欧州高等教育圏における「国境を越えた質保証」を考える上でのポイント

原典: 欧州高等教育質保証協会(英語)

2017年2月、欧州高等教育質保証協会(ENQA)をはじめとする欧州の教育団体は、欧州高等教育圏(EHEA)における国境を越えた質保証の利点や特有の問題点についてまとめた報告書「Key Consideration for Cross-Border Assurance in the European Higher Education Area」を公開した。
当報告書は、ステークホルダーに国境を越えた質保証について情報提供することを目的として、ENQAを中心に欧州の教育団体が立ち上げたワーキンググループにより作成されたものである。

国境を越えた質保証がもたらす利点

高等教育機関にとっての利点

  • 高等教育機関のミッションや特性に合った質保証機関を特定することができ、最終的には高等教育機関側の特性に合う審査を受けることができる。
  • 高等教育機関の国際化戦略を強化し、海外機関との連携を発展させることができる。
  • 高等教育機関側が発行する資格の認証の改善に役立つ。
  • ステークホルダーの関与を強化し、質に対する機関の責任と機関の取組みに対する外部からの承認を強化する。

質保証機関にとっての利点

  • 質保証機関の国内的・国際的な認知・名声を向上させる。
  • 質保証機関の質保証プロセスや方法を改善するきっかけとなる。
  • 質保証機関の収入が増加する。
  • 特定の分野について継続的な改善を促す能力を得られる。

国境を越えた質保証に向けての道のり

国境を越えた質保証の実施前に生じる問題

  • 国境を越えた質保証に関わる論理的な根拠や目的、国境を越えて質保証がなされることによって生じる利益をしっかりと考えておく必要がある。加えてそれらの根拠や目的が機関の活動に沿うものであるか検討する。
  • 欧州高等教育圏における質保証の基準とガイドライン(ESG)(参照:NIAD-QE国際連携ウェブサイト)に沿った審査であるべく、欧州高等教育質保証機関登録簿(EQAR)に登録された質保証機関を選ぶこと。また選ぶべき質保証機関は、高等教育機関が考える質保証の目的や期待される利益、法的要件を満たす機関であり、かつ、外部質保証を行うことができる位置付けにある機関を選ぶこと。
  • 国境を越えた質保証の法的位置付けについて知っておく必要がある。そのためには、高等教育機関と質保証機関が法的枠組みや国内基準に関する情報を利用できるようにすること。
  • 法的枠組みの他に、審査に要する資源や使用言語、追加的な労力等の情報に留意すること。国境を越えた質保証の結果は、高等教育機関が発行する資格の国内外における認証に影響をもたらしうる。
  • 国境を越えた質保証を受審する決定や当該質保証機関を選択した理由について、高等教育機関は学生を含めたステークホルダーに周知すること。国境を越えた質保証の目的と目標について関与した全ての者に明確に示すこと。

国境を越えた質保証を実施する段階における問題

  • 受審機関の所在国の法的枠組みや教育制度における慣行や構造等といった、国境を越えることによって生じる特有の状況に対しては審査方法を変えて対応すること。審査プロセスの変更はESGで認められている。
  • 高等教育機関と質保証機関間の協議によって、質保証のプロセスや国内・機関の状況に関する理解を共有すること。審査の実施に詳細な調整や背景知識の収集が、質保証の実施に役立つ。
  • 質保証機関は評価者を透明かつ適切に選抜し、研修を行う。特に評価者が国境を越えた質保証の実施に慣れていない場合は、特定の研修やブリーフィングが重要となる。また文化や慣行の違いについて配慮する必要がある。
  • 使用言語や訪問調査といった審査の具体的側面について、事前に高等教育機関と質保証機関との間で正式な合意をしておくこと。

国境を越えた質保証の結果への対処

  • 国境を越えた質保証を行うことが(高等教育機関の所在国において)義務である場合、当該国内の関連するステークホルダーに受審結果を認めてもらうための必要な追加的作業について検討すること。
  • 質保証機関はESGに沿った異議申し立て制度やフォローアップについて検討し、高等教育機関と質保証機関はそれらに対しそれぞれの責任を認識しておくこと。

ENQAの他に欧州学生連合(ESU)、欧州大学協会(EUA)、欧州高等教育機関協会(EURASHE)、欧州高等教育質保証機関登録簿(EQAR)が執筆した。

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