ボローニャ・プロセスに関する主な合意文書・宣言

ボローニャ宣言 

正式名称 Bologna Declaration
策定主体 欧州高等教育大臣会合
策定(実施)年 1999年
概略 1999年6月19日にイタリアのボローニャで、欧州29か国の高等教育担当大臣が調印した宣言。2010年までの欧州高等教育圏(European Higher Education Area: EHEA)の確立に向けて、主に以下の課題の達成に努力することで各国の大臣が署名した。なお、「ボローニャ・プロセス」とは、本宣言から始まった欧州における高等教育システムの改革に関する、一連の流れを指す。 <ボローニャ宣言の要旨> 

  • 理解しやすく比較可能な学位制度を採用すること。また、ディプロマ・サプリメント(学位・資格の学修内容を示した様式)を導入すること。
  • 学士課程と大学院課程の2段階の学修構造をすべての国に導入すること。学士は修業年限3年以上の課程を前提とし、欧州の労働市場で適切なレベルの資格とし、大学院課程の学位は、欧州で共通して修士号・博士号とすること。
  • 学生・教職員の自由な移動を阻む障害を取り除き、流動化(モビリティ)を促進させること。
  • 欧州レベルの単位互換制度を確立させること。
  • 質保証における比較可能な基準と方法を開発し、欧州レベルの協力を進めること。
  • 高等教育(カリキュラム開発、機関間協力、学生・教職員流動化促進のための方策、学習、教育訓練、研究の統合プログラム)における欧州的特徴を確立させ、それを促進させること。

本宣言で提唱されたプロセス達成に向けて、2001年から2年ごとに大臣会合を開催。改革内容の進捗プロセスの把握や活動方針の追加が行われ、会議ごとに共同声明(コミュニケ)が発表されている。2009年からは大臣会合と合わせて、ボローニャ参加国と日本を含むその他の国との高等教育における国際連携に関する議論とパートナーシップ構築の場となることを目指した、ボローニャ政策フォーラム(Bologna Policy Forum)が開催されている。 ※なお、ボローニャ・プロセスの関連文書(これまでに開催された会合の声明等)は、以下のリンク先(EHEAウェブサイト)で閲覧することができます。

リンク https://pjp-eu.coe.int/bih-higher-education/bologna-process.html 

プラハ・コミュニケ「欧州高等教育圏の確立にむけて」

正式名称 Towards the European Higher Education Area – Prague Communique
策定主体 欧州高等教育大臣会合(プラハ会合)
策定(実施)年 2001年
概略 2001年、プラハに欧州の高等教育大臣が集まり、1999年のボローニャ宣言以降の進捗を確認し、次の会合までの2年間の方針や優先事項について協議を行い、採択された内容がプラハ・コミュニケとして発表された。本会合において、キプロス、クロアチア、トルコ、リヒテンシュタインの4か国が新たにボローニャ・プロセスに署名し、参加国は33に拡大した。 プラハ・コミュニケでは、ボローニャ・プロセスに以下の項目が新規に追加された。 

  • 欧州の経済的競争力を高めるために、生涯学習(lifelong learning)を高等教育の重要な要素に位置づける。
  • 高等教育機関と学生をボローニャ・プロセスに積極的に参加させる。学生については、ボローニャ・プロセスの意思決定や大学での教育内容にも積極的に参加させる。EUA(欧州大学協会)、EURASHE(欧州高等教育機関協会)、ESIB(欧州全国大学連盟)(1)、Council of Europe(欧州評議会)の4組織は、ボローニャ・フォローアップ・グループ(2)の諮問メンバーとして参加する。
  • 欧州内外の学生に、欧州高等教育圏の魅力をアピールしていく。
  • ボローニャ・プロセスが社会に与える影響に注目していく。

質保証については、質保証ネットワーク間の相互協力と、教育の質の確保と学位・資格の通用性促進に質保証が果たす意義が謳われ、質保証に関する欧州共通の参照枠組みの構築と優良事例の共有にむけて、高等教育機関、各国質保証機関、ENQA(欧州高等教育質保証協会)等が協力していくことが提言された。 (1)ESIBは、現在のEuropean Students Union: ESU(欧州学生ユニオン)の前身 (2)ボローニャ・フォローアップ・グループは、ボローニャ・プロセス参加国の代表及び欧州委員会で構成。EU議長がチェアを務める。ボローニャ・プロセスにおける質保証、学位・資格の認証、単位互換、ジョイント・ディグリーの策定、流動性(モビリティ)、ボローニャ・プロセスの拡大、生涯学習、学生参加等のテーマに関するセミナーの企画・立案を主な任務とする。

リンク https://pjp-eu.coe.int/bih-higher-education/bologna-process.html 

ベルリン・コミュニケ「欧州高等教育圏の実現を目指して」

正式名称 Realising the European Higher Education Area – Berlin Communique
策定主体 欧州高等教育大臣会合(ベルリン会合)
策定(実施)年 2003年
概略 欧州の高等教育担当大臣レベルで合意した声明。ボローニャ宣言を再確認したうえで、2005年までに各国が導入にむけて努力することで、質保証システムの構築を含む事項が新たに提案され、ベルリン・コミュニケとして発表。旧ユーゴスラヴィア諸国を含む40か国が署名した。 <ベルリン・コミュニケの主な内容> ◇ 質保証 質保証の共通基準・方法論構築の必要性、機関自身による内部質保証の重要性(各機関が持つ自治・自律の原則に基づき、質保証に関する最終的な責任は機関自身にあること)を強調。各国の質保証システムは、2005年までに以下の実施にむけて努力する。 

  • 質保証に関わる団体及び機関の役割を明確にすること。
  • プログラムまたは機関別評価(内部評価及び第三者評価、評価への学生の関与、結果の公表)を実施すること。
  • アクレディテーション(accreditation)、認証(certification)等の質保証システムを構築すること。
  • 質保証における国際連携協力、ネットワーク作りを進めること。

欧州レベルの質保証については、ENQA(欧州高等教育質保証協会)に対し、EUA(欧州大学協会)等との連携により、質保証に関する欧州基準、手続き、ガイドラインの開発及び適切なピア・レビューシステムとアクレディテーション機関の確保を進め、2005年の教育大臣会合で進捗の報告を要求した。 ◇ 学位構造

  • 学士課程(学士号)、修士課程(修士号)、博士課程(博士号)の学位構造を促進させるため、学位資格のレベルや内容、学習成果等について各国比較を可能にすること。

◇学生・教職員流動化(モビリティ)の推進 ◇単位制度の構築

  • 学生の流動性向上と国際的なカリキュラム開発促進のため、欧州レベルの単位制度(ECTS)が果たす役割を重要視すること。
  • ECTSを単位の読み替えのみではなく、履修の蓄積を証明する仕組みにし、欧州高等教育圏内でさらに普及させること。

◇学位の認定

  • 2005年より、ディプロマ・サプリメント(学位・資格の学修内容を示した様式)の本格的導入を目指すこと。
リンク https://pjp-eu.coe.int/bih-higher-education/bologna-process.html 

ベルゲン・コミュニケ「欧州高等教育圏構築の目標達成に向けて」

正式名称 The European Higher Education Area – Achieving the Goals
策定主体 欧州高等教育大臣会合(ベルゲン会合)
策定(実施)年 2005年
概略 2005年5月に、ノルウェーのベルゲンで開催された高等教育大臣会合で採択された宣言。本会合で、新たにアルメニア、アゼルバイジャン、グルジア、モルドバ、ウクライナの5か国がボローニャ・プロセスに加盟し、参加国は45に拡大した。 ボローニャ・プロセスのパートナーとしての高等教育機関、教職員、学生の重要性を再確認するとともに、雇用者を含む全ての高等教育利害関係者からの支援がボローニャ・プロセスの目標達成に不可欠であることが強調されている。また、博士プログラムにおける研究活動の促進、質の高い高等教育への参加機会の拡充、ボローニャ・プロセスの国際化を視野に入れた欧州外の地域との交流等が重点事項として掲げられている。 質保証に関する内容は以下のとおり。 

  • 質保証に関わる団体及び機関の役割を明確にすること。
  • ENQA(欧州高等教育質保証協会)が関係機関(EUA、EURASHE、ESIB)(1)とともに提案したガイドライン「欧州高等教育圏における質保証の基準とガイドライン」(Standards and Guidelines for Quality Assurance in the European Higher Education Area (ESG))を採択し、提案内容の実現にむけて努力する。
  • 国ごとの資格枠組み(national qualifications frameworks)を導入する。
  • 大学等によるジョイント・ディグリーの授与を認め、ディグリーの認証を行う。
  • 既習歴を認定する手続きの構築など、多様な学びの促進にむけた基盤を整備する。
  • ENQA、Education International (EI) Pan-European Structure(汎欧州国際教育機構)及びUnion of Industrial and Employers’ Confederations of Europe: UNICE(欧州産業・雇用者連盟)(2)は、ボローニャ・フォローアップ・グループの諮問メンバーに新たに加わる。
  • 各国の大臣は、ESGに基づき、各国質保証機関を対象とするピアレビューを導入する。
  • 質保証結果の相互認証を促進する観点から、国に認証された質保証・アクレディテーション機関間の連携協力の重要性を強調する。

1)EUA(欧州大学協会)、EURASHE(欧州高等教育機関協会)、ESIB(欧州全国大学連盟)。この3機関は、Council of Europe(欧州評議会)とともに2001年のプラハ会合において、ボローニャ・フォローアップ・グループの諮問メンバーとして参加することが合意された。 (2)UNICEは、2007年1月23日付けで、BUSINESSEUROPEに名称変更。

リンク https://pjp-eu.coe.int/bih-higher-education/bologna-process.html 

ロンドン・コミュニケ「グローバル環境における欧州高等教育圏」

正式名称 Towards the European Higher Education Area: responding to challenges in a globalised world ? London Communique
策定主体 欧州高等教育大臣会合(ロンドン会合)
策定(実施)年 2007年
概略 2007年5月にロンドンで開催された大臣会合で採択された宣言。本会合では、欧州高等教育圏(European Higher Education Area: EHEA)への参加国は46に拡大した。ボローニャ・プロセスが進み、欧州以外の地域への影響が進むなか、他地域との協力がボローニャの協議事項になりつつあることが謳われている。 <ボローニャ参加国と他地域との協力にかかる内容> 

  • ボローニャ・プロセスでの改革が、国際的な関心を呼び、欧州と他地域のパートナーとの間で、学位・資格の認証やパートナーシップに基づく協働、相互理解、ボローニャ・プロセスの価値等について活発な議論が行われていることを歓迎する。
  • 他地域において、高等教育システムをボローニャの枠組みと調整する試みが進められていることを歓迎する。
  •  「グローバル環境における欧州高等教育圏」戦略を採択する。本戦略の核となるのは、ボローニャ公式ウェブサイト等によるEHEAに関する情報発信の充実、EHEAの魅力と競争力の促進、パートナーシップに基づく協働、政策対話の強化、学位・資格認証の推進。これらは、OECD/UNESCOの「国境を越えて提供される高等教育の質保証に関するガイドライン」との関連で進める。

以上を確認したうえで、2009年までの取組みの優先事項として、流動性(学生・教員の流動性促進、流動性を測る方法の開発)、社会における高等教育の役割、データ収集、卒業生の就業力(employability)、グローバル環境における欧州高等教育圏、進捗の現状把握が設定された。また、2010年以降は、EHEAにかかる国際連携の強化を優先して行うことが合意された。

リンク https://pjp-eu.coe.int/bih-higher-education/bologna-process.html 

ルーヴァン・コミュニケ「ボローニャ・プロセス2020年:欧州高等教育圏の新たな10年」

正式名称 The Bologna Process 2020 – The European Higher Education Area in the new decade
策定主体 欧州高等教育大臣会合(ルーヴェン/ルーヴァン=ラ・ヌーヴ会合)
策定(実施)年 2009年
概略 欧州の高等教育大臣レベルで、ボローニャ・プロセスの進捗を確認・評価し、2010年以降も主に以下の実現に向けて引き続き欧州・国・機関レベルで取り組むことで合意した声明。46か国が署名した。 <ルーヴァン・コミュニケの主な内容> 

  • すべての学生に質の高い教育を受ける機会を提供すること。
  • 生涯学習を促進させること。
  • 欧州域内での国境を越えた就職を促進させること。
  • 学生の視点から学習成果と教育目標を策定し、学習成果の観点にたったカリキュラム改革を進めること。
  • 教育、研究、イノベーションにおける連携を強化すること。
  • 高等教育機関における教育研究活動のグローバル化を推進すること。
  • 学習あるいは就職を目的とした流動化(モビリティ)の機会を促進させ、その質を向上させること。
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欧州高等教育圏に関するブダペスト・ウィーン宣言

正式名称 Budapest-Vienna Declaration on the European Higher Education Area
策定主体 欧州高等教育大臣会合
策定(実施)年 2010年
概略 2010年3月11日から12日にかけて、ブダペストおよびウィーンで行われた大臣会合で合意した声明。ボローニャ宣言から10年が経過した記念すべき会合で、欧州高等教育圏(European Higher Education Area: EHEA)の構築が宣言された。 本会合では、ボローニャ・プロセスが確実に前進して成果をあげてきているとしつつ、高等教育機関の現場(教職員と学生)からの声を更に反映して改革を進めることが必要である旨、共通認識を持った。 また、ルーヴァン・コミュニケ(2009年)で合意した事項を進め、学生を中心に置いた学習環境を推進することで合意した。 今回新たにカザフスタンが加わり、EHEAへの参加国は47となった。(EHEAについては、1999年のボローニャ宣言で2010年の確立に向けて課題の達成に努力することで29か国の高等教育大臣が署名した)
リンク https://www.edu.ro/sites/default/files/u39/Budapest-Vienna%202010.pdf 

ブカレスト・コミュニケ「欧州の可能性への期待と欧州高等教育圏の強化にむけて」

正式名称 Making the Most of Our Potential: Consolidating the European Higher Education Area ? Bucharest Communique
策定主体 欧州高等教育大臣会合(ブカレスト会合)
策定(実施)年 2012年
概略 2012年4月26日から27日にかけて、ルーマニアのブカレストで開催された、ボローニャ・プロセスに関する第8回大臣会合で合意された宣言。すべての学生に質の高い教育を提供することが、ボローニャ・プロセスの最大の目標である旨、再確認され、欧州高等教育圏(EHEA)構築に向けたプロセスの最初の10年の進捗を評価しつつも、次の10年(~2020年)に向け、今後優先して取り組むべき課題(質の高い教育の提供、学生の就業力の向上、より質の高い学習のための流動性(モビリティ)の強化)を打ち出した。 また、本会合では、EHEAにおける流動性(モビリティ)に関する戦略(Mobility Strategy 2020 for the European Higher Education Area (EHEA): Mobility for Better Learning)も打ち出され、2020年までに、欧州の学生の20%のモビリティを達成するという目標が掲げられ、これに向けて取り組むべき内容が示された。 <ブカレスト・コミュニケの主な内容> 

  • 高等教育へのアクセス拡大に向けた各国の取組みを歓迎するとともに、修了率の向上に関して努力する。
  • 生中心の学習の重要性を再確認する。学生中心の学習とは、学生の学びを主体とした革新的な教育を意図するものであり、その実現に向けた取組みを続けていく。高等教育機関や学生と協働し、充実した支援体制を備えた魅力的な教育・学習環境を提供していく。
  • 質保証は、相互信頼の構築と、EHEAが提供する教育(国境を越えた共同教育を含む)の魅力を高めるのに不可欠な要素であることを再認識する。ENQA(欧州高等教育質保証協会)の「欧州高等教育圏における質保証の基準とガイドライン(ESG)」(2005年)の見直しを行い、明確性、適用可能性、有用性の面で改善を図る。
  • 高等教育への資金及びガバナンスに関する開かれた対話の必要性を認識する。
  • すべての学生に質の高い高等教育を提供するとともに、学生の就業力を高める支援を行う。
  • 学習成果の実質的な導入が、EHEAの強化に不可欠である。学習単位と学習成果・学習量との関連付け、成績評価プロセスにおける学習成果の視点の導入を高等教育機関に働きかけていく。
  • 各国で資格枠組み開発にかかる取組みが進展していることを歓迎する。資格枠組みの構築により、学位・資格の中身が分かりやすく比較可能となり、より柔軟で開かれた高等教育システムの整備が可能となった。
  • 流動性(モビリティ)の強化は、質の高い高等教育、学生の就業力の向上、EHEAと他地域との協働の促進に不可欠な要素である。2020年までの流動性に関する戦略に即して、学生の流動を推進するプログラムに対する国の財政支援・ローン制度の利便性向上に向けた取組みを強化する。
  • 学位や学習歴(インフォーマルな形態による学習経験を含む)の適切な認証が、EHEAの中核にあることを再確認する。効率的な学位・学習歴の認証を阻む制度的な障害を取り除き、国際的に比較可能な学位・資格のシステムを構築することで、学位や学習歴を自動的に認証する仕組みを作っていく。
  • Nuffic(オランダ高等教育国際協力機構)の「欧州地域の資格認証に関する手引き(European Area of Recognition Manual)」(2012年公表)を歓迎し、これを国外で取得された学位・資格の認証にかかるガイドライン及び優良事例集として、各国の資格認証機関が活用すること、また、高等教育機関が、外国学位の認証にかかる機関内部の手続きを検証する際に、本手引きを参照することを推奨する。
  • 欧州高等教育圏のグローバル化推進という観点から、欧州の高等教育機関が、他地域の機関との共同教育プログラムの開発を進めるよう働きかけていく。国レベルの制度に起因する障害を取り除き、国際的な連携や学生流動を推進することを目的に、共同教育プログラムに関する各国の規則や導入のされ方などの実態を調査していく。
  • 欧州と他地域との協力、EHEAの欧州以外の地域への開放がこれからのEHEA成功の鍵である。2005年のロンドン会合で合意された「グローバル環境における欧州高等教育圏」戦略の重要性を再認識するとともに、EHEAのさらなる国際化に資するガイドラインの作成・提供を視野に、本戦略の進捗を評価する。
リンク http://www.ehea.info/Upload/document/ministerial_declarations/Bucharest_Communique_2012_610673.pdf 

エレバン・コミュニケ

正式名称 Yerevan Communique
策定主体 欧州高等教育大臣会合(エレバン会合)
策定(実施)年 2015年
概略 2015年5月14日から5月15日にかけて、アルメニアのエレバンにて開催された、EHEA(欧州高等教育圏)大臣会合において採択された宣言。47か国の代表者が欧州地域の高等教育統合に向けた取り組みにおける2020年までの方向性について協議し、またこれまでのボローニャプロセスを振り返り、具体的な取組み内容の見直しの必要性を明らかにした。 <エレバン・コミュニケの主な内容> 

  • ボローニャ・プロセスにより、EHEA内の学生、卒業生の資格や学習期間の認証が行われ、EHEA域内の移動が可能になった。結果として、学習プログラムによる有用な能力、技術、知識の提供は学生の学習継続や労働市場に好ましい影響をもたらし、高等教育機関は国際社会で活発に活動するようになった。
  • 制度改革にはむらがあり、必ずしもツールが適切に使われているとはいえず、高等教育の制度改正を続ける必要性がある。
  • EHEAは経済不況や高い失業率、移民の増加や人口構成の変化、国家間紛争といった深刻な課題に直面する一方、学生や教員のモビリティは、EHEA加盟国間の相互理解を深めている。また、社会経済に影響をもたらす知識や技術の急速な発達は、高等教育や調査における変化において重要な役割を果たしている。
  • 共通の目標を追求し、対話によって上記の課題に対応し、機会を最大化するという点でEHEAは重要な役割を担っている。当初のボローニャ・プロセスのビジョンを刷新し、各国の高等教育制度における信頼を確保するという新たなビジョンの下、EHEAの構造を強化すべきである。具体的には、2020年までの優先事項として、自動認証の実現、インクルーシブ*な社会の建設に資する教育の実現、加盟国の国民が求める能力や技術を提供する教育機会の実現を掲げる。
  • 学生や教員が学問的な権利を行使できるよう支援する。また、インクルーシブ*な社会を築き、欧州の市民権を強化するために政治的、宗教的な寛容性、文化間の理解の向上に努める高等教育機関を支援する。

<4つの課題>

  • 学習と教授の重要性と質を向上させる。具体的には、学習成果の透明性確保、柔軟な学習等の実施を通して学生本位の学習を実現する。あらゆる学習段階において、教育・学習・研究の連携を強化する。創造的、革新的な活動を促進するような動機を提供する。学習プログラムは、学生の能力を発展させ、学習意欲や社会的なニーズを満たすようなもので、かつ、透明性と柔軟性を伴うものであるべきである。加えて、質に関する教育や教育能力を高めるための機会を提供することが不可欠である。
  • 卒業生の雇用可能性を育成する。授業における実践と理論のバランスをとり、キャリア開発を実施することによって、教育と労働市場の関連性を強化する。学生の能力と職業選択の幅を広げるために、学生の国際的なモビリティを促進していく。
  • 高等教育に関する制度をよりインクルーシブ*なものにする。生涯学習をはじめ、様々な学習機会を提供することによって、異なる背景を持つ学習者が教育にアクセスできるようにする。学生や教員のモビリティを促進する。
  • 合意に基づいた高等教育の構造改革を実施する。学位制度や質保証における共通の基準を設定し、ジョイントプログラムやジョイントディグリー制度における協調は、EHEAにとって不可欠である。合意事項について、各国が一貫して履行することに意味があり、履行しなければ、EHEAの信用性や機能が損なわれる。

次回会合は、2018年にフランスのパリで行われる予定となっている。 *インクルーシブ:ユネスコの定義によれば、全ての学生が基礎的な学習ニーズを満たす平等な教育にアクセスすることができ、生活を豊かにすることができる状態のことである。

リンク https://uluslararasi.yok.gov.tr/Documents/Uluslararasilasma/erivan_bildirgesi_2015.pdf 

パリ・コミュニケ

正式名称 Paris Communiqué
策定主体 欧州高等教育大臣会合(パリ会合)
策定(実施)年 2018年
概略 2018年5月24日~25日にかけて、フランス・パリにおいて開催された、European Higher Education Area (EHEA)(欧州高等教育圏)大臣会合において採択された宣言。48カ国の代表者が本宣言に署名した。各国代表者は、2020年までの欧州地域の高等教育統合に向けた取組*の進展を評価する一方、今後さらに欧州で取り組むべき事項について協議し、共同声明(コミュニケ)及び関連文書をとりまとめた。共同声明においては、欧州で失業、社会的格差の広がり、移民・難民の問題、テロ、右傾化の動き等の社会問題が広がるなか、問題解決に向けた高等教育の社会的役割について強調された。 * 欧州の学生移動を促進するための学位システムの共通化や欧州共通的な単位互換制度の構築等、欧州の高等教育改革に係る取組。改革に関する一連の流れを「ボローニャ・プロセス」と呼ぶ。<パリ・コミュニケの主な内容> 

  • EHEA(欧州高等教育圏)構築の成果 ボローニャ・プロセスのこれまでの成果を評価する。本プロセスにより、高等教育にかかる目標・政策が欧州レベルで策定・合意され、これらをもとに各国が自国の高等教育制度や高等教育機関改革に活かすというユニークな仕組みを作り上げた。大規模な学生移動(モビリティ)を可能とする基盤を作り、各国の高等教育制度の比較可能性や透明性を向上させたほか、教育制度の質や魅力を高めた。
  • 高等教育の基本的価値の保証 学問の自由や誠実性(アカデミック・インテグリティ)、高等教育のガバナンスにおける学生や教員の参画、社会に対する高等教育の責任は、欧州高等教育圏が尊重する基本的価値であり、欧州全体の政策対話や連携協力の強化を通じて保証していく。
  • 社会問題への対応 失業、社会的格差、移民・難民の問題、テロ、右傾化の動き等の社会問題の解決に高等教育が果たす役割は大きい。インクルーシブ**で結束力のある社会の実現に向け、教育機関が社会的責任を十分果たせるよう、政策策定等を通じて支援していく。

次回の欧州高等教育大臣会合は、2020年6月にイタリア・ローマで行われる予定となっている。 ** インクルーシブ:すべての学生が基礎的な学習ニーズを満たす平等な教育にアクセスすることができ、生活を豊かにすることができる状態。(UNESCOの定義より) パリ・コミュニケの内容の詳細については、こちら(機構国際連携ウェブページQA UPDATES 2018/6/19投稿記事)

リンク https://www.diplomatie.gouv.fr/en/french-foreign-policy/europe/news/article/european-higher-education-area-ehea-ministerial-conference-paris-communique-25 

ローマ・コミュニケ

正式名称 Rome Communiqué
策定主体 欧州高等教育大臣会合(ローマ会合)
策定(実施)年 2020年
概略 2020年11月19日に開催された、European Higher Education Area (EHEA、欧州高等教育圏)大臣会合において採択された宣言。本会合はオンラインで開催され、49カ国の代表者が参加した。本宣言では、今後10年間の政策の指針として、コロナ禍においても全ての学生が質の高い高等教育を受けられるようにすること、高等教育機関が社会問題の解決に取り組めるように適切な支援を行うこと、そしてこれらの実現のためにEHEA内でより効果的に連携し、緊密に対話を行うこと等が示された。 <ローマ・コミュニケの主な内容> ●EHEAのビジョン: EHEAは学生、教職員及び卒業者がそれぞれ修学、教育及び研究を行うための自由な移動が保証された圏域となる。 →ビジョンの実現のために2030年までにインクルーシブ(inclusive)で革新的(innovative)かつ相互接続された(interconnected)EHEAとなるよう取り組んでいく。 

  • “Inclusive”(インクルーシブ) 社会的事情に関わらず全ての人に平等な教育機会を提供する、高等教育の社会的包摂性はEHEAの中核である。そのため、EHEAはデジタル技術によりもたらされる新たな機会を大いに活用し、ソーシャル・インクルージョンの推進と教育の質の向上に取り組む。
  • “Innovative”(革新性) EHEAは、高等教育機関が社会的課題の解決に取り組むことを支援する。マイクロクレデンシャルにつながる学習を含め、より小さなまとまりの柔軟な学習が高等教育機関でどのように/どの程度、定義・開発・実施・承認できるのか、その調査をBFUGに要請する。また、EHEAは高等教育機関の学習、教育、研究等の諸活動におけるデジタル技術の活用を支援するとともに、すべての人にデジタルスキル等が身につくよう支援する。
  • “Interconnected”(相互接続性) 協力とモビリティの意義、そして学生等の物理的な移動によるメリットを認識の上、新型コロナウイルスに関係なく、EHEAの卒業者の少なくとも20%が海外での留学等の経験をもつという目標を再確認する。加えて、全ての学習者がカリキュラムの国際化や本国機関にいながらデジタル技術等を用いた国際的な経験を通じて国際的・異文化的コンピテンシーを修得できるよう取り組むとともに、授業の形式(対面、オンライン、またその併用)を問わず何らかの形でモビリティを経験ができるよう取り組む。

このほかに前回(2018年)の会合で採択された今後注力する3つの取組(Key Commitments)について、これらの取組が着実に実施されており、引き続き取り組んでいくことが確認された。 ①資格枠組と欧州単位互換制度(ECTS) ②リスボン規約とディプロマサプリメント ③欧州高等教育圏における質保証の基準とガイドライン(ESG)に基づく質保証   次回の欧州高等教育大臣会合は、2024年にアルバニアで行われる予定となっている。   ローマ・コミュニケの内容の詳細については、こちら(機構国際連携ウェブページQA UPDATES 2021/1/8投稿記事)

リンク http://www.ehea.info/Upload/Rome_Ministerial_Communique.pdf