優秀な学生ばかり?イギリスで「成績インフレ」が問題に

イギリスでは、「成績インフレ」(Grade Inflation)と呼ばれる事態が問題となっている。成績インフレとは、大学が良い成績評価を与える学生の数を過剰に増やすことで、学位の相対的な価値が下がっている状態のことである。2017年9月7日、イギリスの大学・科学・研究・イノベーション担当大臣であるJo Johnson大臣は英国大学協会(UUK)の年次会合でスピーチを行い、成績インフレについて重要な問題であると明言した。スピーチの内容は以下の通り。

(予備知識)成績に基づく学位の格付け

イギリスの大学では、卒業時に成績に基づき、主に以下のような分類で学位の格付けを行う。()内は100点満点で換算した目安である。
「1st」/First class(70点以上)
「2:1」/Upper second class(60~69点)
「2:2」/Lower second class(50~59点)
「3rd」/Third class(40点~49点)

イギリスの大学の現状
  • 1st及び2:1を授与された学生の割合が過去5年間で急増している。この急増は、学習成果の向上だけでは説明がつかない。現在、約4分の3の学生が1stまたは2:1を獲得している(2011-2012年には66%、1990年代半ばには50%以下であった)。
  • 1stの割合は、1990年代半ばから3倍に増えている。英国高等教育統計機関(HESA)の調査によると、過去5年間で1stを授与された学生の割合は40%以上増えており、今や約4分の1の学生が1stの成績を確保している(1stの成績を獲得する学生の割合は、2011-2012年には17%であった)。いくつかの教育機関では、1stの成績をとる学生の割合が2015-2016年には2010-2011年の2倍以上になっていた。
  • Higher Education Academyによると、約半数の高等教育機関が「他の高等教育機関の学生に比べてうちの学生が不利ではないことを保証する」という基準で成績を決定するようになってしまったとのことである。
成績インフレの要因
  • イギリス国内の大学ランキングにおいて、「優秀な学位(上位に格付けされる学位)」の割合が考慮されている。
  • 多くの雇用者が2:1と2:2の間で採用のボーダーラインを引いている。このことが、高等教育機関側にとって極力学生に2:2以下の評価をつけないようにするというプレッシャーとなっている。
成績インフレの問題点
  • 成績インフレはイギリスの高等教育セクター全体の評判を落とし、水準が低下している成績基準であるという危うい印象を生み出す。また、単位のために一生懸命勉強した学生の努力を無駄にするだけでなく、雇用主の需要を満たすこともできなくなる。
  • もし学生の80-90%が1stまたは2:1の成績を、評判が高い高等教育機関から獲得できると学生が知ってしまった場合、学生の学習意欲は削がれ、かつ、機関側が教育に力を入れる意欲も削がれることとなる。
成績インフレへの対応策-成績インフレを止めるには―
  • 今度の規制枠組協議において、学生局(OfS:Office for Students)※1が様々な分類(セクター及びプロバイダーレベル、経年変化など)に基づいて学位数に関する年次データを分析し、定期的に公表するようにすること、そして、成績インフレを示唆するデータの説明をプロバイダーに要求できるようにすることを提案する。
  • 教育卓越性枠組(TEF)(本サイト2017/3/28投稿記事)に成績インフレに関する新たな指標を導入することで、成績インフレ対策を真剣に行うプロバイダーを評価する。
  • 成績インフレは、学生局に問題の解決をすべて任せるのではなく、高等教育セクター自らが解決せねばならない問題である。高等教育セクターには、学位の評定に関する最低限の基準を策定することが求められている。

※1 学生局とは、高等教育・研究法により、2018年1月に設置される予定の公的機関で、主にイングランド地方で高等教育の質保証・規制等を行うこととされている。イングランド以外の地方においても、各地方政府の大臣や省庁の同意があれば高等教育の質保証を行うことになっている。

原典:イギリス教育省(DfE)(英語)

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