中国が広東・香港・マカオをつなぐ大湾岸圏の発展計画を発表

中国国務院は、香港及びマカオの2つの特別行政区と広東省の9つの都市(珠江デルタ9都市)*1とを結びつける「広東・香港・マカオ大湾岸圏発展計画」*2を発表した。その総面積は、約5万6,000平方キロメートルに及び、11都市の人口を合わせると、約7,000万人(2017年末現在)にものぼる、中国で最も開放された経済的活力に満ちたエリアとされる。「1国2制度」のもと高度な自治が認められてきた香港及びマカオと広東の経済的統合を実現し、技術革新、金融、貿易などそれぞれの都市が持つ強みをいかし、世界的な競争力を備えた一大経済圏を構築していこうとするものである。これは習近平政権が推し進める「一帯一路構想」に香港とマカオも参画させることで、構想実現の後押しの役割が期待されている。

*1広州市、深圳市、珠海市、仏山市、恵州市、東莞市、中山市、江門市、肇慶市。

*2計画には2022年までの短期計画と2035年までの長期展望が示されている。

教育面では、広東・香港・マカオの3地域の大学による優れた共同教育プログラムの実施、共同研究センターなどの構築、単位の相互認定、交換留学の拡大、科学研究成果の共有・実用化に向けた交流・協力の推進を目指す。 世界の一流大学や特色のある大学を誘致し、「大湾岸圏教育モデル地区」を構築する。 また、職業教育セクターにおいても、学生募集、就職、研修、教員・学生の交流、技能コンテストなどの面で協力を進め、創造的な共同教育による、各種の職業訓練・教育地区を構築する。

人材確保の面では、 香港及びマカオでの国際的な高度技能人材の確保に成功した経験や手法を珠江デルタ9都市に活かし、働きやすく暮らしやすい生活環境を整えるなどして、「広東・香港・マカオ人材協力モデル地区」を建設する。 技術者等の移民政策の面でも外国籍の高度人材の認定基準を整備し、永住権取得、労働ビザの発給要件の緩和などで、人材のモビリティを促進していく。 例えば、外国籍のイノベーション分野で貢献する人材が科学技術関連の企業を創業する際に自国民と同じ待遇を供与する試みも実施するなど、当該地区を国家レベルの人材資源サービス産業地区とすることを目指す。

世界大学ランキングで上位を占める名門大学を有し、高度な科学技術力を誇り、基礎研究、人材育成、金融、知識集約型サービス等に強みを持つ香港、マカオ、そして巨大な生産基盤区域を有し、イノベーションや研究開発に強みを持つ珠江デルタ9都市がタッグを組み互いに補完しあうことで、強力な国際的イノベーションハブが実現することが見込まれる。

一方、「1国2制度」の円滑な運営においては、異なる研究文化や法制度、言論の自由、学問の自由、大学の自治などの面から、懸念を指摘する専門家もいるとの報道もされている。

原典:教育部

   国務院

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