2017年8月22日、The SDSN (Sustainable Development Solutions Network) Australia/Pacificは、オーストラリア、ニュージーランドおよび太平洋地域の大学が、持続可能な開発目標(SDGs)に取り組むためのガイド「Getting started with the SDGs in universities」を公表した。
SDSNは国連が支援する持続可能な社会を実現するためのグローバルなネットワークで、世界各地に活動の拠点が形成されている。当該ガイドでは、SDGsにおける大学の役割を示すとともに、大学でのSDGs実施に参考となる情報を提供している。
(出典:Getting started with the SDGs in universities,SDSN Australia/Pacific)
持続可能な開発目標(SDGs)
2015年の9月、ニューヨーク国連本部において「国連持続可能な開発サミット」が開催され、150を超える加盟国首脳の参加のもと、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」(英語・日本語(外務省仮訳))が採択された。
アジェンダは、人間、地球及び繁栄のための行動計画であり、17の持続可能な開発目標(SDGs)と169のターゲットからなる。SDGsはミレニアム開発目標(MDGs)において達成できなかったものを達成することを目指している。
SDGs(概要)
- 貧困をなくそう
- 飢餓をゼロに
- すべての人に健康と福祉を
- 質の高い教育をみんなに
- ジェンダー平等を実現しよう
- 安全なトイレと水を世界中に
- エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
- 働きがいも、経済成長も
- 産業と技術革新の基盤をつくろう
- 人や国の不平等をなくそう
- 住み続けられるまちづくりを
- つくる責任、つかう責任
- 気候変動に具体的な対策を
- 海の豊かさを守ろう
- 陸の豊かさを守ろう
- 平和と公正をすべての人に
- パートナーシップで目標を達成しよう
大学とSDGs
SDGsを達成するうえで、大学のもつ特徴的かつ極めて重要な社会的役割に対する期待が高まっている。SDSN Australia/Pacificの議長であるJohn Thwaites氏は、「政府だけではSDGsを達成することはできない。政府、民間部門、市民社会、そして大学等の教育機関を結びつけるパートナーシップが必要だ。」と述べている。
大学の役割
- SDGsの達成を支える知識、イノベーション、ソリューションの提供
- 現在および将来のSDGs策定・実施に関わる人材の創出
- SDGsが大学の運営事業の要素であることの保証
- SDGsの地域、国および世界での実施における横断的なリーダーシップの提供
大学のメリット
- SDGs関連の教育需要の獲得
- 新たなパートナーシップの構築
- 資金調達方法の拡張
- 世界的な課題に取り組むことへの証明
大学におけるSDGs実施手順
ステップ1
大学がすでに実施しているSDGsの関連取組みをマッピングする。
支援ツール
- Practical approaches to mapping university contributions to the SDGs (Webinar) by SDSNAustralia/Pacific and ACTS (2017) 〔YouTube〕
- Compiled list of SDG keywords (spreadsheet) by Monash University and SDSN Australia/Pacific(2017)〔Excel〕
ケーススタディ
- Mapping curriculum through the SDGs,Victoria University of Wellington(ガイド,48参照)
- Mapping research to the SDGs,Institute for Sustainable Futures,UTS (ガイド,P50参照)
ステップ2
大学内でSDGsの実施に関する分担・責任体制を構築する。また、主要なステークホルダー(教職員、学生、関連コミュニティ)の共通理解を深める。
支援ツール
- Template cross-university SDG workshop(ガイド,P.37参照)
- Outline business case for university-wide engagement with the SDGs(ガイド,P.38参照)
ケーススタディ
- University SDG Leadership Workshop,James Cook University(ガイド,P.52参照)
ステップ3
SDGsにおける優先順位を決定し、大学全体で実施するための統合的な計画を策定する。計画は現実的かつ段階的なものとし、主要なステークホルダーの協力のもとで策定する。
支援ツール
- Practical approaches to mapping university contributions to the SDGs (Webinar) by SDSNAustralia/Pacific and ACTS (2017) 〔YouTube〕
- Template cross-university SDG workshop(ガイド,P.37参照)
ステップ4
大学のポリシー、戦略、計画等にSDGsの実施を組み入れる。
支援ツール
- Outline business case for university-wide engagement with the SDGs(ガイド,P.38参照)
- University Commitment to the SDGs(ガイド,P.39参照)
ステップ5
大学のSDGsへの貢献を評価し、将来のSDGs実施に向けた支援や共通理解を得る。
SDGs評価報告書の例
日本の大学におけるSDGs取組み事例
北海道大学
「迅速診断法の開発とリスク分析に基づいた顧みられない熱帯病対策モデルの創成」(日本医療研究開発機構:AMED)
東北大学
「災害統計グローバルデータベースを構築、世界の災害に貢献」(東北大学災害科学国際研究所災害統計グローバルセンター)
東京大学
「太陽光発電のクリーンな電力を、誰にでも手の届く場所に、手の届く価格で提供する、電力量り売りサービス、WASSHA」(株式会社Digital Grid)
東京工業大学
「水素エネルギー社会の実現をめざす」(東京工業大学科学技術創成研究院グローバル水素エネルギー研究ユニット)
京都大学
「新興ASEAN諸国の移行期正義と包括的経済発展に関する研究交流」(京都大学東南アジア地域研究研究所)
岡山大学
「ESD(持続可能な開発のための教育)の教師教育推進に向けた国際研究拠点の構築」(日本学術振興会:JSPS)
徳島大学
「アミノ酸を含む環境に優しいコンクリート」(徳島大学環境衛生工学研究室)
長崎大学
「ケニアにおける黄熱病およびリフトバレー熱に対する迅速診断法の開発とそのアウトブレイク警戒システムの構築」(地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム:SATREPS)
原典:A new guide aims to help universities accelerate action on the SDGs,SDSN Australia/Pacific(英語)
原典:2030アジェンダ,国際連合広報センター(日本語)
原典:持続可能な開発目標(SDGs),国連開発計画駐日代表事務所(日本語)
原典:持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた産学官NGO等の取組事例,科学技術振興機構(日本語)
持続可能な開発目標、SDGsの達成のために大学ができること:オーストラリア、ニュージーランド、太平洋地域 への1件のフィードバック