ルミナ財団が、遠隔教育における州認可協力協定(SARA)事業へ230万ドルの助成

原典:西部地域高等教育委員会(WICHE)(英語)

米国での遠隔教育(distance education)の提供における、現在の複雑な複雑な国内規制(下記②参照)の解決策として期待されている州認可協力協定(SARA: State Authorization Reciprocity Agreement)事業に対し、ルミナ財団が230万ドルの助成を行うことが明らかになった。この事業の主要機関の1つである西部地域高等教育委員会(WICHE)が8月5日付けで発表した。

2012年6月に、米国州高等教育管理者協会(SHEEO: State Higher Education Executive Officers)と州立大学協会(APLU: Association of Public Land-grant Universities)の両機関が、遠隔教育に対する高まる需要※を受け、ライリー元連邦教育省長官を議長に遠隔高等教育規制協議会(Commission on the Regulation of Postsecondary Distance Education)を設立。その後、2013年4月に「規制改革によるアクセス拡大」と題した報告書を作成し、SARAの具体的な制度内容が提唱された。SARA事業はその後、財源の確保ができなかったことで活動が停滞していたが、今回ルミナ財団による財務的支援が決定し、間もなく米国の各地域のSARA団体(下記①参照)が活動を開始する予定となっている。

州認可協力協定(SARA)の解説

※2011年には670万人の学生がアクセス(前年の57万人からの大幅増)、そのうち高等教育段階の学生の32%が少なくとも1科目はオンラインで受講しているという統計が出されている。(Allen and Seaman, 2013, Changing Course: Ten Years of Tracking Online Education in the United States, p. 4)Changing Course: Ten Years of Tracking Online Education in the United States, p. 4)

①州認可協力協定(SARA)の仕組み

SARAでは、まず米国の地域毎にSARA団体※1が置かれる。協定締結を望む各州は、SARAの基準に見合った州認可制度を整備した上で、属する地域のSARA団体に対して参加申請を行う。SARAに参加する州では、以下の条件を充たす認可制度を整備する必要がある。

  • 教育機関は機関別アクレディテーションを受審していること
  • 教育機関は財務資力点数※2により、1.5点または理由付き1.0点以上のスコアを有していること
  • 州認可制度に消費者保護と認可大学の継続的管理のための仕組みが盛り込まれていること

州によっては上記に挙げた条件を充たすため、既存の州法令の改正を行わなければならない。西部地域では、既にコロラド、ハワイ、ネバダ、ノースダコタ、ワシントン各州がこうした法改正を済ませている。SARAへの参加を認められた州では、各大学が州認可を申請する。認可が得られれば、自大学のオンラインプログラム(web経由で教育を提供し、学位授与に至る課程)への他のSARA参加州からの学生受け入れが無条件で行えるようになる。本制度は学位取得に繋がる課程のみを対象とするのでムーク(MOOC)のプラットフォームが州認可を受けることはできない。

各地域のSARA団体を統括する組織として、SARA全国委員会(NCSARA)が置かれる。 (SARAの相関図は下図参照)

※1 WICHE(西部地域高等教育委員会)、MHEC(中西部高等教育連合)、NEBHE(ニューイングランド高等教育局)、SREB(南部教育委員会)の各団体

※2 Federal financial responsibility score:連邦奨学金を支給している大学が受審義務を有する、連邦教育省による大学の財政に関する審査

SARA相関図

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②複雑な遠隔教育規制制度

米国の遠隔教育への規制は、連邦行政規則(CFR)第34章の600条9項に定められているものである。この施行令は、連邦政府の学資援助プログラム(student aid program)により支援(奨学金の受給など)を受ける学生の権利保護を目的とした、高等教育法(HEA: Higher Education Act)に基づく規則である。教育課程が連邦政府の奨学金支給の対象プログラムとなるには、ここで定められている要件を充たさなければならない。このうち、当該600条9項は教育機関の州認可に関する内容である。

§600.9州認可
(c)教育機関が遠隔教育または通信教育を用いて、当該教育機関が物理的に位置していないあるいは定められた当局の認可が必要な州に在住する学生に中等後教育を提供する場合、当該教育機関は合法な遠隔または通信教育の提供のために必要とされる、全ての州の規制を遵守しなければならない。この件に関し、各教育機関はいつでも連邦教育省長官の要請に対し関連書類を提出できるようにしておかなければならない。
(原文)

上記条文(§600.9(c))は2010年10月に公示され、2011年7月から施行された。これにより遠隔教育を提供する教育機関は、自らが位置する州の認可要件だけでなく、それ以外の州の認可要件の充足が必要な場合もでてきた。以下は、遠隔高等教育規制協議会の報告書「規制改革によるアクセス拡大」で挙げられた、上記法令遵守に多大な時間と費用が費やされる理由である。

  1. 州認可: 州によっては、州民に遠隔教育を提供する米国全土の教育機関に自州の認可を求めるところもある。
  2. “物理的に位置する=physically located”の定義: 該当教育機関の建造物の所在とする州もあれば、広告宣伝活動や学生募集活動の実施をもって“物理的に位置する”と定義する州もある。
  3. アクレディテーション: 州によって認可要件にアクレディテーションの受審を定めている州と定めていない州がある。
  4. 費用: 認可にかかる費用に大きな差がある。
  5. 認可単位: 機関毎に認可する州とプログラム毎の州がある。
  6. プログラムの性格(学位授与の有無)や教育機関の種類(公立、私立、営利、宗教/民族)等によって該当する要件が変化する。
  7. 各州で随時法改正が行われる可能性がある。

以上のように、州毎にまちまちな規則を1つの遠隔/通信教育プログラムが常に充たすことは非現実的である。そこで解決方法として持ち上がったのが、SARAの制度である。

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③通信教育と遠隔教育

米国連邦教育省は、通信教育(correspondence education)と遠隔教育(distance education)を明確に区別している。それぞれの言葉の定義は、連邦行政規則第34章の602条3項で定められている。

通信教育(correspondence education)
教育機関が教育課程を通じ、授業実施教員から離れた場所にいる学生へ、郵便や電子媒体で試験を含めた教育材料を提供すること
教員と学生の相互的影響(interaction)は不定期で限定的であり、主として学生主導によるものである
通信教育は学生が自らのペースで行う
通信教育は遠隔教育とは異なる
遠隔教育(distance education)
授業実施教員から離れた場所にいる学生へ、定期的で重要な両者間の相互的影響を維持するために、以下に挙げる技術を用いる教育のこと
(1) インターネット
(2) 放送回線、ローカル回線、ケーブル回線、電磁波、ブロードバンド、光ファイバー、衛星または無線を用いる機器
(3) ビデオ会議
(4) ビデオテープ、DVD、CD-ROM(上記(1)~(3)と併せて用いる場合に限る)

通信教育と遠隔教育の違いは、教員と学生の相互的影響(interaction)にある。前者は、主に学生側からの働きかけによる限定的なやりとりが行われるにすぎないが、後者では定期的に重要な相互のコミュニケーションが交わされる。そのため、学生は教員とは離れた場所にいながら、通学による学生のように決められたペースの学習をすることになる。

SARA事業による規制の簡素化は遠隔教育にのみ向けられている。これは、遠隔/通信を問わず、オンラインの教育課程を設ける大学が近年増加したことを受け、連邦政府が(通信制ではなく)遠隔教育課程を学資援助プログラムの受給対象として認めているからである。

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④関係機関名一覧

APLU Association of Public Land-grant Universities
CSG Council of State Governments
MHEC Midwestern Higher Education Compact
NCSARA National Council of State Authorization of Reciprocity Agreement
NEBHE New England Board of Higher Education
SHEEO State Higher Education Executive Officers
SREB Southern Regional Education Board
WICHE Western Interstate Commission for Higher Education

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参考
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