)、インドネシア(12.95%)、バングラデシュ(8.93%)となっているそうです。※1これらの国からは日本に進学・留学などを希望する学生も多く、日本の大学としても無関心ではいられません。
※1DATAFLOW社の2014年10月から2018年の統計
資格審査の現状と真正性の判断方法
学生移動(モビリティ)に関する当機構の調査報告書※2(参照:NIAD-QE国際連携ウェブサイト)によると、国内で証明書の真正性の判別のための取組を行っている大学・大学院は2割程度にとどまるようです。
※2 学生移動(モビリティ)に伴い国内外の高等教育機関に必要とされる情報提供事業の在り方に関する調査(平成28年3月刊行)
現状は資格の真正性の判別は証明書を受け取る入試担当者等に委ねられており、自身の経験を頼りに審査するという大学職員もいます。オランダで高等教育の国際化や資格審査などを行う機関であるNufficによれば、証明書の真正性に関する判断がもっとも困難であるといい、審査にあたっては顕微鏡を用いて確認するそうです。
証明書の真正性の判別にあたっては、まずその証明書を発行した教育機関が正規のものかどうかを確認することが有効です。政府による教育機関の認定状況を確認する方法の一つは、公的機関が出している高等教育機関のリストをチェックすることです。具体例として下記のウェブサイトがあげられます。
- 中国:CHSI(中国学歴・学籍認証センター日本代理機構)
- 韓国:KARIC(Korea Academic Recognition Information Center)
- ベトナム(VN-NARIC)VIET NAM NATIONAL ACADEMIC RECOGNITION INFORMATION CENTRE
- タイ:OHEC(Office of Higher Education Commission)
証明書を取り巻く新たな環境―デジタル化や人工知能(AI)
一方で、海外の大学では学位情報を電子データ(電子証書)で発行することで、証書の偽造を防ぎ、学位の信頼性を確保する努力をしています(本サイト2017/6/7投稿記事)。この場合、安全性が確保されたネット環境でデータを共有することによってデータの真正性を確保しているため、申請書類をすべて紙で提出させた場合、かえって学位情報をデータ化した意味がなくなってしまいます。
将来、人工知能が資格審査の分野に導入されれば、資格審査の負担が大幅に減るかもしれません。
参考①:UK NARIC※32018年次会合
参考②:評価事業部国際課の独自調査の結果
参考③:Nuffic(オランダ語)
※3英国のNIC(ナショナル・インフォーメーションセンター)で、資格承認や世界200か国以上の教員情報をまとめたデータベースを会員に提供している。
(文責:M.M)