米国:オバマ政権下で認定終了となったアクレディテーション機関が再認定される

民主党オバマ政権下の2016年9月に、アクレディテーション機関としての認定終了を連邦政府教育省から通知されていたACICS(Accrediting Council for Independent Colleges and Schools)について、2018年11月21日、共和党トランプ政権のデボス教育長官はその認定を回復させるとの最終決定を下した。

※ACICSに対する連邦政府による認定終了については、本サイトの投稿記事(2016年7月14日付け「NACIQIが1機関のアクレディテーション機関認定はく奪を勧告」及び、2016年10月13日付け「連邦教育省がACICSのアクレディテーション機関認定の終了を決定」を併せてご参照ください。

ACICSに対する教育省の認定終了をめぐっては、ACICSが米国行政手続法(the Administrative Procedure Act)に基づいて教育省を相手にした民事訴訟をおこしていた。そして、2018年3月コロラド連邦裁判所のリッギー・B・ウォルトン判事は、教育省は認定手続においてACICSからの一部提出物に対する考慮を怠るなど同法に違反する行為があったとして、これらの資料を踏まえてアクレディテーション機関としての認定の可否を判断するよう、デボス長官に事案を差し戻す判決を下した。この認定過程に疑義があとする司法判断を踏まえて、デボス長官は2018年4月、2016年のACICSに対する認定について、最終決定とはみなされないとして自身の判断を明らかにするまでの間は、当初認定が終了となった同年12月に遡ってACICSに対する認定を一時的に回復させるとの決定を行った。また、この件について、大学の質に関する国家諮問委員会(NACIQI: National Advisory Committee on Institutional Quality and Integrity)による、改めての審議を経ないことも決定した。その後9月には同省ジョーンズ第一教育次席次官補が、ACICSは認定要件21項目のうち19の項目について認定基準を満たしているため、残り2項目の基準を12か月以内に満たすことを求めるとの条件付きでアクレディテーション機関として教育省認定を行うようデボス長官に上申していた。

ACICSに対する教育省からのアクレディテーション機関としての認定については、政権交代と連邦地裁での裁判を経て、今回、認定で幕引きが図られた格好となった。その一方で、旧オバマ政権下の教育省で特別顧問を務めていたアーロン・アメント氏が、このデボス長官の判断は不当だとして、訴訟に踏み切っていることもワシントン・ポストが報じている。また、2018年11月6日に行われた中間選挙で、上院では共和党が過半数を保持する一方、下院では民主党が共和党に替わって過半数となったことを受けて、2019年1月には下院の教育労働委員会において民主党スコット下院議員が委員長になる旨の見通しが、米国高等教育アクレディテーション協議会(CHEA:Council for Higher Education Accreditation)※1から示されており、政治的背景に変化が生じつつある。今回の認定決定で真の決着となるか動向が注視される。

※1米国高等教育アクレディテーション協議会(CHEA)・・・高等教育に関する全米規模の民間非営利団体。1996年設立。米国内の機関別アクレディテーションと専門アクレディテーションの連絡・調整を行うことを目的としている。米国のアクレディテーション機関は、定期的に認定(recognition)と呼ばれる外部審査を受けることになっており、この認定事業を連邦政府とCHEAがそれぞれ実施している。

原典①:ACICSウェブサイト(英語)
原典②:コロンビア連邦地方裁判所判決文(英語)
原典③:教育省長官命令書(英語)
原典④:ワシントン・ポストウェブサイト(英語)
原典⑤:CHEAウェブサイト(英語)

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