原典:連邦教育省(英語)
オバマ政権は、職業訓練系の大学(career college)が提供する教育プログラムに対する連邦奨学金支給要件の改正内容を固め、2014年10月30日に連邦教育省を通じて発表した。今回発表されたのは、同年3月に公表した 改正案(本サイト2014年4月23日投稿記事)に対して寄せられたおよそ95,000件のパブリックコメントの内容を反映させたもの。改正された支給要件は2015年7月1日より施行される。
新たな支給要件
連邦奨学金の受給資格を得るために新たに課せられる要件は下記の通り。これは、3月発表の案の中から、債務不履行率に関する要件が削除されたものである。
- 州と連邦政府から適切な免許、認可、アクレディテーションを受けたプログラムであること
- プログラム修了者の収入に占める債務の割合(aD/E: annual debt-to-earnings)、または自由裁量所得に占める債務の割合(dD/E: discretionary debt-to-earnings) について、下記①と②の要件に該当しない
①直近3年間のうち2年で、aD/Eが12%より大きいかdD/Eが30%より大きい;または、
②4年間連続で、aD/Eが8%以上12%以下またはdD/Eが20%以上30%以下 - 教育プログラムの成果を社会に公表する。例えば、プログラム事業の経費、収入、債務、修了率など
支給要件のポイント
連邦教育省の発表によると、新たな支給要件のポイントとして下記の4点が挙げられている。
- 受講生に過度の債務を負わせることを防止:新基準により、受講生が修了後に返済しきれない額の負債を抱える可能性のある約1,400のプログラムが、奨学金受給資格を喪失。これは、84万人の受講生を不当に高額なプログラムから保護することとなる
- より厳格な財政責任の追求:前回の要件改正では、当時存在していた193プログラムが受給資格を失う対象となる程度だったが、上述の通り今回は一気に約1,400が改善対象となる
- 受講生の将来について明確な説明を要求:受講生や一般消費者へ向けた重要情報の開示を義務化。修了者の収入や修了時の債務の規模なども含まれる
- 受講生の就学環境の改善:今後、職業訓練プログラムの品質基準を定めることを念頭に、すべての対象プログラムに対してさらなる質の向上を求める
今回の連邦奨学金支給要件の見直しは、職業訓練プログラムに対する社会からの批判が背景にある。これらのプログラムは看護、大型車運転、調理、自動車修理などの分野で訓練が提供されており、退役軍人や失業者などの層から特に需要がある。また、Association of Private Sector Colleges and Universitiesによると、受講生の2/3は24歳以上の成人で、半数近くが配偶者がいたりフルタイムの労働者である。
同時に、こうした職業訓練プログラムの多くは営利大学によって運営されており、営利大学のプログラムに通う受講生は他の高等教育機関在籍者に比べ、貧困層にいる者や生活保護受給者が少なくない。National Student Clearinghouse Research Centerによると、2014年春には130万人が営利大学に入学した。
営利大学が手掛けるプログラムに対しては、高額な学費、在学生の高い奨学金受給割合と債務不履行率が問題視されている。これに対し、今回の決定は営利大学のみを標的にしたもので、質の悪い教育機関の根本的な排除にはならないとの声も挙がっている。