エラスムス+の2年目の状況報告

原典:欧州委員会(英語)

2017年1月、欧州委員会は2014年に開始してエラスムス+プログラムの2年目(2015年)の状況に関する年次報告書「Erasmus+ Programme Annual Report 2015」を公開した。全プログラム期間7年間の予算総額182億ユーロ(2017年時点)のうち、2015年には約21億ユーロが執行され、19,600のプロジェクト、69,000の参加機関が助成を受けた。
エラスムス+(参照:NIAD-UE国際連携ウェブサイト)は、最大500万人が他国での教育及び職業教育を受けられるようにするための欧州委員会による助成プログラムである。「Key Action1:個人の学習モビリティ」、「Key Action2:イノベーションへの協力と優良事例の交換」、「Key Action3:政策改革支援」3つのカテゴリから成る。下記ではKey Action1の主な実績を中心に記述する。

Key Action1 「個人の学習モビリティ」の概要

  • このカテゴリは個人の学習もビリティに対する助成であり、エラスムス+の中でも優先的に予算配分され、2015年は年間総予算の57%(約12億ユーロ)を占めた(対前年比1%減)。
  • 2015年には総勢678,000人にプログラム参加のための助成金(mobility grant)が支給された。
  • 2015年からの主な新規プロジェクトや変更点は下記の通り。
  • ●連携国間のプログラムにおける学生と教職員の留学プログラムである「The International Credit Mobility」の助成対象者を欧州以外の連携国に留学するエラスムス+の学習者と教職員にも拡大した。
  • ●他国でのエラスムス+修士プログラムへの参加学生を対象とした貸与奨学金プログラム「Erasmus+ Master Loans」を開始した。本プログラムに参加する学生は、EUが保証したローンを有利な返済条件で利用できるようになった。
  • ●質の高い職業教育/訓練を提供する機関に対して、その高い質を証明するための証書として、「Erasmus+ VET Mobility Charter」を授与することにした。
  • 2015年に試行的に実施されたプロジェクトとして「Erasmus Mundus Joint Master Degrees Quality Review」がある。通常、大学は学生を5回受け入れるごとに助成金が一括で交付されているが、本プロジェクトでは分割して交付される。すなわち、選ばれた特定の大学コンソーシアムは学生を3回受け入れるごとに助成金を受け、プロジェクト実施中にQuality Reviewを受ける。その審査に通るとその後3年間、追加的な資金を共同出資という形で受ける仕組みとなっている。

数値データから見る主な実績

  • Key Action 1のうち、高等教育分野における学生・教職員モビリティプログラム(Higher education student and staff mobility)には、約29万人の学生が参加した。学生の主な行き先はスペイン(12%)、ドイツ(11%)、英国(10%)であり、教職員の主な行き先は英国(11%)、イタリアとスペイン(9%)であった。95%の学生と99%の教職員は、モビリティによって得られた経験に満足している。
  • 質問に回答した学生のうち、留学前に留学中の成績がどのように読み替えられるかについて情報を受けた学生は48%であり、また58%は学習計画書(learning agreement)の作成に向けた準備段階の時点でシラバス(course curricula)が入手できなかったと回答している。さらに留学中の学習の認定に満足していると回答した教職員は82%にとどまっている。
  • 各プログラムの採択数(()内は対申請件数の採択率)は下記のとおりである。
    • 学校教職員のモビリティ(School education staff mobility):2,542(35%)
    • 職業教育/訓練の学習者・教職員のモビリティ(VET learner and staff mobility):3,086(47%)
    • 高等教育における学生・教職員のモビリティ(Higher education student and staff mobility):3,731(70%)
    • 成人教育における教職員のモビリティ(Adult education staff mobility):386(25%)
    • 青年のモビリティ(Youth mobility):5,543(35%)
    • 大規模ボランティア行事(Large-Scale Volunteering Events):4(50%)
    • エラスムス+修士課程のジョイント・ディグリー(Erasmus+ Joint Master Degrees):15(20%)
    • エラスムス+修士課程のジョイント・ディグリーの質レビュー(Erasmus+ Joint Master Degrees Quality Review):17
    • エラスムス・ムンドゥス共同博士課程(Erasmus Mundus Joint Doctorates):29(※継続プログラム)
    • エラスムス・ムンドゥス修士課程(Erasmus Mundus Master Degrees):88(※継続プログラム)

なお、エラスムス+の1年目の状況についてはこちらからご覧ください(本サイト2016/3/29投稿記事)

参考:
Annex I Erasmus+ Programme Annual Report 2015 Statistical Annex(英語)
Annex II Erasmus+ Programme Annual Report 2015 Project Annex(英語)
University World News(英語)

カテゴリー: 欧州 タグ: , パーマリンク

コメントを残す