原典:英国高等教育質保証機構(QAA)(英語)
QAA(英国高等教育質保証機構)が、2015年9月にTNE(国境を越えた教育)プログラムに係る質保証の向上に関する報告書「Developing a Strategic and Coordinated Approach to the External Quality Assurance and Enhancement of UK Transnational Education」を発行した。
2013年にBIS(ビジネス・イノベーション職業技能省)は、QAA及びIU(英国高等教育インターナショナル・ユニット)に、「TNE(Transnational Education)プログラムの質保証の強化に関して何が必要か」に関するパブリック・コメントを実施した。当報告書はその結果に基づき、TNEプログラムの質保証の強化に関する提言をとりまとめたものである。
今日、英国の学位取得を目指して英国国外で勉学に勤しむ学生は60万人以上に及んでいる。
QAAは、今年3月にカリブ海諸国を対象としたTNEプログラムに対するレビューを行い、総括報告書を公開(本サイト2015/04/17)するなど、TNEプログラムへの質保証に係る取組みを実施してきた。
一方、今年6月に公開されたブリティッシュ・カウンシルとドイツ学術交流会(DAAD)によるTNEに関する共同研究報告書(本サイト2015/08/21)によれば、高等教育の多様性・複雑さが、調査対象国のいずれにおいても、TNEプログラムの質保証においても重要なデータ収集を困難にしている等の課題も顕在化している。
このたびQAAによって公開された当該報告書では、UKの高等教育は輸出物であるとして、その価値や信頼は厳格な外部レビューによって保護されるべきであると述べられている。また、TNEプログラムの質や基準の分析においては、英国国内で実施される外部ピアレビューとさらに密接に連動させることが求められており、対象国における質保証機関等のステークホルダーと関係を強化し、国際展開を図る大学の信頼の獲得と成長をサポートしていく必要があるとしている。
なお、当報告書で示された提言については、将来的に導入される構想のあるTEF(教育評価枠組)にTNEプログラムも対象となった場合、この提言も考慮されるべきであると述べられている。
提言:
- QAAは、国内機関へのレビューとTNEへのレビューを連動させるべきである。例えば、国内機関へのレビューのスケジュール策定の際、TNE受審校をどこにすべきか考慮することやTNEのレビュー結果を国内のレビューの際に反映することが考えられる。(また、その逆も同様。)
- 海外分校やTNEプログラム提供機関に対する単独の機関レビューを実施する必要はないが、国内機関と同程度のレビューが行われるべきである。
- QAAは、TNEに係る外部質保証制度を指導・監督すべく、委員会(TNE committee(仮称))を創設し、年次の提言を発表すべきである。
- QAAはTNEの質保証活動の発展・補完・評価に関して、学位授与機関、ステークホルダー及び政府機関との連携を強化すべきである。
- QAAは、HESA(英国高等教育統計機関)や他のステークホルダーと協力して、HESAの実施する新たな英国外での学習実態調査(Aggregate Offshore Record)が発表されるまで一時的にTNEのレビューに有用な年次データ集を作成すべきである。
- QAAは、適切なステークホルダーと協力して、TNEの傾向・動向に関して、年次報告書を発行すべきである。
- QAAは、QACHE(NIAD-UE国際課まとめ)のツールキットの利用や、他国の質保証機関との協働が可能かどうか等について検討すべきである。