留学先の選び方が変わる?イギリスが分野別TEFを試験的に導入

教育卓越性枠組(TEF)について、教育省は分野別TEFを2017年秋から試行的に実施し、2019年秋からは本格実施を行うとしている。
TEFは、英国の各高等教育機関における教育の卓越性を測る評価を通じて、質の高い教育を提供する機関の情報を学生に提供するほか、評価結果が良好な機関には、授業料の上限を物価上昇率に応じて増額できるというインセンティブを提供することにより、教育機関に競争を促すことを目指している。なお、機関別TEFはすでに2016年から実施されており、2年目に実施した2016-2017年度の評価結果(本サイト2017/8/9投稿記事)は、2017年6月に公表されている。

分野別TEFのメリット

教育機関への進学を希望する者は、一般的に、まず専攻したい分野を決定した後に、その専攻分野を提供する教育機関の中から進学先を決定する。分野別TEFは、各分野内で教育機関を比較する際の指標を提供することで、こうした学生のニーズを満たすことができる。

試行版分野別TEFの仕組みについて
  • 分野別TEF(試行実施1年目)は機関別TEF(実施2年目)に基づいて設計されているが、機関別TEFの実施後に新たに生じた変更点については分野別TEFにも反映される。
  • 機関別TEF(実施2年目、3年目)への参加の有無に関係なく、機関別TEFに応募する適格基準※1を現在満たしている機関は、分野別TEFに応募することができる。イングランド高等教育財政カウンシル(HEFCE)は応募があった機関の中から30~40機関を選定する。
  • 分野別TEF(試行実施1年目)は機関別TEF(実施3年目)とともに、2017年の秋から2018年の春に実施されるが、分野別の評価と機関別の評価は何の関連性も持たない。試行版となる今回の分野別TEFは全くの発展途上段階であるため、個別の機関を特定する評価結果については公表されない。
  • 「分野」の定義としては、英国高等教育統計機関(HESA)が公表しているCommon Aggregation Hierarchy(科目分野の集団を分類し体系化したもの)に基づく35分野となっている。
試行版分野別TEFの2つのモデル

従来、TEFの格付けは、まず評価者が指標のみに基づく判定(初期判定)を行ったのち、追加の根拠資料等に基づいて修正を加えるという手順で実施される。初期判定では、6つのコア指標※2のうち、3つ以上の指標で高評価を得ていて低評価の指標がない機関を金、少なくとも2つの指標で低評価を得ている機関を銅、このどちらにも当てはまらないものを全て銀に格付けしたのち、コア指標の内訳となるスプリット指標(学生の性別、人種等)を考慮して決定される。

今回の分野別TEFでは格付けの方法として、2つのモデルを試す。

モデルA:「例外」モデル

原則的に、初期判定の結果が機関別のものと類似している分野については、分野ごとに根拠書類等を考慮することなく、機関別の判定と同じ格付けを行う。初期判定が機関別のものと異なっている分野についてのみ、例外的に、より詳細なアセスメントを行う。モデルAはリスクベースアプローチを採用しており、例外的なものにのみ焦点をあてることで、大学側の負担を軽減したものとなっている。

モデルB:「ボトムアップ」モデル

全ての分野で初期判定後に根拠書類を用いたアセスメントを行い、格付けを行う。分野別の格付けの結果は、機関別の格付けにおける判断材料となる。モデルBにおいて、分野は7つのグループに分けられ、各グループごとに根拠書類を提出する。ただし、ランク付けはあくまで各分野ごとに行われる。

  • どちらのモデルにおいても、機関別のアセスメントが実施される。分野別及び機関別のアセスメントは、指標についての包括的な考慮に基づいて、分野別TEFの評価者によって実施される。
  • イングランド高等教育財政カウンシル(HEFCE)は、今回の分野別TEFでは、モデルAに参加する機関を15機関、モデルBに参加する機関を15機関、もし可能ならば両方のモデルに参加する機関を10機関選定することを目指している。
  • 指標が求めるデータのサンプル数が足りない等の理由により、指標について十分な説明ができない分野がある場合には、モデル別に下記のとおり判定が行われる。

1)モデルAでは、説明不可の指標があるという理由だけで、その分野を「例外」とみなすことはない。この場合、説明不可の指標を除いた、残りの説明可能な指標が、初期判定を十分に提示しているとみなせる状態(「少なくとも3つの高評価があり、低評価はない」または「少なくとも2つの低評価がある」)であるならば機関別の初期判定と類似しているかどうかを判定することが可能である。もし類似していなければ「例外」とみなされ、より詳細なアセスメントが行われることになる。
2)モデルBについては利用可能な指標、根拠書類、機関別アセスメントの指標、同じグループ内の他分野の初期判定に基づいて、いかにアセスメントを行うかを試す。

その他・今後の展開
  • アセスメントについては、教育機関の公表情報や学生調査等を通じて、面談時間、職員と学生の割合、クラス規模等に関するデータを集め、教育力測定を試験的に導入する予定である。これは、両方のモデルにおいて、選定された分野においてのみ実施される。
  • 分野別TEF(試行実施1年目)の実施後、教育省は各モデルを検証する。参加機関と評価者はそれぞれのモデルにおける自身の経験や参加コストについてフィードバックを行う必要がある。
  • プロバイダー、学生、雇用主、その他利害関係者がTEFの設計についてコメントを提出できる機会を保証するため、2017年内に分野別TEFにかかる作業に関して協議文書を発表する。また、多数の学生とともに分野別TEFの試験的な側面について検証する研究を行うことを計画している。
  • 分野別TEFは、2019-2020年実施分から本格実施をされることが期待されている。

※1 TEF(実施2年目)の申請要件については、こちらの記事(本サイト2017/3/28投稿記事)を参照のこと。
※2 6つのコア指標とは、「学生が受講したコースの教育内容(全国学生調査に基づく)」、「成績及び評価とフィードバック(全国学生調査に基づく)」、教育・研究における学生支援(全国学生調査に基づく)」、「退学率(HESA:高等教育統計機構のデータに基づく)」、「雇用/継続学習(就職状況調査に基づく)」、「高技能職への就職/継続学習(就職状況調査に基づく)」である。

原典:教育省(Department for Education)(英語)

カテゴリー: 英国 タグ: パーマリンク

コメントを残す