学歴よりも職務経験を重視―アイルランドの雇用主にきく

2019年5月、アイルランド質保証資格機構(QQI)は、雇用主およそ100人を対象に採用現場※1における学位等の教育課程修了資格の重要性について調査した結果をまとめた報告書「Making Sense of Qualifications」を発表した。
それによると、アイルランドの雇用主は採用時に資格保持をある程度重要と考えるものの、職種を問わず関連する職務経験やビジネス感覚、個人の強みを資格よりも重視することがわかった。また雇用主は応募者が保持する資格のうち外国資格の評価が最も難しいと考えていた。

回答者の属性(企業)

  • 企業の属性 :公的機関(34%)、民間企業(76%)
  • 企業の所有者:アイルランド国内(54%)、外国/多国籍(36%)
  • 企業規模  :50人以下(41%)、51~250人(21%)、251人以上(37%)

報告書の概要(抜粋)

  • 応募者が保持する資格を評価する際に雇用主が最も困難と感じたことは、外国の資格の評価(79%)で、資格の確認(verifying)(40%)、専門的な資格の評価(29%)、企業などが発行した証書の評価(28%)が続く。また、適切な資格を有する人材を見つけることに時々または日常的に苦労していると回答した雇用主は87%に上る。この点に関連し、スキルと雇用機会のマッチングを促進し、良好な需給関係を保つ必要性が国の雇用戦略でも指摘されている。
  • 採用時に重視する観点を3つの職種別(実務的、監督的、専門的/経営的な職種)でみると、専門的/経営的職種で資格保持の重要度がある程度高いものの、関連する職務経験やビジネス感覚、個人の強みがいずれの職種においても資格よりも重要度が高い。
  • 雇用主の74%は、デジタルバッジ※2は採用にあたり重要ではないと回答した。一方、デジタルバッジそのものへの関心は高い。実際、雇用主に資格に関し、知りたいことを尋ねたところ、選択肢の中でデジタルバッジの回答が最も多く、55%であった。なお、回答は欧州資格枠組(EQF)※3(53%)や、アイルランドのNIC(National Information Center)によって提供される無料の外国資格承認に関する情報(50%)が続いた。
  • アイルランドの10段階の国家資格枠組(NQF)レベルのうち、どのレベルの資格保持者の採用を希望しているか尋ねたところ、優等学士※4(73%)とレベル8以上の専門資格(72%)が最上位で、以下、通常の学士(NQFレベル7)(66%)、修士(レベル9)(58%)と続く。
  • 資格に関する望ましい情報発信の方法について、ウェブサイト(59%)、次いでメール(53%)であった。一方、紙のリーフレットを支持した雇用主は26%であった。

※1ここでの採用とは新卒一括採用ではなく、職種ごとに個別に募集・採用することである。

※2学習者が取得した特定の能力やスキルを示す手段として、オンライン上で表示されるピクトグラムやロゴのことをデジタルバッジという。マイクロクレデンシャルやナノディグリー等とも呼ばれることがある。バッジの収集によって学位に結びつく例(本サイト2015/9/3投稿記事)や、正式な教育・訓練制度に位置づけられるニュージーランドの例(本サイト2018/9/12投稿記事)がある。

※3欧州資格枠組(EQF)(参照:NIAD-QE国際連携ウェブサイト)
学位・資格について、国単位の仕組みであるNQF同士の比較を可能にするため、資格・学位を欧州共通の視点で理解するための仕組み。資格を8段階(レベル1~レベル8)に分類し、当該資格取得に必要とされる知識(knowledge)、技能(skills)、能力(competence)に関する学習成果を示す。

※4優等学士と通常学士
主に英国式の高等教育制度を採用する国の高等教育機関では優等学士と通常学士に区別され、アイルランドではNQFで異なるレベルに位置づけられている。通常学士は一般的に3年間であるのに対し、優等学士は3~4年間の学習期間を要する。アイルランドでは原則として、通常学士を保持しているだけでは修士課程に進学することはできず、通常学士の学位取得後に1年間の学習を経て優等学士を取得することができる。


原典: QQI①(英語)
原典: QQI②(英語)
原典: QQI③(英語)

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