質の高い学習成果を達成するために―欧州学生連合の共同構想から

原典:欧州学生連合(ESU)(英語)

2016年6月に欧州学生連合(ESU)は2015年10月に国際連合が採択した持続可能な開発のための2030アジェンダの中で、教育に関して定めた「目標4:全ての人に対し、インクルーシブで公正かつ質の高い教育及び、生涯学習の機会を確保すること」を達成するために欧州各国が共同で策定した構想「A joint vision for Secondary and Higher Education for All in Europe」を公開した。本構想は、欧州における中等・高等教育に関する8つの優先事項と、それぞれに付属する2つの要請と政策提言から構成されている。下記では、学習成果に関する事項について紹介する。

質の高い学習成果(Quality learning outcome)

質の高い学習成果に関する要請と政策提言は、「目標4」の中の「4.3:2030年までに全ての人が廉価で、質の高い技能教育、職業教育、大学を含む高等教育へのアクセスができるよう確保すること」を達成するために策定された。

要請(Demand)

  1. 確固たる国の教育制度と、包括的にアセスメントされた、広範かつバランスのとれたカリキュラムが、質の高い学習成果をもたらす。アセスメントの主な目的は、学生に学習経験の状況を示し、教育と学習を改善することにある。
    機関は学習成果の策定において、透明性のあるプロセスを構築することが重要である。学習成果は明白で、各国の政策やカリキュラム、欧州議会が示す高等教育の目的に沿ったものでなければならない。また、学習成果は改訂した欧州高等教育圏における質保証の基準とガイドライン(ESG)(参照:NIAD-QE国際連携ウェブサイト)に沿った形で検討されることが重要である。
  1. 学生中心(student-centred)の学習の原則により、学生の経験の質が引き上げられ、望ましい学習成果の達成が促される。学生中心の学習には、教員が学生のニーズに合わせてカリキュラムや教授方法を調整できるよう、学問の自由が不可欠である。
    したがって、期待される学習成果に応じて、授業の中で様々な学習形態を用いたり、最終評価を学生の学習状況を評価の中心に据えて行ったりすることが重要である。そのため、統一的な試験は廃止すべきである。学生個人の学習状況を中心に、学習プロセスを通して教員が実施する形成的評価を尊重するべきである。

政策提言(Policy recommendation)

ランキング、その他の序列化や、学習成果を機械的に扱うことは相対的・絶対的な質を示す方法として誤解を招きやすい。試験偏重主義は、教育や学習を疲弊させ、教員のみならず学生にもストレスをもたらす上、説明責任なしにそれらから利益を得る企業を生み出している。有能な学生を中等・高等教育によって育てていくために、政府は試験偏重主義から脱し、カリキュラムや質保証制度、機関の決定を信頼していくべきである。

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