香港科技大学への医学部設置が承認―香港で3つ目の医学部が誕生へ

2025年11月18日、香港政府は、香港科技大学の医学部設置案を承認したと発表した。香港における医学部の設置は、香港大学、香港中文大学※1に次いで3つ目となる。今後、香港科技大学は、カリキュラム、資金調達・管理、教職員人事、キャンパス開発、教育用医療施設の準備等について、政府と覚書を締結して準備を進める。また、カリキュラムは、第一期学生が入学する2028年度までに、香港医務委員会(Medical Council of Hong Kong)※2からの認定(accreditation)を得なければならない。

※1 香港大学医学部は1912年、香港中文大学医学部は1981年に設立された。(The University of Hong KongFaculty of Medicine, The Chinese University of Hong Kong
※2 香港医務委員会は、Medical Registration Ordinance, Cap. 161, Laws of Hong Kongに基づき設立され、衛生署署長、医院管理局(Hospital Authority)の最高責任者、香港大学、香港中文大学、香港医学専科学院(専門医向け研修等を実施する機関)からそれぞれ推薦された医師等で構成される。香港における医師の登録及び懲戒・規制(disciplinary regulation)等を担当している。

香港科技大学への医学部設置の経緯、準備状況、政府高官のコメントは次のとおりである。

<医学部新設決定までの経緯>

  • 2024年9月、香港特別行政区の李家超(Mr. John Lee)行政長官が施政報告(施政方針演説)の中で、香港に医学部を新設し、北部都会区※3に新設医学部及び教育用医療施設の用地を確保すると表明。

  • 同年10月、医学教育と大学経営の経験が豊富な国内外の専門家、香港医務委員会、香港医学専科学院の代表及び政府関係者等で構成される作業チームを設立。

  • 同年12月、香港政府大学教育資助委員会(University Grants Committee:UGC)を通じて公的資金が配分されている8機関※4に対し、医学部設置案を募集。

  • 2025年3月、香港浸会大学、香港理工大学、香港科技大学の3校※5が設置案を提出。

  • 同年5~8月、作業チームが各大学との会議を開催し、カリキュラムの構成、財政の持続可能性などの観点から審査した結果、香港科技大学への設置案を採択。

※3 北部都会区(Northern Metropolis)とは、香港政府が計画中の都市開発地区。中国本土の深圳に隣接する地区に、産業・居住・教育施設等を備えた都市を建設する計画である。
※4 香港城市大学香港浸会大学嶺南大学香港中文大学香港教育大学香港理工大学香港科技大学香港大学
※5 香港浸会大学は中医学と西洋医学の融合、香港理工大学は専門領域をまたぐ人工知能の応用、香港科技大学は臨床能力と研究の素養を合わせ持つ医学研究人材の育成に焦点を当てた医学部設置案を提出した。

<香港科技大学における準備状況>

  • 校舎:香港科技大学清水湾キャンパスに自己資金20億香港ドル(約404.6億円 1香港ドル≒20.23円)を投じて医学部の校舎を建設する。北部都会区の建設が完了した際に医学部を移転する。

  • 学生募集:最初の段階として、学士保持者を対象とした第二学位4年制医学課程(Graduate Entry Track:GET、囲み参照)を開設する。2027年に学生の募集を開始し、2028年度※6に第1期生50名を香港内外から受け入れる。香港内外のトップ校で科学と医療に関連する学士の学位を取得した者からの申請を想定している。

  • カリキュラム:香港の医療現場の需要に対応すると同時に、世界の優れたカリキュラム設計を参考に、医学研究の要素を含めたカリキュラム設計とし、専門的素養と臨床技能を兼ね備えた香港医務委員会の基準に適合した人材育成を行う。

  • 教員:国際色豊かな構成にすることを予定しており、すでに欧米、シンガポール、オーストラリアの経験豊かな教員36名が参加を希望している。

※6 香港の学年暦は秋学期(9月~12月)と春学期(1月~5月)で構成されている。

<医学部新設に対する香港政府高官のコメント>

  • 李家超行政長官:香港は医療の研修・研究・イノベーションの国際的なハブとなることを目指している。香港における3つ目の医学部の設置は、香港の医療サービスにとって重要であるとともに、既存の2つの医学部と緊密に連携することで香港の研究と医学の水準・実力を向上させる。そして、国家が目指す教育強国の構築※7という大目標に応える。

  • 蘆寵茂(Prof. Lo Chung-mau)医務衛生局局長:香港は医学部を新設することで優秀な医師を育成し、香港における良質な医療サービスを提供することができる。同時に、医学研究と教育水準を向上させ、革新的な医学研究及び臨床医学人材育成の重要拠点となる。

  • 蔡若連(Dr. Choi Yuk-lin)教育局局長:香港は世界大学ランキング100位以内に入る大学を5校擁している※8。医学部の新設により、香港は高等教育の国際的なハブとしての機能をより一層高め、国際高度人材の集積地となる。また、新医学部は、中国共産党と中央人民政府が今後10年の国の教育政策を示した「教育強国建設計画綱要(2024–2035年)」(本サイト2025/3/24投稿記事参照)に迅速に対応して、世界の一流大学・一流学科※9へと発展するとともに、大学は北部都会区の産業とともに発展して国家のため、香港のために人材育成を行うことができると確信する。

※7 「教育強国の構築」とは、中国共産党と中央人民政府が掲げる政策。初等教育から高等教育、生涯教育までの各段階の教育の質の向上、国家と社会のニーズに合った人材育成等を目指す。2027年までに教育強国の構築へ向けた成果を上げ、2035年までに教育強国を完成させるとしている本サイト2025/3/24投稿記事参照)。
※8 記事原典にはここでの世界大学ランキングがどのランキングを指すかは明示されていない。なお、 QS World University Rankings 2026(2025年6月発表)では、香港大学(11位)、香港中文大学(32位)、香港科技大学(44位)、香港理工大学(54位)、香港城市大学(63位)の5校が100位以内に入っている。Times Higher EducationのWorld University Rankings 2026においてもこれら5大学が100位以内にランクインしている。
※9 中国では、世界トップレベルの大学及び学科の整備を目指し、2016年から「世界一流大学・一流学科(“双一流”)建設」と称する政策を推進し、国が基準を設けて一流大学と一流学科を選出している(本サイト2022/4/19投稿記事参照)。「教育強国建設計画綱要(2024–2035年)」の(十三)においてもその政策を進めることが示されている。

原典①:香港特別行政区政府(英語)
原典②:香港特別行政区政府(中国語)
原典③:香港科技大学(英語)

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