中国:コロナ対策のため全教育機関が休校 ー 教育部の指示により授業はオンラインで実施

 2020年1月27日、中国教育部は新型コロナウィルスの感染拡大を受け、全国の幼稚園から大学までの全ての学校について、予定されていた春学期の開始を延期する通知を発表した。多くの高等教育機関では、2020年2月17日から新学期が開始する予定だった。

高等教育機関の状況

  教育部は 1月29日、この緊急事態への対応措置として、各高等教育機関は地方政府や各高等教育機関が作成している既存の優良オンライン教育コンテンツや MOOCs を十分に利用し、原則として2月17日から、オンラインによる授業を開始すると発表した。

 また2月4日には、教育部は高等教育機関への支援策として、全国の高等教育機関に向けた官民合わせて22のオンライン教育プラットフォームによる様々な情報システムを無料で提供することを発表した。これにより、1,291の「国家優良オンラインコース」と401の「国家バーチャル実験コース」を含む24,000以上のオンラインコースが無料公開され、高等教育機関が自由に選択して利用できるようになった。これらのコースは学士課程の12の学問分野と専科課程の18の専攻分野全てをカバーするものである。

 各高等教育機関は、それぞれの実情とネット環境に適したオンライン教育プラットフォームを選択する。教員は MOOCs やSPOC (Small Private Online Courses)、校内のオンラインコースなどの選択肢から自らに適したツールを選び、オンラインによる講義、討論、質疑応答、指導、課題の提供、テストなどの学習測定を実施するとしている。 

 高等教育機関のニーズに速やかに対応できるよう、 教育部は地方政府に対しても、 各オンライン教育機関に働きかけて、様々な教育ソリューションの開発を引き続き行い、高等教育機関がいつでも必要な情報提供と技術支援を受けられる態勢を整えるよう求めた。

 教育現場はわずか数週間の間にオンラインよる新学期開始にこぎつけるため、膨大な準備作業に追われた。

【対応例】:北京大学の場合

  • 2月6日    オンラインによる教員への「オンライン授業」研修を開始
  • 2月14日  各教員が2週間分の授業資料のアップロード作業完成
  • 2月17日  オンライン授業の開始。学生は「北京大学教学ネット(原語:教学网)」などのプラットフォーム上に教員によってアップロードされた動画やテキストの教材を視聴閲覧する形のほか、ライブ配信や双方向のオンライン学習を開始。

 北京大学では、 教員の教育能力の向上や情報技術の提供と支援を行う部署である「北京大学教師教学発展センター(Center for Excellent Teaching and Learning)」が、オンライン授業の質の担保のため、収録施設の提供や全面的な技術支援を行い、正常な教育活動開始後も、スムーズに通常授業が行えるよう配慮している。

当該センターのウェブサイトには、今回の緊急事態対応の専用ウェブページが設けられ、教員と学生に詳細な情報提供を行っている。

 北京大学は、①既存のオンライン教育のためのプラットフォームである「北京大学教学ネット(原語:教学网)」、②ClassInのアプリを使用し双方向のオンライン授業を行う「オンライン教室(原語:在线课堂)」③「ライブ配信教室(原語:直播课堂)」④Canvas学習管理システムを使用した「北大Canvas」⑤MOOCs(原語:(慕课)の5つの方式で教育を行う。

その他の教育機関の状況

  一方、中国のすべての教育機関が北京大学のように恵まれたリソースを備えているわけではない。高等学校以下の生徒数は極めて多数にのぼり、また地域間でオンライン環境に大きな格差があるなど、様々な問題を抱えている。実際に、多くの生徒がネットワークに集中してアクセスすることで、画像や音声が不安定になるなどの問題が多発しているほか、不慣れなオンライン授業に戸惑う教員も多く、自宅待機している児童の家庭学習を支える親の負担も大きい。

 教育部は、地方政府の関連部門やインターネット運営企業に対し、ネット環境の向上を求めたり、生徒には時間差によるネットワークへのアクセスを促しているほか、ネット環境の整わない地域に配慮して、テレビによる授業放送も行っている。

 また、教育部は現場教員の負担軽減と教育の質の担保を目指して、2月17日から小学校から高校までを対象とした教育資源のオンライン共有プラットフォームを開設したほか、 地方政府に対しては、優秀な教員を選抜して優良授業の動画を作成し、地域の学校に共有することを求めている。

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