独ハノーファー大学の内部質保証―学生支援部門の事例 その①:評価に関する活動

ハノーファー大学とは:
ハノーファー大学(Leibniz Universität Hannover)は、ドイツ北部のハノーファーに位置する、国内で最も歴史のある理工系の公立大学であり、ドイツのトップ9理工科大学で構成する大学連合にも属している。文科系も含め、9つの学部、88の学科、190以上のプログラムを提供している。学生数は28,742名、うち留学生は約3,500名、教員(教授)は335名(2017年)。

ハノーファー大学 大学運営・学生支援サービス部門(ZQS):
同大学は、大学本部に「ZQS(Zentrale Einrichtung für Qualitätsentwicklung in Studium und Lehre)」を設置しており、同大学の教育の質向上に中心的な役割を果たしている。ZQSは、学生のサイクル(進級、卒業率、退学率、進学、就職、就職先での成功等)に関する情報を得て、教員を支援するため、学生アンケートを通じて、データ収集などを行っている。学内では、“学長、教員、職員、学生、どこからも最も近い存在”と位置づけられており、以下の3つの柱に基づいて大学の運営・学生のサポートを行っている。

  1. キー・コンピテンシー
  2. Eラーニング・サービス
  3. 質保証

質保証に関する取組:
ZQSでは、主に教育や学位プログラムの質に関するデータの管理を通じて、コースや学部、運営委員会に対し、教育の質向上に向けた全学レベルの支援を行っている。具体的には、質に関するデータを収集・管理・提供することにより、アクレディテーション*の準備や支援を行う。
このほか、教授法に関する教員へのアドバイスや、学生と教員等との間で対立や問題があった時の仲裁、授業や教員に対する学生からの不満(クレーム)への対応を行うこともある。

ハノーファー大学は、2010年より5年をかけて教員を中心に内部質保証の仕組みを構築し、2017年-2018年にかけて外部評価であるシステム・アクレディテーションを受審した。内部質保証のプロセスは、①関連データの収集・管理、②外部のアクレディテーション機関へのデータの報告、③ 報告を元にした質改善のための議論、フィードバック、及び記録化、④ この記録に基づく内部レビューとなっており、①~④まで全体のプロセスが十全に機能しているかどうかを確認する。本プロセスにおいて、ZQSは、主に①のデータ収集と管理を担当しており、同大学の内部質保証活動の基盤を作る役割にある。

ZQSによるデータ収集・管理について:
ZQSは、学生・大学院生へのアンケートを実施しているが、授業・コース、学習サイクル、学習成果や学習目標、卒業後の進路などを含めた内容になっている。アンケートは、学位プログラムの質向上を目的としているが、円滑な授業進行の妨げの原因となっている要素をも発見する役割を果たしている。

アンケートのデータは、オンラインデータベースに格納され、各学科プログラムの教育の質を管理できるようになっている。質の管理にあたって鍵となる基準(要素)は、「退学率」、「卒業率」、「学生数」、「学生の学修の成功(アカデミック・サクセス)」である。他の欧州諸国と同様、ドイツでも学生の中退率の高さが近年問題となっており、「退学率」や「学生の学修の成功」がプログラムの質を測る重要な指標となっている。

ZQSは各プログラムを、「赤」「青」「黄」といった信号の色によりリスクの度合を示しているが、「赤」や「黄」の判断がなされた場合も、そのようになった理由のエビデンスをしっかり示している。「赤」だからといって当該プログラムの教育の質が非常に悪いという訳ではなく、「赤」は教育を良くしていくために、当該学科とZQSが話し合う必要があることを示すシグナルと位置づけている。実際に、この取組を手掛かりに、スキルを重視した教育の実現や、学習スペース・学習環境の改善が行われている。

ZQSによると、こうした各授業やコースの評価、及びアンケートで得られたデータを活用したプログラム内部のレビューは、決して7年ごとのシステム・アクレディテーションへの対応のために行うのではなく、大学の内部質保証機能を強化するとともに、大学が自らの力で教育の質を高めるために行うものである、としている。

*[(参考)ドイツにおけるアクレディテーション:プログラム・アクレディテーションとシステム・アクレディテーションについて]
ドイツの高等教育機関の評価制度には、プログラム・アクレディテーションと、2008年度に新たに導入されたシステム・アクレディテーションがある(「諸外国の高等教育分野における質保証システムの概要 ドイツ」 P.27を参照)。

・プログラム・アクレディテーションは、州立または州認可の高等教育機関におけるすべての学士および修士プログラムが、外部のアクレディテーション機関によるアクレディテーションの対象となる制度である。プログラムがアクレディテーションを受けた場合、一定期間有効の適格認定が与えられ、この期間、アクレディテーション協議会の質保証資格(Quality Seal)を保持する。適格認定の有効期間は、条件なし認定の場合は、最初のアクレディテーションは5年間、2回目以降のアクレディテーションでは7年間であるが、条件付き認定の場合は、7年以下となる。
・システム・アクレディテーションは、個々のプログラムの教育活動ではなく、大学の内部質保証体制をアクレディテーションの対象とする。大学内に実効的な内部統制・内部監査体制があり、学内ガバナンスが機能しているかどうかを確認する。このアクレディテーションは2段階構造となっており、①学内アクレディテーション(=大学が自身の学位プログラムをアクレディテーション)と②外部のアクレディテーション機関による大学のアクレディテーション(=システム・アクレディテーション審査)で構成されている。

出典:ZQS /2018年11月当機構国際課。によるハノーファー大学への訪問調査時の聞き取り及びZQS恵与資料

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