原典:イングランド高等教育財政カウンシル(HEFCE)(英語)
イングランド高等教育財政カウンシル(HEFCE)が、2016年3月に新たな質保証制度「Revised operating model for quality assessment(50ページ)」を公表した。
英国の3つの行政区域(イングランド、ウェールズ、北アイルランド)の高等教育財政カウンシルは、英国高等教育質保証機構(QAA)に業務委託している第三者評価の抜本的な見直しを含む新たな質保証制度の提案と、これに対するパブリックコメントを2015年6月に実施していたが、そのパブリックコメントの結果を踏まえて本制度が策定されたものである。
この新しい質保証制度については、2016年の学年暦の開始(2016年9 月~)より順次、イングランド及び北アイルランドにて試行的に開始され、2017年より本格的に導入される予定である。(ウェールズの新たな質保証制度の運用方針については、近い将来、別途パブリックコメットを実施の上、決定することとしている。)
イングランドにおける新たな質保証制度の概要について
- 新たな質保証制度においては、高等教育機関をその成熟度により3段階(次表参照)に分類し、各段階に応じて異なるレビューを実施する。
- 新規に高等教育部門に参入する場合においては、「高等教育機関としての認証(verification)」(次表①)を受審する必要がある。
- 既存の高等教育機関(新規に高等教育機関としての認証(verification)された機関等を除く)については、 「高等教育機関としての認証(verification)」(次表①)及び「発展段階(developmental period)にある機関への評価」(次表②)の受審は不要であり、「基礎的要件が具備された段階(established)にある機関への評価」(次表③)を受審する。
- 基礎的要件が具備された段階(established)にあるとされた高等教育機関においては、従来QAAが実施していた基礎的要件に係る周期レビューの受審が不要となる。
- 基礎的要件が具備された段階にある高等教育機関においても、各レビューの結果、水準を満たしてない判断された場合、発展段階(developmental period)への格下げあるいは高等教育機関としての登録抹消等の措置が講じられることがある。
- レビュー以外においても、HEFCEは高等教育機関に質に懸念が生じた場合、速やかに訪問調査等を実施するなど調査・介入行うこととしている。
新たな質保証制度における主なレビューについて
高等教育機関に対する評価枠組 | |||
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①高等教育機関としての認証(verification) | ②発展段階(developmental period)にある機関への評価 | ③基礎的要件が具備された段階(established)にある機関への評価 | |
対象機関 | 新規に高等教育部門への参入を目指す機関 | 新規に高等教育機関として認証された機関 | 既存の高等教育機関 |
レビューの概要及び目的 | 基礎的要件(Baseline regulatory requirements)に係るピアレビュー: 高等教育機関として認証されるために必要な基礎的要件に関する審査(訪問調査含む) |
(1)年次プロバイダーレビュー(Annual Provider Review): 各高等教育機関の主要データ、学生の意見等、年次報告の収集、解析及びその評価 (2)基礎的要件に係る訪問調査を含む再ピアレビュー: 高等教育機関として認証されるために必要な要件に関する再審査 |
(1)内部評価プロセスの認証: 学生の学習成果向上等に係る各高等教育機関の内部評価プロセスの認証(verification)。 (2)年次プロバイダーレビュー: 各高等教育機関の主要データ、学生の意見等、年次報告の収集、解析及びその評価 (3)HEFCE質保証レビュー(HEFCE Assurance Review:HAR): 各高等教育機関の管理部門の評価のための簡易訪問 |
受審時期 | 高等教育部門への参入のための審査時 | (1)毎年受審 (2)高等教育機関として認証されてから4年後に受審 |
(1)初回のみ (2)毎年 (3)5年毎 |
レビューの実施主体 | HEFCEが入札により選定した第三者機関 | (1)HEFCE (2)HEFCEが入札により選定した第三者機関 |
(1)HEFCEが入札により選定した第三者機関 (2)HEFCE (3)HEFCE |
判定 | HEFCEが、ピアレビューの結果等を踏まえて3段階で認証の可否について判定。 | (1)HEFCEの独立委員会(Accountability and Regulation Strategic Advisory Committee)が5段階で判定。
(2)HEFCEが、ピアレビューの結果を踏まえて3段階で認証の可否について判定。 |
(1)HEFCEが認証。 (2)HEFCEの独立委員会(Accountability and Regulation Strategic Advisory Committee)が5段階で判定。 (3)HEFCEが、5段階で判定。 |
備考 | 〇基礎的要件には、クオリティ・コード(質規範)、財政の持続性及び管理運営に係るHEFCEの設定要件、消費者保護、学生保護の観点に係る要件等が含まれる。
〇基礎的要件については、スコットランドを含む4つの各高等教育財政カウンシルが協働で、全英常設委員会(UK-wide standing committee)を開催し、そこで検討・策定を行う。各高等教育財政カウンシルの他、高等教育機関及びQAAの代表者などが出席する。 |
〇レビューの結果、基礎的要件の水準を満たしたと判断された「発展段階にある」高等教育機関は、「基礎的要件の具備された段階にある」高等教育機関として、今後、同要件のレビューが不要となる。
〇2017年の学年暦より、高等教育機関として認証された機関より対象となる。 |
〇レビュー以外においても、質への懸念が認められた高等教育機関については、HEFCEが速やかに調査・介入を実施する。 〇年次プロバイダーレビュー及びHEFCE質保証レビューで水準を満たしてないと判断された「基礎的要件が具備された段階」の機関については、「発展段階」への格下げあるいは高等教育機関としての登録抹消等の措置が講じられることがある。 |