- 欧州において、初期職業教育訓練(IVET)及び継続職業教育訓練(CVET)の導入が急速に進むなか、高度職業教育訓練(HiVET: Higher Vocational Education and Training)、すなわち欧州資格枠組み(EQF)のレベル5~8に該当する資格に繋がるVETはまだ発展段階にある。
- その一方で、欧州職業訓練開発センター(Cedefop)によると、昨今のテクノロジーの急速な進歩やデジタル化等により、2025年までに欧州連合(EU)における雇用の46%は高い資格水準が求められるようになると予測されている。
- こうした状況から、高度職業教育訓練の促進のためのエラスムス+プログラムのプロジェクトが進められ、その成果として「European Guidelines on Quality Assurance in Higher VET(欧州における高度職業教育訓練の質保証ガイドライン)」が公表された。
上記プログラムのプロジェクトとして進められてきた「QA HiVET(高度職業教育訓練の質保証)」の成果物である本ガイドラインは、欧州において共通の定義や質保証制度がなかった高度職業教育訓練やその質保証の浸透を手助けすることを目的とし、高度職業教育訓練を定義づけるとともにその質保証制度についてまとめられている。
HiVETの定義
定義(一部抜粋)
- 高度職業教育訓練の資格は、EQFレベル5〜8を参照するNQF(国家資格枠組)レベルに割り当てられる。また、通常、この資格は高等教育セクター外で取得される資格を指し、ボローニャ・プロセスの管轄外となる。
- 高度職業教育訓練のカリキュラムは、常に産業界等の需要を満たすものであることが必要である。すなわち、企業が被雇用者に求める特定の資格要件を把握し、それに見合った資格が得られるカリキュラムとすることが重要である。
本ガイドラインの内容
本QFは、高度職業教育訓練に係るステークホルダーが、高度職業教育訓練の資格に対する質保証制度、メカニズム及びツールを各自チェックし、必要に応じて改良していくための基準点として活用されることを目的としている。また、高度職業教育訓練が達成すべき主な目標である以下3点を満たしているかが、高度職業教育訓練の質保証のベースとなっている。
HiVETが達成すべき主な目標
1. 企業が求める資格を満たす
2. 高度職業教育訓練を受けた者の雇用可能性(employability)を保証する
3. 特に「起業する」という観点から、経営及びリーダーシップスキルを習得させ、さらに発展させる
高度職業教育訓練の質のチェックリスト(Quality Features)
質保証サイクル | ワークステップ | QF(Quality Features)の詳細 |
Planning(企画) | 資格の需要の分析 | QF1. 資格に対する需要の特定 |
QF2. 企業代表者が求める資格に対する需要の分析 | ||
Implementation (実行) |
高度職業教育訓練の資格の発展及び現代化 | QF3. HiVETのステークホルダーによる新たな資格の開発及び既存の資格の現代化 |
QF4. 職業・ビジネス団体によるQF3. の資格の確認 | ||
QF5. 資格の透明性確保 | ||
高度職業教育訓練の教育内容の教示 | QF6. 専門的経験を持つ学習者に向けたオリエンテーション | |
QF7. 資格と労働市場との結びつきの保証 | ||
QF8. 実務ベースの職業訓練経験を持つ教育担当スタッフの確保 | ||
資格授与試験の準備 | QF9. 資格試験の透明性の確保 | |
QF10. 実務経験のある資格試験実施者の選定 | ||
Evaluation(評価) | 評価の実施 | QF11. 資格の評価プロセスの構造化 |
Review(見直し) | 演繹法によるフォローアップ | QF12. 評価結果に基づいた改良点の特定 |
原典:EQAVET