フランスの監査機関である国民教育研究行政監査総局（IGAENR）及び財務監察総監（IGF）が、大学統合や学術共同体設立と世界大学ランキングの関係性についてまとめた報告書「La prise en compte des classements internationaux dans les politiques de site」を発表した。本報告書では、主要な世界大学ランキングである世界大学学術ランキング（ARWU）、 QS世界大学ランキング（QS）、THE世界大学ランキング（THE-TR）、ライデン・ランキング、Webometrics世界大学ランキング」の5つのランキング及びU-Multirankのそれぞれのフランスの高等教育機関の国際的認知度の推移について多角的に分析したうえで、今後フランスが執るべき政策に対する提言を公表している。

フランスの政策における大学ランキング…国の政策に重視されていない現状

• フランスは、米国やドイツ、中国をはじめとする他国に比べ、国内大学ランキングが発達していない。
• フランスにおいて、世界大学ランキングの結果は国・機関間の契約^※2協議に反映されないとともに、研究・高等教育評価高等審議会（HCERES）の評価においても、自己評価報告書の項目に、世界大学ランキングの結果を入れるかどうかは、被評価機関次第である。
• 投資総合委員会（CGI）が管轄する、研究開発・イノベーションにかかる大規模投資政策である「IDEX/ ISITE（将来への投資施策）」の申請書には、世界大学ランキングを用いて申請機関が国際的にどのレベルにいるかを記述する必須の項目がある。

世界大学ランキングにおけるフランスの立ち位置

• 分析によると、世界大学ランキングにランクインしている全機関のうち、フランスの高等教育機関は4〜4.4％を占めていることがわかった。
• 例えば、ARWUでは、フランスの高等教育機関がトップ500にランクインしている割合は4.4%であるが、この結果は米国（27.6%）、中国（8.2%）、ドイツ（7.6%）、英国（7%）等の主要競合国に比べ低いことがわかる。さらに、各国におけるトップの高等教育機関の順位も、これらの国よりもフランスは低い。
• なお、分野別ランキングにおいては、フランスの高等教育機関における国際的認知度及び順位は少し上がる傾向にある。

大学統合や学術共同体設置がもたらした世界大学ランキングの順位への影響の分析結果

• 学術共同体設置、すなわち同一地域内における高等教育・研究機関の統合がもたらした影響は、規則性がなく一概には言えない。
• 大学統合のうち、統合前から同じ専門分野の学部を有していた大学同士の統合は、ランキングの順位を上げた。なお、順位を上げた理由として、共同研究実施等による相乗効果や施設の有効活用等が考えられるが、現状では明確に判断できない。

フランス政府への提言

今回の分析から、世界大学ランキングへの見解を国レベルで明確にし、対策を講じる必要があることや、国と高等教育機関との契約協議等において世界大学ランキングを活用すること、また高等教育機関が提出する国への申請書類等を仏英言語併用とし、英語の使用を促進していくべきなど、11の提言がされている。

※1…2013年に制定された高等教育・研究法は、教育課程や研究戦略等の地域的な連携や学生の生活向上、世界大学ランキングの上位を目指すため、同一地域内における高等教育・研究機関の統合を促した。その結果誕生したのが学術共同体である。現状についてはこちら（本サイト2017/1/16記事）。

※2…フランスでは、高等教育機関は中長期計画を策定し、その計画に基づき国と5年間の契約を結ぶことが義務付けられている。本契約において各機関の予算配分が行われるほか、国から学位授与権の認証の更新を受けるなど、大学運営において重要なものとなっている。

原典：フランス国民教育・高等教育・研究省（MENESR）（仏語）