高等教育の質保証とエンプロイアビリティ:機能的な内部質保証を実施するための7つの結論

2018年にUNESCOは報告書「Quality and Employability in Higher Education: Viewing Internal Quality Assurance as a Lever for Change」を発表した。当報告書は2016年6月にUNESCO、厦門大学、中国教育部高等教育教学評価センター(HEEC)が共同で行ったフォーラム「Higher Education Quality and Employability: How Internal Quality Assurance Can Contribute?」の基調講演をもとにまとめられたものである。
講演では内部質保証を軸として、エンプロイアビリティ(雇用され得る能力)や教育と学習における質の改善、高等教育機関の戦略的運営など、様々な側面に言及があった。講演の主な内容は下記のとおりである。

  • 先進国では、エンプロイアビリティは教育の質における重要な要素として理解されている。エンプロイアビリティという言葉が指す内容は時代と共に変化するものであって、その変化は知識社会の発展に伴う変化と捉えることができる。エンプロイアビリティの内容が変化すれば、高等教育そのものや高等教育機関とその他の機関・組織との関係にも影響を及ぼす。
  • 高等教育機関に変化を促すような状態とは、内部質保証のそれぞれのプロセスが緊密になっている状態である。具体的には、学部(faculty)は授業において、学生を指導し、学生の学術成果の質を評価し、公式・非公式に学生からのフィードバックを受けていることである。
  • 多くの場合、外部質保証で設定されている要件が内部質保証を形作る原動力になっている。一方、内部質保証は高等教育機関自体で何ができて、どこに改善できる余地があるかを自らで特定する方法であり、高等教育機関にとっての学習のプロセスとなっている。

※David D. Dill氏、John Brennan氏、Maria José Lemaitre氏、Lee Harvey氏の4人からの講演。

高等教育とエンプロイアビリティ:雇用主の理想人物は成績優秀で転用可能なスキルを身に付けた人?

近年、高等教育において雇用は大きなテーマの一つとなっており、雇用につながる学習成果についての調査の実施(本サイト2016/3/17投稿記事)、評価活動への雇用者参画などの事例がある(本サイト2018/3/27投稿記事)。下記では当報告書のうち、エンプロイアビリティとの関係から見た内部質保証について言及する。
当報告書では、高等教育と雇用の関係について、高等教育は単に「職を得る」だけにとどまらず、その職務を全うしたり、転職したり、人生の様々な段階において職種を変えることにも影響するとしている。高等教育は職場で役立つ技能や能力を提供するのみならず、様々な雇用現場で活かすことができる広大な知識の基礎も提供し、人脈や情熱、自信をもたらす。そのため、学生の学習分野やバックグラウンドに関わらず、高等教育とエンプロイアビリティの関係は全ての学生に関わるものであるとしている。

英国の大学とカレッジのエンプロイアビリティについての取組の見直しに関して、英国高等教育質保証機関(QAA)がWarwick University Institute of Employment Researchに調査を委託した。調査で明らかになったことは下記のとおりである。

※The Quality Assurance Agency for Higher Education(UK), Employability Initiative in Universities and Colleges, 2016

  • 英国の大学はエンプロイアビリティに関する革新的な取組を学生に提供している。
  • エンプロイアビリティの取組をカリキュラムに埋め込む。学科レベルで雇用について学生を支援した時にこの取組が最も効率的となる。
  • 約50%の学生が所属機関のキャリア支援サービスを活用している。
  • 雇用主は学部卒業レベルの理想的な人材として、優秀な学業成績を収め、かつ修得した技能を転用可能な一般的な技能として示すことのできる人物と示した。

エンプロイアビリティを内部質保証に持ち込むことの意義と難しさ

当報告書では、雇用に関する視点を高等教育に採り入れる際、その調査方法として、卒業して時間の経過した卒業生の視点を集めることよりも、卒業したばかりの学生の視点を集めることが簡単であるとしている。しかし世界・経済が急速に変化する中、新たな環境や困難に対応するといった個人の適応能力は重要であるとし、卒業して時間の経過した卒業生に対し、実際に職場で直面した環境の変化に対応できているか否かを調査することが望ましいとしている。
一方、雇用の側面を内部質保証に採り入れる際の現実的な課題として、例えば卒業生へのアンケートの回答率が低く、これに関する研究結果の信用性が高くない懸念が挙げられている。加えて、それらのアンケートが短期的に行われる傾向にあり、卒業生の長期的なキャリアの発展というよりも、労働市場への参入に焦点が当てられた調査になっていることが言われている。
また、高等教育機関で学ぶ社会人が増加していることを認識するよう、報告書は述べている。社会人学生は就業経験に関する多くの情報を大学にもたらしており、学術プログラムの設計において、大学は学生がもたらす経験を活用できているか疑問を呈しているという。

機能的な内部質保証を実施するための7つの結論

当報告書では、国レベル・機関レベルの高等教育の政策立案者は、質保証において好ましい結果を実現するための制度作りにおいて重要な役割を果たすことができるとし、政策立案者に向け、下記の7つの結論を述べている。

  • 高等教育機関は、内部質保証により、外部の環境とつながりを持ち、雇用主や卒業生から現場で必要とされる最新の技能について常に情報を得ることが可能となる。
  • 内部質保証には、多様性やイノベーション、実験を許容するための柔軟性が求められる。
  • 外部質保証は、高等教育機関における自己規制のための内部質保証の発展を支えるべきである。
  • 内部質保証の中心に高等教育専門家による質に関する議論を据えるべきである。
  • 外部のステークホルダーは質の議論に関与すべきである。
  • 内部質保証は高等教育機関の戦略の一部であり、かつ高等教育機関の人的・財政的資源の配分に結びつけられるべきである。
  • 内部質保証は教育と学習に変化をもたらすためのアプローチと位置付けるべきである。

原典: UNESCO(英語)

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