米国:ジョンズ・ホプキンス大学に対し、学生の経済的な不平等を是正する約2,000億円(18億ドル)の巨額寄付

メディア企業ブルームバーグ社の創設者でニューヨーク市長を務めたマイケル・ブルームバーグ氏が、18億ドル(約2,000億円)の巨額寄付を母校のジョンズ・ホプキンス大学へ行うと表明したと、2018年11月、ニューヨーク・タイムズが報じた。

巨額寄付の理由についてブルームバーグ氏は、進学希望者の入学が出身世帯の年収額によって阻害されてはならないとの思いからだとしている。アメリカでは、大学の入学審査において学費の支払い能力が考慮されるため、成績優秀者であっても低・中間所得層の家庭出身の志願者より高所得層出身の志願者が優先されることが常態化している。更に、米国のトップ大学では、所得規模が上位1%の家庭出身の学生数が所得規模で下位60%の学生数を上回っている。また、低・中間所得層の家庭出身の成績優秀な学生のうちの半数は、高額な学費を負担することが困難と考えたり、高所得層出身者が優先される状況から合格できないと考えたりするなどの理由からトップ大学を志望しないとしている。そのため、大学ひいては国家にとって有望な人材や多様な価値観による有益性が失われるとしているとの見解を示している。

ブルームバーグ氏は、自身が経済的に恵まれない家庭環境ではあったものの、ジョンズ・ホプキンス大学を卒業したことが、出身階級に関係なく自らの努力で成功をつかむことができるアメリカン・ドリームの実現につながったとして、卒業後に同大学への寄付を5ドルから始め、これまで教育研究などの経済的支援のため15億ドルの寄付を行ったとしている。今回の18億ドルの寄付は、低・中間所得層の学生に対する経済的支援に使用されるため、今後同大学は、家庭の経済状況ではなく、専ら成績評価によって入学の合否審査が恒久的に行われるようになると同人は説明しており、今後は、ジョンズ・ホプキンス大学における学生への経済的支援の拡充や学生ローンが給付型奨学金に変わるなどの転換が図られ、学生の社会経済的多様性が促進されるとしている。

ちなみに、アメリカでは大学の学費が近年高騰しており、1998年の水準から私立大学では約2.7倍、公立大学では3倍以上に上昇している。
※これについては、当サイトの先行記事「米国:高騰を続ける学費-大学ランキング入選300校の平均で明らかに-」(2018年10月30日掲載)を併せてご覧ください。

アメリカでは、2018年11月の中間選挙の結果を受けて、上院は共和党、下院は民主党のねじれ国会となった。2019年1月には、下院の教育労働委員会の委員長が、大学の学費高騰の抑制にも取り組んできた民主党のBobby Scott下院議員になることが見込まれている。2019年以降、学費抑制に向けて社会からの経済的負担を増加させる動きが生じるのか、そして、それに伴う高等教育機関の社会に対するより重い説明責任とアクレディテーション機関などへの影響が注目される。

日本においては、2017年に総合モーターメーカーの日本電産会長兼社長の永守重信氏が京都学園大学の理事長就任にあたり、100億円を同大学に寄付するとの報道があった。更に2018年6月には、永守氏が300億円を用意する意思があるとの報道もなされた。これは、THE(Times Higher Education)の2018年の世界大学ランキングで、東京大学(46位)と京都大学(76位)以降で日本の大学の空白地帯となっている199位以内に同大学を10年以内にランクインさせるためとのこと。また、東京大学基金室によれば、ハーバード大学、イェール大学、プリンストン大学の基金規模は2~3.8兆円を誇る。ケンブリッジ大学やオックスフォード大学も、それぞれ8,820億円と7,254億円であり、日本では慶應義塾大学481億円、早稲田大学274億円、東京大学100億円となっており、日本の大学と英米の有力大学では基金規模に著しい差がみられる。

原典①:ニューヨーク・タイムズ記事(英語)
原典②:京都学園大学ウェブサイト
原典③:NIKKEI STYLE記事
原典④:東京大学基金室ウェブサイト

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